離婚にともなう慰謝料の相場と請求方法
- 離婚・男女問題
1. 離婚慰謝料とは
離婚慰謝料とは、夫婦のうち離婚の原因を作った側が、配偶者に対して支払う慰謝料です。
(1)離婚慰謝料の概要
離婚慰謝料には、以下の2つの要素が含まれていると解されています。
①離婚自体慰謝料
離婚によって夫婦関係を解消せざるを得ないことによる精神的苦痛の賠償金です。
②離婚原因慰謝料
離婚の原因となった不法行為(不倫など)による精神的苦痛の賠償金です。
反対に、配偶者の収入なしでは生活が成り立たない場合は、離婚を決断する前に、十分な収入を得られる仕事を探すなどの準備が必要です。
ただし実際には、上記の2つを区別することなく、一括して離婚慰謝料の金額を取り決めるのが一般的です。
(2)離婚慰謝料の消滅時効
離婚慰謝料は、以下のいずれかの期間が経過するまでの間に請求する必要があります(民法第724条)。
①被害者が損害および加害者を知ったときから3年
(例)不貞行為(不倫)の場合、不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年
②不法行為のときから20年
(例)不貞行為(不倫)の場合、不倫が行われたときから20年
上記のいずれかの期間が経過すると、時効完成によって離婚慰謝料を請求できなくなります。内容証明郵便の送付や訴訟の提起などを行えば時効完成を阻止できるので、お早めに弁護士へご相談ください。
また、離婚慰謝料の請求時効については、以下のコラムもご参照ください。
離婚慰謝料の時効は何年? 強制執行で未払いを解決することは可能?
2. 離婚慰謝料を請求できるケースと金額相場/請求できないケース
離婚慰謝料を請求できるのは、配偶者が不法行為をした場合に限られます。必ず離婚慰謝料を請求できるわけではない点にご注意ください。
(1)離婚慰謝料を請求できるケースと金額相場
離婚慰謝料を請求できるケースとしては、以下の例があげられます。
①不貞行為
配偶者が自分以外の者と性交渉をした場合は、不貞行為の慰謝料を請求できます。
②DV
配偶者が自分に対して暴力を振るった場合は、DVの慰謝料を請求できます。
③モラハラ
配偶者が自分に対して侮辱などの精神的な攻撃をしてきた場合は、モラハラの慰謝料を請求できます。
④悪意の遺棄
配偶者が勝手に別居する、生活費を全く支払わないなど、夫婦の協力義務・同居義務・扶助義務に違反する行為をした場合は、悪意の遺棄の慰謝料を請求できます。
離婚慰謝料の金額は、100万円から300万円程度が標準的です。実際の慰謝料額は、配偶者の行為の悪質性や夫婦関係の状況などによって異なります。
(2)離婚慰謝料を請求できないケース
これに対して、以下のようなケースでは、配偶者の不法行為が認められず、離婚慰謝料は請求できない可能性が高いです。
①性格の不一致が原因で離婚する場合
配偶者に非がある具体的な行為を立証できない限り、離婚慰謝料は認められないと考えられます。
②ご自身の行為が原因で離婚する場合
ご自身の不貞行為などが離婚の原因である場合、配偶者に対して離婚慰謝料を請求できないばかりでなく、反対に配偶者から離婚慰謝料を請求される可能性があります。
離婚慰謝料を請求できるケースとできないケースについては、以下のコラムもご参照ください。
離婚するときに慰謝料を請求する方法は? どのようなときにもらえるのか
DVで離婚した場合の慰謝料はいくら? 証拠の集め方、請求方法を解説
3. 離婚に関する慰謝料を請求する方法
離婚に関する慰謝料は、不法行為をした配偶者に対して請求できるほか、不貞行為(不倫)の場合は不倫相手に対しても請求できます。
配偶者と不倫相手のそれぞれに対する、慰謝料請求の方法を解説します。
(1)配偶者に対する慰謝料請求
配偶者に対する慰謝料請求は、離婚手続きの中で行うのが一般的です。
具体的には、離婚協議・離婚調停・離婚裁判の各手続きを通じて請求します。
①離婚協議
他の離婚条件と併せて、慰謝料の金額などを夫婦間で話し合います。合意が成立したら、その内容を公正証書にまとめて締結しましょう。仮に慰謝料などの金銭が不払いとなった場合でも、公正証書があれば直ちに強制執行を申し立てることができます。
②離婚調停
家庭裁判所において、調停委員による仲介のもと、他の離婚条件と併せて慰謝料の金額などを話し合います。合意が成立したら、その内容が調停調書に記載され、離婚の成立とともに慰謝料の支払い義務が確定します。
③離婚裁判
離婚協議・離婚調停が成立しない場合は、家庭裁判所に離婚裁判を提起しましょう。離婚裁判では、慰謝料も請求できます。法定離婚事由の存在を立証し、さらに慰謝料請求権についても立証に成功すれば、離婚判決の主文において慰謝料の支払いが命じられます。
なお、配偶者と離婚しない場合には、慰謝料だけを独立して請求することもできます。また、離婚時に慰謝料を精算しなかった場合は、離婚後に慰謝料を請求することも可能です。これらの場合には、次の項目で解説する不倫相手への慰謝料請求と同様に、示談交渉や訴訟を通じて慰謝料を請求します。
(2)不倫相手に対する慰謝料請求
不倫相手に対する慰謝料請求は、「示談交渉」または「訴訟」のいずれかにより行うのが一般的です。
①示談交渉
内容証明郵便などを送付したうえで、慰謝料の金額などについて交渉を行います。合意が成立したら、その内容を書面にまとめて締結しましょう。公正証書の形で締結すれば、不払いが生じてもスムーズに強制執行を申し立てることができます。
②訴訟
裁判所に訴訟を提起して、不倫相手に対して慰謝料の支払いを命ずる判決を求めます。不倫相手の故意・過失や、ご自身に生じた精神的損害などを、証拠に基づいて立証しなければなりません。
不倫相手に対する慰謝料請求訴訟の提起先は、地方裁判所または簡易裁判所です。家庭裁判所に提起する離婚裁判とは、訴状の提出先が異なるのでご注意ください。
なお、配偶者と不倫相手のいずれに対しても、慰謝料全額を請求できます。二重取りは認められませんが、請求額の配分は選択可能です。
(例)慰謝料額が200万円の場合に、配偶者に対して50万円、不倫相手に対して150万円を請求する
不倫相手に対する慰謝料請求については、以下のコラムもご参照ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年12月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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