養育費とは。支払金額や期間など基本を解説

  • (更新:2024年09月30日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
養育費とは。支払金額や期間など基本を解説

子どもがいる夫婦が離婚する場合は、養育費の支払いについて取り決めましょう。

1. 養育費とは

養育費とは、子どもの養育に必要な費用をいいます。たとえば、子どもに関する以下のような費用が養育費に含まれます。

  • 食費
  • 衣服の購入費
  • 教育費(学校の入学金、授業料、塾代、習い事の費用など)
  • 医療費

など

親は子どもに対する扶養義務(民法第877条第1項)の一環として、養育費を支払う義務を負います。両親が子どもと同居している場合は、日常生活の中で養育費を分担するのが通常です。

しかし、離婚した後は親権者だけが子どもと同居し、親権者でない側は、日常生活の中で養育費を負担しなくなります。そのため、親権者でない側が親権者に対して、養育費を支払う義務を負います。

養育費の金額は、離婚協議・離婚調停・離婚裁判の各手続きを通じて決定します。離婚時に養育費を取り決めなかった場合は、離婚後に協議・調停・審判を通じて養育費を請求することも可能です。

協議によって養育費を取り決める場合は、不払いが発生した際に強制執行を申し立てられるように、公正証書を作成しておくとよいでしょう。

養育費の内訳については、以下のコラムもご参照ください。

どこまでが養育費に含まれるもの? 知っておきたい養育費内訳

面会交流の方法は、離婚時に取り決めることが望ましいです。その場合、以下のいずれかの手続きによって面会交流の方法を取り決めます。

2. 養育費の金額|算定基準・増減するケース

養育費の金額の算定基準と、離婚後に養育費が増減するケースについて解説します。

(1)養育費の算定基準・金額相場

養育費の金額は、以下の要素に応じて決定するのが適切です。離婚裁判や審判によって裁判所が養育費を決定する際には、これらの要素を考慮して金額が定められます。

  • 夫婦の収入バランス(義務者の収入、権利者の収入)
  • 子どもの人数
  • 子どもの年齢

上記の要素を考慮した養育費の目安額は、裁判所が公表している「養育費算定表」を用いると簡単に求められます。

参考:「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」(裁判所)

養育費の金額相場については、以下のコラムもご参照ください。

子どもの養育費、相場はいくら? 計算方法と取り決め方

(2)離婚後に養育費が増減するケース

離婚後に発生した事情によっては、養育費の増額・減額が認められることもあります。

<養育費の増額が認められる場合の例>

  • 義務者の収入が増加した場合
  • 権利者の収入が減少した場合
  • 子どもが私立学校に通い始めるなどして、教育費が想定よりも増えた場合
  • 子どもが病気にかかり、医療費の負担が生じた場合

など

<養育費の減額が認められる場合の例>

  • 義務者の収入が減少した場合
  • 権利者の収入が増加した場合
  • 権利者が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合
  • 義務者が再婚して子どもができた場合

など

養育費の増額・減額に関する協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判を通じて、増額・減額の可否および金額を取り決めることになります。

養育費の増額・減額については、以下のコラムもご参照ください。

再婚したら養育費はどうなる? 免除や減額が認められるケースとは

再婚したら養育費は減額できる? 支払い義務は?

3. 養育費の支払期間

養育費の支払いは扶養義務の一環であるため、子どもが経済的に自立するまで支払う必要があります。「18歳まで」「20歳まで」「大学卒業まで」などのパターンがありますが、法律で決まっているわけではありません。

実際の支払期間は、離婚手続き(協議・調停・裁判)を通じて決めるのが一般的です。子どもの教育の見通しなどを考慮して、適切な支払期間を取り決めましょう。

養育費の支払期間については、以下のコラムもご参照ください。

養育費はいつまで請求できる? 支払い義務の基本を解説

4. 養育費の一括払いは可能か?

養育費の支払いを月々の支払いではなく、一括払いにしてもらうことは可能なのでしょうか。

(1)毎月払いが原則

養育費とは、子どもが経済的・社会的に独立するまでに必要となる生活費、教育費、医療費などのことをいい、これらは日々必要となる費用です。そのため、養育費は月々支払われるのが適切と考えられており、一括ではなく毎月の支払いが原則とされています。

養育費請求調停や審判において、養育費の一括支払いを求めたとしても、相手が合意しない限りは、裁判所が養育費の一括払いを認める可能性はほぼありません。

(2)義務者が合意すれば一括払いも可能

養育費の一括支払いが原則として認められないというのは、養育費の金額や支払い方法について当事者間に争いがある場合です。

養育費の金額や支払い方法については、当事者同士の話し合いによって自由に決めることができます。そのため、養育費の支払い義務者が養育費の一括払いに合意しているのであれば、養育費の支払いを一括払いとすることも可能です。

審判で養育費の一括払いが認められる可能性はほぼありませんので、養育費の一括払いを希望する場合には、協議離婚での解決を目指しましょう。ただし、養育費の一括払いを求める場合には金額が高額になりますので、養育費の支払い義務者にある程度の財産があることが必要になります。

5. 養育費の一括払いにおけるメリット・デメリット

養育費の一括払いには、メリットもデメリットも存在しています。よく理解したうえで判断しましょう。

(1)養育費の一括払いのメリット

養育費を一括払いにしてもらうことで、次のようなメリットがあります。

①将来の滞納・減額リスクを回避できる

養育費は、子どもが社会的・経済的に独立するまで支払いが続きますので、子どもの年齢によっては、十数年にもわたって支払われることになります。

支払期間が長期に及ぶことになると、相手の経済状況や生活状況も当然変化してきますので、支払期間の途中で養育費の支払いが滞るというリスクや、減額を求められるといった可能性もあります。

養育費を一括払いにしてもらうことによって、このような将来の滞納・減額のリスクを回避することが可能になり、きちんと支払ってくれるかどうかという不安を抱えながら過ごすことから解放されるというメリットがあります。

②元配偶者との接点を減らせる

夫婦の離婚理由によっては、離婚後は元配偶者と関わりたくないと考える方もいます。特に、DVなどが原因で離婚をした方など相手に対する恐怖心などから、できる限り接触を避けたいと考える方もいらっしゃることと思います。

しかし、養育費の支払いの遅れや滞納が生じた場合には、その都度連絡を取って支払いの催促をしていかなければなりません。養育費の支払いを一括払いにしてしまえば、元配偶者との接触を極力減らすことが可能になります。

③将来の生活設計が立てやすくなる

養育費を一括で支払ってもらうことによって、手元にまとまったお金が入ってくることになります。離婚後は、経済的に不安になることもありますが、まとまったお金が手元にあることで将来の生活設計が立てやすくなるといえます。

(2)養育費の一括払いのデメリット

養育費を一括払いにした場合のデメリットとしては、次のような点があげられます。

①分割払いよりも金額が少なくなる可能性がある

養育費の一括払いは、養育費を受け取る側に大きなメリットがある一方で、支払う側は一時的に経済的に大きな負担がかかります。

そのため、支払う側から一括払いに合意する代わりに養育費の総額の減額を求められることもあり得ます。これにより、毎月支払いを受けるよりも低額になってしまう可能性があります。

②将来の事情変更に対応できない

養育費は、合意をした当時には想定することができない事情が生じた場合には、養育費の増額を求めることが可能です。しかし、養育費を一括払いにした場合には、このような事情変更に対応することが難しくなるため、将来養育費の増額を求めることができない可能性もあります。

③贈与税が課されるリスク

毎月支払われる養育費は、必要に応じてその都度支払われるものといえるため贈与税は非課税の扱いです。しかし、養育費を一括して受け取った場合は、贈与税の課税対象となる可能性がありますので注意が必要です。

養育費の一括払いを検討している方は、メリットとデメリットを踏まえて慎重に検討することが大切です。

養育費に関するトラブルにお悩みの方は、以下のコラムもご参照のうえ、弁護士にご相談ください。

養育費問題に強い弁護士の選び方は?

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