養育費はいつまで請求できる? 支払い義務の基本を解説
父母が離婚した場合、子どもと同居していない側の親は、同居している側に対して、子どもの生活費などに充てるための養育費を支払う必要があります。養育費を子どもが何歳になるまで支払うかについては、家庭によってケース・バイ・ケースです。
今回は養育費をいつまで請求できるのか、養育費に関するトラブルを避けるにはどうすべきかなどを解説します。
1. 養育費を請求できるのは、子どもが何歳まで?
養育費を取り決める際、支払い期間をいつまでに設定するかは大きなポイントです。法律上は、子どもが何歳になるまで養育費を請求できるのでしょうか?
(1)18歳~22歳程度までが標準的
ただし子どもの自立状況による
実は、養育費を請求できる期間が法律上決まっているわけではありません。
養育費は、親子間の扶養義務に基づいて支払うべきものと解されています(民法第877条第1項)。扶養義務とは、相手が自身の稼ぎだけでは生活できない場合に、経済的援助を行う義務です。したがって、子どもが経済的に自立していない状況であれば、子どもの年齢にかかわらず養育費を支払う必要があるのです。
標準的には、高校・大学などを卒業して働くことができるようになる、18歳から22歳までの間に養育費の終期を設定することが多いです。しかし大学院に進学するケースや、海外留学をするケースなどでは、22歳では自立できないケースもあります。その場合、養育費の終期はさらに後ろへ延びることになります。
このように、子どもの養育費を請求できる期間は、子どもの自立状況によって異なるのが実際のところです。
(2)父母間の合意があれば、それに従う
子どもの養育費は父母間でやり取りされるため、父母間の合意があれば、基本的にはその内容に従います。たとえば子どもが20歳になるまで養育費を支払うと合意すれば、20歳になるまでは養育費の支払い義務が発生します。
ただし、父母間で合意が成立しない場合には、家庭裁判所が審判によって養育費の支払い期間を決定します。その際には、子どもの自立状況などが総合的に考慮されます。
2. 養育費の支払い期間は延長できる?
父母間で一度取り決めた養育費の支払い期間は、その後に事情変更が生じた場合には、延長が認められることがあります。
たとえば以下に挙げるような場合には、支払い期間の延長が認められる可能性があります。
- 子どもを大学に進学させない予定で、養育費の支払いを18歳までと取り決めたが、一転して子どもが大学に進学することになった。
- 子どもが22歳で大学を卒業する予定で、養育費の支払いを22歳までと取り決めたが、浪人や留年によって卒業時期が延びた。
など
もし相手方が支払い期間の延長に応じない場合は、家庭裁判所の養育費調停を通じて延長を請求しましょう。
(参考:「養育費請求調停」(裁判所))
3. 養育費トラブルを避けるためには?
養育費に関するトラブルのリスクをできる限り抑えるには、養育費の取り決め時に「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成するのがよいでしょう。また、養育費に関する交渉の代理は弁護士に依頼することをおすすめいたします。
(1)強制執行認諾文言付き公正証書を作成する
養育費に関する合意内容は、公正証書にまとめて締結するのがおすすめです。口約束のみで済ませるのではなく、公証人が作成する公文書である公正証書を締結することで、相手方に支払い義務を強く認識させる効果があります。
また、養育費に関する公正証書を作成する際には、「強制執行認諾文言」を記載しておきましょう。強制執行認諾文言とは、債務不履行が発生した際には直ちに強制執行に服する旨の、債務者による陳述の記載です。
強制執行認諾文言が記載された公正証書は「執行証書」と呼ばれ、そのまま強制執行の申し立てに用いることができます(民事執行法第22条第5号)。不払いが発生した場合にはスムーズに強制執行を申し立てられるように、離婚協議書や養育費に関する合意書を、強制執行認諾文言付き公正証書の形で作成しておきましょう。
(2)交渉代理を弁護士に依頼する
養育費の支払いルールを明確に定め、不払いが起こった際の対策も用意しておきたい場合は、交渉の代理を弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、将来のトラブルのリスクを見据えて、養育費の支払いを確保できるような対策を協議段階から検討してもらえます。公正証書の作成についても一任できるほか、万が一不払いが発生した場合には、強制執行の手続きも任せられるので安心です。
協議離婚の際に養育費を取り決めたい方、養育費回収の確実性を高めたい方は、弁護士までご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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