養育費の相場:最新情報と算定方法について

養育費の相場:最新情報と算定方法について

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

養育費は子どもの生活を支えるための重要な費用です。親としての責任を果たすため、また子どもの将来を守るためにも、養育費の相場について適切に理解しておきましょう。

1. 養育費の基本的な意味を知る

「養育費」とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。法務省によると養育費は、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住に必要な経費や教育費などが含まれます。親は子に対する扶養義務を負っており、その一環として養育費を支払う義務があります。

養育費は、権利者(受け取る側)と義務者(支払う側)との間で話し合いを行い、取り決めることが一般的です。養育費の金額のほかに支払期間も取り決めますが、通常は子どもが経済的に自立するまで(20歳または22歳までとされることが多いです)とされています。

また、養育費の支払いが滞ると、子どもの生活や教育に影響を及ぼす可能性がありますので、支払いが滞った場合には、法的な措置により養育費の請求を行うこともあります。

2. 養育費の相場に関する最新のデータと情報

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」の結果によると、離婚した父親からの養育費の受給状況は、平均月額だと母子家庭で50485円、父子家庭で26992円となっています。

しかし、養育費の金額は、子どもの年齢、生活環境、親の収入などにより変動します。これに、子どもの生活費や教育費などを考慮に入れ、適切な金額を算定します。

(1)養育費に関する2024年最新情報

こども家庭庁 ひとり親家庭等日常生活支援事業 家庭生活支援員によるひとり親の方への生活援助や保育サービスを提供しており、養育費に関する相談も受け付けています。
児童扶養手当 養育費の一部として、政府から提供される給付金です。各自治体にお問合せください。
養育費に関する公正証書等作成促進補助金 養育費に関する公正証書の作成経費を補助する制度です。各自治体にお問合せください。
養育費の保証促進補助金 養育費の保証を促進するための補助金制度です。各自治体にお問合せください。
ひとり親家庭等養育費講習会 養育費の相場など知識の提供や、取り決め方について学ぶことができる講習会が各自治体によって開催されています。

3. 養育費の算定方法と養育費算定表

具体的な養育費の金額は、一般的に、裁判所が公表している「養育費算定表」を基準に決定します。この算定表は、親の収入や子どもの年齢、子どもの数などを考慮して作られていますが、私立学校の学費、交通費、塾代、入院費などは考慮されていません。そのため、これらの費用が必要になる場合は、算定表の金額にいくらを加算するか、話し合いなどによって決定する必要があります。

養育費算定表はあくまで一つの基準であり、絶対的なものではありません。たとえば、親の収入が2000万円を超える場合や子どもの数が3名を超えるケースでは、算定表だけでは適正な養育費の額を確認することができません。また、子どもの特別なニーズや教育費の増加など、個々の状況によっては算定表以上の養育費が必要となる場合もあります。

そのため、養育費の金額について不明確な点や不満がある場合は、ひとりで抱え込まずに弁護士に相談したり、裁判所に具体的なアドバイスを求めたりすることが重要です。また、養育費等相談支援センターや法テラス地方事務所なども相談所として活用できます。

4. 養育費の決め方(協議・調停・裁判)

養育費の決め方には、協議または調停での話し合いによる決め方と、家庭裁判所による離婚訴訟の判決による決め方の、大きく分けて「話し合い」と「裁判」の2つの方法があります。それぞれの特徴と違いについて解説します。

(1)話し合い(離婚協議、離婚調停)

養育費についての条件は、夫婦間での話し合いで自由に決めることができます(離婚協議)。離婚に合意できれば、財産分与などの金銭面と、未成年の子がいれば親権や養育費などについても話し合い、条件を決定します。夫婦間での話し合いだけで決着しない場合には、家庭裁判所での離婚調停へ移ります。離婚調停は、調停委員の仲介のもと合意を図る手続きです。しかし、あくまで「話し合い」のため、夫婦間で合意ができなければ離婚は成立しません。

(2)裁判(離婚裁判)

離婚裁判では、裁判官が双方の言い分や提出された資料を検討した上で、離婚の可否や養育費について決定します。離婚裁判では、裁判官が判断して強制的に結論を下すため、協議や調停などの話し合いで決まらなかった離婚や養育費についても、ひとつの結論が出ることになります。

話し合いと裁判の違いは、「自由度」と「確定性」にあります。話し合いは自由度が高く、双方の合意により柔軟に決定できますが、合意に至らない場合は何も確定できないため、確定性が低いと言えます。一方、裁判は裁判官が決定するため確定性が高いですが、自由度は低くなります。

夫婦間の話し合いにより取り決めができればよいですが、夫婦それぞれの状況や意向により話し合いでの解決が難しい場合もあるでしょう。夫婦間での交渉が難航する場合には、弁護士などの助言を受けて、最適な方法を選択することが重要です。

5. 標準的な養育費の計算方法

ここまでで述べたとおり、養育費の算定には父母それぞれの収入や、子どもの年齢・人数などが関係してきます。

標準的な算定方式では、子が義務者と同居していた場合、親の収入のうち子のために費やされていた金額(=子の生活費)を計算します。子の生活費を、権利者と義務者が半分ずつ負担する形で養育費が算定されます。

この計算には、家族構成や年収を入力するだけで行うことができる「養育費計算ツール」をご利用いただけます。

ただし、この標準的な算定方式はあくまで一般的なケースを前提としており、上述したとおり、年収が2000万円を超えるケースや子どもの数が3名を超えるケースなどでは適用できない場合もあります。

離婚により子どもと離れて暮らす親でも、子どもに対する扶養義務は続きますので、自分の生活費を差し引いて支払える現実的な養育費を算定することは非常に重要です。

6. 養育費の支払いがない場合の強制執行

養育費は、親が子どもに対して負っている扶養義務であり、法律上も支払い義務があります。しかし、残念ながら支払いが滞るケースも少なくありません。

まず、家庭裁判所において養育費の金額を決めたにもかかわらず、決められた金額の支払いがない場合には、家庭裁判所による支払いの勧告(履行勧告)の申し出をすることができます。これにより、支払い義務者に対して法的な圧力をかけることが可能です。

しかし、履行勧告によっても養育費が支払われない場合、一定の時期までに支払うよう、家庭裁判所から命令を発してもらうこともできます。これを「履行命令」といいます。履行命令にも従わない場合、義務者に罰則(過料)が科される可能性があります。

そして、最終的な手段として、「強制執行」があります。これは、地方裁判所において行われる支払われない養育費を回収するための手段です。強制執行では、たとえば、義務者名義の預貯金や給料を差し押さえることができます。これにより、支払い義務者が支払いを拒否しても、養育費を確保することが可能となります。

以上のように、養育費の支払いがない場合でも、法的な手段を通じて対処することが可能です。

7. 養育費に含まれる費用(食費、教育費、被服費、医療費など)

養育費は、子どもが自立するまで養い育てるために長年にわたり必要となる費用です。具体的には、食費、被服費、医療費などの生活にかかる費用のほか、保育園や幼稚園、学校に通うための費用や学費、教科書代、通学費などの教育費も養育費に含まれます。

他にも、家賃、適度の娯楽費(携帯電話料金やレジャー・旅行費、おこづかい)、お祝い行事なども養育費に含まれることがあります。

ただし養育費に含まれる費用は、子どもの年齢、地域などによっても異なる場合があります。それゆえに具体的に養育費に含まれるかどうかは、各家庭の状況によります。

いずれにせよ、養育費は子どもの生活全般を支えるための重要な費用です。子どもの成長とともに変化する様々な費用を考慮する必要があり、離婚後も親の義務として養育費を適切に支払い、子どもの健やかな成長を支えることが大切です。

8. 子育てにかかる費用について

子どもの育児には、「養育にかかる費用」と「教育にかかる費用」からなる「子育て費用」がかかります。内閣府による「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」によると、未成年の子どものうち、子育て費用が最もかかるのは中学生で、その額は一人あたり年間約156万円とされています。

子どもの成長は嬉しい反面、子育てにはさまざまなお金がかかります。子どもの将来のためにも、養育費についてはしっかりと取り決め、離婚後の子育ての計画を立てたり、子育て費用を事前に把握したりするなど、対策をしておきましょう。

出典:内閣府「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査

9. 養育費に関する最新お役立ち情報

(1)SNS、ホームページ

最近では、自治体や公的機関も養育費に関する情報提供に積極的です。養育費等相談支援センターのX(旧Twitter)アカウントでは、養育費や面会交流についての基本的なことや、新着情報を中心にお知らせしています。また、裁判所のホームページでは裁判の判例、司法統計、裁判手続きなどに関する情報が掲載されています。

(2)制度

感情が先走ってしまい、万が一養育費の取り決めをせずに離婚してしまった場合でも、一定額の養育費を請求できる「法定養育費制度」の導入が検討されています。これは、子どもの監護や教育のために必要な費用を確保するための制度です。

さらに民間でも、ジェイリースが提供する養育費保証サービス「J-みらい」があります。これは、養育費の確保を支援するサービスで、ひとり親家庭の養育費確保を助成する制度と連携しています。

(3)弁護士

もちろん、親権・面会交流・養育費などの離婚に関する内容を専門とする弁護士に相談することも可能です。有利な条件で離婚したい場合、養育費の未払いにお困りの場合などには、弁護士への相談も検討しましょう。

新たな制度やサービスの導入により、近年では子どもの権利がより一層重視され、養育費の確保のための支援が進んでいます。法制度も着々と整備されているため、最新情報をチェックし、適切な支援を受けられるようにしましょう。弁護士JPでは、今後も最新のお役立ち情報を提供してまいります。

10. シングルマザーのためのお役立ち情報(養育費以外の収入について)

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」の結果によると、母子世帯の養育費受給率はそう高くなく、令和3年度の調査時点で「現在も受けている」が28.1%です。これは、以前に比べて上昇しているとはいえ、養育費が子育ての重要な資源であるにも関わらず、相場以前にそもそも十分に受け取れていない現状を示しています。そこで、養育費以外で収入を得る方法も用意しておくことが重要です。

(1)正社員として働く

安定した収入を得るためには、正社員として働くことが有効です。近年では、働き方改革の影響でリモートワークを推奨する企業も増えてきており、多様な働き方があります。シングルマザーでも仕事と子育ての両立に理解のある企業もたくさんあるため、時間がなくて正社員は無理と諦めずに積極的に求人を探してみましょう。また、難しいかもしれませんが、もし時間と体力に余裕があればダブルワークも一つの選択肢となります。

(2)母子手当、各種支援制度

母子手当は、ひとり親世帯への経済的援助として支給されるお金で、これにより生活費を補うことができます。

さらに、教育費には想像よりお金がかかるため、教育費の補助制度の利用も考えられます。これには公的な支援だけではなく、各学校単位で学費の支援免除制度など特色のある制度が提供されていますので、学校の事務担当者に問い合わせてみましょう。

他にも、民間企業が実施するひとり親家庭支援奨学金制度などもあり、少し調べるだけでもたくさんの情報が出てきます。できる限りストレスフリーな生活を送るためには、「心・時間・お金」の3つのバランスを整えることが必要です。子育ても自分も大切にするために、さまざまな制度を利用しながら、養育費以外の収入源を確保することも検討しましょう。

以下に養育費以外の収入について役立つ情報をまとめております。弁護士JPでは引き続き、最新の支援情報を提供していきますのでぜひ参考にしてください。

(1)養育費以外の収入に関する2024年最新お役立ち情報

イーヨ シングルマザー・シングルファーザーと子供たちの生活に役立つさまざまな支援の情報を提供。イラストを使用した読みやすい記事でシングルの子育てを応援する。
SiN シングルマザーの方や、これからシングルマザーになる方のための情報マガジン。養育費など離婚に関する情報だけでなく、生活のコツやニュース、社会的な課題などを、フラットに提供。
マザーポート シングルマザーに役立つ住宅情報サイト。物件探しができるだけでなく、シングルマザーが家を買うメリットや住宅ローンの審査基準などを住宅購入に関する情報を解説。
自立支援教育訓練給付金 ひとり親が資格を取得する際にかかる教育訓練(講座など)の費用を支援する制度。対象となる講座などを受講し、修了した場合にその費用の60%(下限は1万2,001円、上限は履修年数×20万円、最大80万円)が受けられる。
高等職業訓練促進給付金 ひとり親が資格取得のため1年以上(最長4年)養成機関で学ぶ際に生活費を支援する制度。
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業 高等職業訓練促進給付金を受給する人を対象とした支援制度。

養育費の相場に関するまとめ

いかがでしたでしょうか。養育費は子どもの生活と教育を支える重要な費用です。
養育費の相場は子どもの年齢、生活環境、親の収入などにより変動し、具体的には裁判所が公表する「養育費算定表」を基準に決定されます。
養育費の決定方法は単に相場を元にして決定されるわけではなく「話し合い」と「裁判」の2つの方法により決定され、それぞれには自由度と確定性の違いがあります。
離婚後も子供に対する扶養義務は続くため、生活費を差し引いた現実的な養育費の算定が重要です。
また、支払いが滞った際には法的手段に出ることも可能で、仮に養育費の取り決めをせずに離婚した場合でも、一定額の養育費を請求できる「法定養育費制度」の導入が検討されています。
養育費の最新相場の確認や専門的なアドバイスが必要な場合はお一人で抱え込まずにぜひ弁護士へ相談を検討してみてください。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年05月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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