未払い養育費、どうやって回収する? 時効は?

  • (更新:2024年09月24日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
未払い養育費、どうやって回収する? 時効は?

養育費は、子どもが生活していくために必要になる大切なお金です。離婚した相手から養育費の支払いがない場合には、そのまま放置するのではなく、適切な手続きによりしっかりと回収することが大切です。養育費には時効がありますので、未払いの養育費がある場合には早めに対応するようにしましょう。

1. 未払い養育費が発生したら

養育費の未払いが発生した場合には、以下の流れで未払いの養育費の回収を行います。

(1)相手に直接連絡する(メール、電話、LINEなど)

まずは相手に直接連絡をして、未払い養育費の支払いを求めてみましょう。連絡方法には特に決まりはありませんので、メール、電話、LINEなど適宜の方法によって行います。支払期限を忘れていたり、時間がなくて振り込めなかったりしたケースでは、すぐに対応してくれるはずです。

(2)書面にて請求する(内容証明郵便)

メール、電話、LINEなどの連絡方法では、連絡がつかないときや支払いを拒まれたときは、相手の自宅宛てに内容証明郵便を送るのも効果的な方法です。

内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったのかを証明してもらえるサービスです。相手に支払いを強制する効力まではありませんが、支払いを催促した証拠を残すことができ、相手に対して心理的プレッシャーを与えることができます。

(3)履行勧告・履行命令

養育費の取り決めが家庭裁判所の調停、審判、裁判でなされた場合は、家庭裁判所の履行勧告または履行命令の制度を利用することができます。

履行勧告は、家庭裁判所が相手に履行の勧告を行い、督促してもらうことができる制度です。履行勧告には強制力はありませんが、家庭裁判所から直接連絡がいきますので一定の効果が期待できます。

履行命令は、履行勧告によっても支払いがないときに、家庭裁判所が支払いを命じる制度です。正当な理由なく履行命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられますので、一定の強制力があります。

なお、履行勧告や履行命令の手続きを利用するには、以下の書類が必要ですが、費用はかかりません。

  • 必要事項を記載した申出書
  • 調停調書や審判書などのコピー
  • 相手が義務を守っていないことがわかる資料(預貯金通帳など)のコピー

(4)強制執行をとる

上記の手段によっても養育費の支払いがないときは、強制執行の申し立てを行います。強制執行の申し立てにより相手の財産を差し押さえることができれば、そこから強制的に未払いの養育費を回収することができます。

養育費の不払いへの対処法については、以下のコラムもご参照ください

未払い養育費を回収したい。請求方法と相談先を紹介

2. 未払い養育費の強制執行による回収手順

養育費が未払いになっているからといって、すぐに強制執行の申し立てができるわけではありません。強制執行の申し立てをする前に、まずは以下のことを確認する必要があります。

(1)強制執行をする前に確認すべきこと

養育費が未払いになっているからといって、すぐに強制執行の申し立てができるわけではありません。強制執行の申し立てをする前に、まずは以下のことを確認する必要があります。

①債務名義の有無

強制執行の申し立てをするためには、債務名義を取得している必要があります。債務名義とは、債権の存在および範囲を文書により公的に証明したものをいい、具体的には、以下の文書が挙げられます。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 審判書
  • 執行認諾文言付公正証書

公正証書を作成することなく協議離婚をしたケースでは、債務名義に該当するものがありませんので、家庭裁判所に養育費請求調停の申し立てをするなどして、債務名義を取得する必要があります。

②相手の居所

強制執行の申し立ての際には、相手の所在地を記載する必要がありますので、相手の居所を把握していなければなりません。

離婚後も面会交流などで連絡を取り合っているのであれば、相手の居所を把握するのも容易ですが、そうでない場合には難しいケースも多いです。相手の居所がわからない場合は、弁護士に依頼して相手の所在調査を行ってもらうとよいでしょう。

③相手の財産

強制執行は、裁判所が相手の財産を見つけて差し押さえてくれる制度ではありません。相手の財産を差し押さえるためには、強制執行の申し立てをする側で相手の財産を特定しなければなりません。

現在では、民事執行法の改正により、相手の財産の特定が容易になっていますので、適切な手続きを選択すれば相手の財産の把握は、それほど難しいものではありません。

(2)強制執行の流れ

強制執行の申し立てから財産の差し押さえまでの流れは、以下の通りです。

①必要書類の準備

強制執行の申し立てには、以下の書類が必要です。

  • 申立書(表紙、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録)
  • 債務名義の正本
  • 送達証明書
  • その他の書類(戸籍謄本、戸籍の附票、住民票など)

また、手数料として、4000円(債権者と債務者が1人ずつで債務名義が1通の場合)と郵便切手が必要です。

②強制執行申立書の提出

上記の書類が準備できたら、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に強制執行の申し立てをします。養育費の未払いの事案では、主に債務者の預貯金や給料などが差し押さえの対象ですので、債権執行の申し立てをすることになります。

③差押命令

強制執行の申し立てが受理されると、裁判所から債務者および第三債務者に対して、債権差押命令の送達が行われます。第三債務者(銀行など)に債権差押命令が届いた時点で、口座からの出金はできなくなります。

④取り立て

裁判所から債務者に対して差押命令が送達された日から1週間が経過すると、債権者は、債権の取り立てを行うことができるようになります。銀行や債務者の勤務先などに連絡をして、支払い方法などの相談をするようにしましょう。

取り立てが完了後、裁判所に取立完了届を提出して、強制執行の手続きは終了です。

3.未払い養育費の回収時の注意点

未払いの養育費を回収する際には、以下の点に注意が必要です。

(1)養育費の取り決めをしていた場合には時効がある

離婚時に養育費の取り決めをしていた場合には、養育費の支払期日からカウントして5年間で時効になります。そのため、養育費の支払いが滞った状態で放置していると、時効によって養育費を請求する権利が失われてしまう可能性がありますので注意が必要です。

(2)差し押さえできないものもある

強制執行により相手の給料を差し押さえたとしても、給料の全額を未払い養育費の支払いに充てられるわけではありません。

給料は、本人の生活のために必要なお金ですので、一定の範囲で差し押さえが禁止されています。具体的には、給料から税金などを控除した金額の2分の1が差し押さえ禁止となります。

(3)相手の状況により、減額や支払い打ち切りの可能性もある

相手の経済状況によっては、養育費の減額や打ち切りを求められることがあります。減額や打ち切りの申し出を拒否したとしても、調停や審判によって養育費の減額や打ち切りが認められる可能性もありますので注意が必要です。

養育費の減額や打ち切りが認められる可能性がある事情としては、以下のものが挙げられます。

  • 相手が仕事をクビになり収入がなくなった
  • 相手が再婚をして、扶養家族が増えた

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