養育費の不払いどう対処する? 支払わない元配偶者への対応方法

養育費の不払いどう対処する? 支払わない元配偶者への対応方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

厚生労働省「平成28年度全国母子世帯等調査」によると、離婚時に養育費について取り決めをしたケースは、母子世帯で42.5%、父子世帯では20.8%という結果でした。さらに、離婚後継続して相手から養育費を受け取っているケースは、母子世帯で24.3%、父子世帯においては3.2%という結果が出ています。

養育費は、離婚時に取り決めをすることがとても重要ですが、取り決めをしても払ってもらえない、いわゆる不払いとなってしまうケースは少なくありません。そこで、払ってくれない元配偶者への対応方法について順を追って解説します。

1. 養育費とは本来どのようなもの?

養育費とは、子どもと一緒に暮らしていない親が自身の子どもに自分の生活と同等の生活をさせるために支払う費用のことです。一般的に用いられる養育費算定表では、双方の所得と子どもの数から養育費の金額が算出されています。

離婚後、自分の生活水準を落とすことを嫌い、「生活が苦しいから養育費が払えない」「面会がなかなかできないから支払いたくない」などと理由をつけ、養育費を払わなくなるケースは少なくありません。しかし、たとえ自己破産をしても養育費の債務は清算されないように、養育費の支払い義務は容易に免れることはできません。

2. 不払いになっている養育費を請求する方法

前述の通り、養育費は、子どもを育てる親のためのお金ではなく、他でもない子どものために支払われるべきお金です。そのため、面会の有無などに関係なく、子どもと離れて暮らす親は本人の所得や子どもの数、家庭環境などに応じて適切な金銭を支払う義務があります。離婚の際に養育費について取り決める場合は、当事者間の合意、調停または審判により行います。

合意や調停、審判があるにもかかわらず養育費の不払いが起きたときには、以下の手順で請求を行います。

(1)まずは連絡を取って交渉する

養育費についてどのようなかたちで取決めを行ったか(公正証書や調停調書、審判書、判決書の有無)に関わらず、すでに約束又は決定された養育費の不払いが発生した場合には、まず元配偶者に連絡を取って支払いを促します。

連絡に応じてくれない場合や支払わない旨の返答があった場合には次のステップに進む必要があります。次のステップは養育費の取決めをした方法によって異なります。

養育費の取決めについて、強制執行認諾文言が付された公正証書で合意をしている場合や、調停調書や審判書がある場合には、直ちに(3)の強制執行手続きを行うことができます。

当事者間の合意のみで強制執行認諾文言付き公正証書とはしていない場合には、まず「内容証明郵便」と呼ばれるものを出すことを検討します。

内容証明郵便では、請求する権利がある養育費の額や請求した日などを記載します。書き方がわからない場合は、弁護士などに相談されるとよいでしょう。この内容証明を出すというステップは省略し、次の(2)を行うこともできます。

(2)当事者間の交渉が決裂したら家庭裁判所へ

当事者間の交渉では支払ってもらえなかったときは家庭裁判所に対して養育費の調停を申し立てます。調停は家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを行う手続きです。調停で相手方と養育費の額や支払い方法等について合意できない場合には、調停不成立となり、そのまま審判に移行します。審判では裁判官が審判のかたちで養育費の額について判断します。

(3)強制執行

強制執行認諾文言付きの公正証書がある場合や、調停・審判・裁判で養育費について取決めをしても支払われない場合には、強制執行を行います。詳細は以下でご説明します。

3. 養育費の強制執行とは

強制執行とは、元配偶者の財産を差し押さえて財産を回収・売却することにより、不払いとなっていた養育費の回収に充てるというものです。

(1)強制執行の手続き方法

①強制執行をするためには「債務名義」が必要

<債務名義となる書類>

  • 強制執行認諾条項が表記されている公正証書
  • 家庭裁判所が発行した調停調書や審判書、判決書など

②債務名義以外の必要書類をそろえる

強制執行を行うときには債務名義のほか、債務名義が元相続人にも届けられたことを証明する「送達証明書」と「執行文」という書類が必要です。これらは公正証書が債務名義になる場合は公証役場で、それ以外が債務名義の場合は家庭裁判所で交付が受けられます。なお、調停調書と審判書の場合には執行文は不要です。

さらに、申立書や請求債権目録などの書類を作成する必要があります。

③差し押さえの申し立てを行う

債務名義と、送達証明書、執行文の発行を受けたら、申立書や請求債権目録などの必要書類を準備します。

申し立て先は、債券執行の場合には「相手の住所を管轄する地方裁判所」、不動産執行の場合には「目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所」へ差押えの申し立てを行います。

強制執行手続きは、書類や手続きが複雑なため、自力で行うのが難しい手続きです。そのため、不払いがあって強制執行手続きを進めたいと考えられた場合には、お早めに弁護士にご相談・ご依頼されることをおすすめします。

(2)差押えが可能な財産と強制執行の種類

①債権執行

債権執行は預貯金や生命保険の解約払戻金、給料など「相手が第三者に対して有する権利=債権」を差し押さえることを意味します。

養育費は将来も継続的に発生するものであるため、将来の分も含めて、給与の差押えを行うことができます。これにより将来の不払いも解消できますので非常に有効です。ただし、相手が離職・転職した場合には、再度差押えの手続きを行わなければなりません。

②不動産執行

不動産執行は相手が持つ不動産を差し押さえ、それを競売にかけて売却したお金で債権を回収することを指します。競売を経る必要があるので時間はかかりますが、一括でまとまった債権を回収できる可能性が高くなります。

③動産執行

家や土地などの不動産に対して、現金や貴金属、絵画やパソコンなど「動かせるもの」が動産です。現金以外の財産については競売にかけてその売却金を回収に充てるため、不動産執行に比べて効果が小さくなってしまいがちですが、そこまでするということが相手へのプレッシャーになり、不払いが解消されるきっかけになった、というケースもあります。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年06月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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