
- 離婚・男女問題
DVで離婚した場合の慰謝料はいくら? 証拠の集め方、請求方法を解説
配偶者によるDVが原因で離婚を考えている方もいると思います。相手と離れたいという気持ちからとりあえず離婚をしてしまいがちですが、配偶者からDVを受けている場合には、離婚時に慰謝料を請求することができる可能性があります。DVによる離婚慰謝料の相場や証拠収集の方法を知ることによって、離婚への不安も多少は和らぐかもしれません。
今回は、DVで離婚をした場合の慰謝料相場、証拠の集め方、慰謝料の請求方法について解説します。
1. DVで離婚した場合の慰謝料はいくら?
DVで離婚をした場合の慰謝料の金額は、ケースバイケースですので一概にはいえませんが、相場としては、50~300万円程度といわれています。以下では、DVで離婚をした実際の事例における慰謝料額を紹介します。
(1)DVによる離婚で50万円が認められたケース(東京地裁平成18年8月28日判決)
この事案では、夫が、妊娠していた妻のいる方向に物を投げつけ、これに怒り謝らせようとした妻の肩を突き飛ばし、妻の物品など(合計約25万円)を壊したことや、その後、生活費・出産費用を妻に渡さなかったことが認定され、50万円の慰謝料の支払いが命じられました。
慰謝料額が低くなったのは、夫が上記行為を行ったことについて、妻にも責任の一端があったことと、夫婦の性格が合わなかったことが夫婦関係の破綻の原因になっている(DVだけが離婚の原因ではない)と認定されたためです。
(2)DVとモラハラで100万円が認められたケース(東京地裁平成18年1月17日判決)
この事案では、夫が妻に対して、ベッドから突き落とす、顔を足で踏むなどのDVが認定されましたが、けがをしない程度の暴力であったことから、100万円の慰謝料の支払いが命じられました。
婚姻期間が1年2か月という短期間であったことからすると100万円という慰謝料は、比較的高額であるといえます。
(3)DVで200万円が認められたケース(東京地裁平成18年7月27日判決)
この事案では、夫が妻に対して、10年以上の長期間において、激しい暴力を加え、時には妻が骨折したことがあったと認定され、200万円の慰謝料の支払いが命じられました。
DVが長期間であったことと、暴力の程度も重いことから比較的高額の慰謝料が命じられた事案です。
(4)DVで300万円が認められたケース(東京地裁平成18年11月29日判決)
この事案では、夫が妻に対して、度重なる暴力を加えたことにより、妻には後遺障害が生じたことが認定され、DVによって離婚することを余儀なくされたとして300万円の慰謝料の支払いが命じられました。加えて、入院慰謝料や後遺障害慰謝料などの請求についても認められています。
婚姻期間が10年以上で、後遺障害等級併合8級が認定されたため、非常に高額な慰謝料の支払いが命じられた事案です。
※以上は、事例を簡素にしたものです。事例の詳細は、判例をご確認ください。また、実際の事案におけるDVによる離婚慰謝料の額を保証するものではありません。具体的な見込み金額は、弁護士にご相談ください。
2. 請求するために証拠を確保する方法は?
DVを理由に離婚慰謝料を請求するためには、DVを証明するための証拠が必要になります。
(1)けがをした部分の写真や動画
配偶者からDVを受けてけがをした場合には、その部分を写真や動画で撮影をしておきましょう。撮影する際には、けがをした部分を拡大したものとご自身であることがわかるように顔が写るように撮影したものが必要です。また、写真を撮った日付が分かるような形であると証拠価値が上がります。
また、けがの程度によっては、数日で跡が消えてしまうこともありますので、早めに撮影することが大切です。
(2)暴力を振るわれているときの録音や録画
配偶者から暴力を振るわれているときの録音や録画があれば、DVを立証する直接的な証拠になります。ただし、突発的に行われたDVなどでは、録音や録画をする余裕がないこともありますので、無理に準備する必要はありません。
(3)詳細な日記
配偶者からDVを受けた場合には、その状況を詳しく記載した日記についてもDVの証拠になります。継続的に日記をつけていれば、日記の証拠としての信用性が高くなりますので、普段から日記をつけておくことが大切です。
(4)医療機関に受診する
けがをしている場合には、医療機関で治療を受けることを検討してください。医療機関を受診した場合には、カルテにけがの状態が記録され、のちに証拠として活用できます。けがを早く治すためにも、受診を強くおすすめします。
3. 証拠を集めたらどうやって請求するの?
DVの証拠収集ができた段階で、以下のような方法で、慰謝料請求を行います。
(1)第三者を交えた交渉
離婚や慰謝料請求をする場合には、まずは当事者同士の話し合いによって行うのが一般的です。しかし、DVを理由とする離婚や慰謝料請求では、離婚の話を切り出したことでDV加害者から暴力を振るわれるリスクがありますので、できる限り当事者だけの話し合いは避けた方がよいといえます。
話し合いをする際には、弁護士などの第三者を間に入れて交渉を進めるようにしましょう。
(2)離婚調停の申し立て
話し合いでは解決することができない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。離婚調停では、離婚に関する話し合いだけでなく、DVを理由とする慰謝料についての取り決めをすることができます。
当事者同士の話し合いとは異なり、離婚調停では、当事者の間に調停委員が入って話し合いを進めてくれるため、顔を合わせて話し合いをする必要はありませんのでご安心ください。
(3)離婚訴訟の提起
離婚調停で離婚の合意や慰謝料の金額の合意が得られない場合には、最終的に離婚訴訟を提起して解決を図ることになります。配偶者からDV被害を受けていたという事情は、立証することができれば離婚やDV慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年04月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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