一方的な給料の減額は拒否できる? 不利益な労働条件の変更は違法

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
一方的な給料の減額は拒否できる? 不利益な労働条件の変更は違法

会社が給料(=賃金、給与)を一方的に減額することは、違法となるケースが多いです。もし会社が勝手に給料を減額したら、弁護士のサポートを受けながら元に戻すように求めましょう。

1. 一方的な給料の減額は違法?拒否できる?

会社が労働者(=従業員、社員)の給料を一方的に原則することは、一部の例外を除いてできません。

労働契約の内容である労働条件を変更するためには、原則として労働者と使用者の合意が必要です(労働契約法第8条)。給料の金額は労働条件の一部であるため、労使の合意がなければ、原則として減額することができません。

就業規則を変更することにより、給料を減額しようとする会社もあるようですが、これも原則として違法です(同法第9条)。

もし会社が一方的に給料を減額したら、弁護士を代理人として会社に反論し、労働法に従った正しい取り扱いを求めましょう。

2. 給料の減額が違法にならないケース

会社による給料の一方的な減額は原則として違法ですが、以下のケースにおいては、給料の減額を適法に行うことができます。給料の減額が適法か違法かの判断が難しい場合には、弁護士にご相談ください。

  1. 労働者との合意に基づく給料の減額
  2. 適正な人事評価による給料の減額
  3. 正当な懲戒処分としての減給
  4. 賞与の減額
  5. 就業規則の合理的な変更による給料の減額

(1)労働者との合意に基づく給料の減額

労働者と使用者が合意すれば、労働条件の変更が可能です。給料も労働条件の一部であるため、労使の合意に基づく減額は認められます。

(2)適正な人事評価による給料の減額

あらかじめ定められた人事評価制度に基づき、適正な人事評価を行ったうえで、その評価に基づいて給料を減額する場合には、労働条件の変更に当たりません。「人事評価制度に基づく額の給料を支払う」という点が変わっていないからです。

したがって、適正な人事評価に基づく給料の減額は認められます。ただし、労働契約の締結後に新設した人事評価制度に基づく給料の減額は、労働者の同意がなければ認められない可能性が高いです。

(3)正当な懲戒処分としての減給

労働者が就業規則上の懲戒事由に該当し、かつ就業規則において減給の懲戒処分が定められている場合には、会社は減給処分を行って労働者の給料を減額できます。

ただし、労働者の行為の性質・態様等に照らして、客観的・合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない減給処分は無効です(労働契約法第15条)。

(4)賞与の減額

賞与額の決定については、会社の広い裁量が認められるのが一般的です。したがって、労働契約において金額や計算方法が明示的に定められていない限り、賞与を減額することは適法である可能性が高いと考えられます。

(5)就業規則の合理的な変更による給料の減額

就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、原則として違法です(労働契約法第9条本文)。

ただし例外的に、以下の要件をいずれも満たす場合には、就業規則の変更によって、労働者の不利益に労働条件を変更することが認められます(同法第10条)。

①変更後の就業規則を労働者に周知させること

②就業規則の変更が、以下の事情に照らして合理的なものであること

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉の状況
  • その他の就業規則の変更に係る事情

③労働契約において、就業規則の変更によっては変更されない旨を合意した労働条件でないこと

給料についても、上記の要件をすべて満たす場合に限り、就業規則の変更による減額が可能です。

3. 給料の減額への同意を求められた場合にとるべき対応

会社から給料の減額への同意を求められた場合は、落ち着いて以下の対応をとりましょう。

  1. すぐに回答せず、納得できないなら断るべき
  2. 不本意な同意書にサインしてしまったら、同意の無効を主張する
  3. 対応が難しいときは弁護士に相談する

(1)すぐに回答せず、納得できないなら断るべき

給料の減額に同意するかどうかは、労働者が自由に判断すべき事柄です。したがって、減額に納得できないなら断って構いません。給料の減額を断ったことを理由に、会社が労働者を不利益に取り扱うことは違法です。

なお、会社は労働者に対して、同意するかどうかすぐに回答するよう圧力をかけてくることがあります。労働者としては、会社の圧力に屈することなく、一度持ち帰って冷静に検討したうえで回答しましょう。

(2)不本意な同意書にサインしてしまったら、同意の無効を主張する

納得していないにもかかわらず、会社の圧力によって給料減額の同意書にサインさせられた場合には、同意の無効を主張しましょう。

最高裁の判例でも、賃金に関する労働条件の変更については、労働者の立場や情報収集能力などに鑑み、労働者の同意があったか否かの判断は慎重になされるべきとされています(最高裁平成28年2月19日判決)。会社から不当な圧力がかけられた場合や、短時間での意思決定を強いられた場合などには、同意が無効と判断される可能性は十分あると考えられます。

(3)対応が難しいときは弁護士に相談する

会社の給料減額に関する要求について、ご自身での対応が難しい場合には、弁護士に相談するのが安心です。弁護士に依頼すれば、会社との交渉や法的手続きの対応などを全面的に代行してもらえます。

会社とのトラブルを有利な形で解決するためには、労働問題への対応を得意とする弁護士を探して相談・依頼しましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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