職場のいじめを訴える方法|慰謝料請求の相場と手順を紹介

  • 労働問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
職場のいじめを訴える方法|慰謝料請求の相場と手順を紹介

職場は、毎日長い時間を過ごす場所ですので、上司や同僚からいじめられると、大きなストレスになります。そのような状態が続くと精神的ストレスからうつ病を発症するリスクもあります。
そのため、職場でいじめを受けている方は、被害が深刻化する前に適切な対処を講じることが必要です。いじめの内容によっては損害賠償請求などの法的措置が可能なケースもありますので、まずは職場でのいじめの対処法をきちんと理解しておきましょう。

1. 職場でのいじめの具体的な例

以下では、職場でよくあるいじめの具体例を紹介します。

(1)暴力や暴言

  • 上司や先輩から殴られたり、蹴られたりする
  • プレゼン用の資料を提出したら「やり直せ!」と怒鳴られて、書類を投げつけられる
  • 他にも同僚がいる前で「バカ」「無能」「役立たず」などと罵られる

このような暴言や暴力は、パワハラにも該当する可能性のある行為です。悪質なものであれば、刑法上の犯罪が成立し、刑事事件になる可能性もあります。

(2)無視や仲間外れ

  • 職場で挨拶をしても無視される
  • 送迎会や忘年会の連絡が自分にだけこない
  • 会議の資料が自分だけ配布されない

無視や仲間外れは、暴言や暴力のように直接危害を加えられるわけではありませんが、疎外感を感じて、相当な精神的ストレスを感じます。仕事に必要なコミュニケーションも取れなくなると、業務に支障が出ることもあるでしょう。

(3)無理な仕事の要求

  • 到底達成できないような過大なノルマを課される
  • 1日ではとても終わらないような業務を与えられるため、毎日残業が続いている
  • 終業間際になって、大量の仕事を押し付けられる
  • 十分な引き継ぎもなく、いきなり不慣れな業務を任される

職場では、従業員同士が協力し合って仕事を進めていかなければなりません。それなのに、特定の従業員に対してだけ、過大な業務を課し、無理な仕事を要求するのは、理不尽な扱いといえます。

(4)仕事を与えられない

  • 他の従業員よりも仕事量が圧倒的に少なく、毎日やることがない
  • 業務とは無関係な倉庫整理やトイレ掃除ばかりやらされる
  • 「女には任せられない」という理由で大きなプロジェクトから外される

職場内で仕事を与えられないというケースも、いじめに該当します。仕事を与えてもらえなければ、会社で仕事をする意味を見出せず、職場へ行くこと自体に精神的苦痛を感じることになります。

2. 職場でのいじめで損害賠償請求は可能?

職場でいじめにあった場合には、加害者や職場に対する損害賠償請求は可能なのでしょうか。

(1)損害賠償請求は可能!ただしハードルは高い

職場でのいじめを受けた場合、いじめの内容によっては加害者に不法行為責任が生じ、また、会社にも安全配慮義務違反や使用者責任が生じますので、損害賠償請求をすることは可能です。

しかし、職場でのいじめを理由とする損害賠償請求は、以下の2点で実際にはハードルが高いものとなっています。

①証拠集めが難しい

職場でのいじめを理由に損害賠償請求をするには、いじめの被害を受けた従業員がいじめられたことを証拠により立証していかなければなりません。

しかし、職場でのいじめは閉鎖的な空間で行われ、加害者からの言動などは客観的な証拠に残りづらいという性質があります。そのため、いじめを立証するための証拠がなかなか集まらないという理由で損害賠償請求を断念するケースもあります。

②弁護士に依頼した場合は費用倒れになる可能性がある

職場でのいじめ問題を弁護士に依頼した場合には、弁護士費用がかかります。

損害賠償請求をして、いじめが認められなければ、弁護士費用の負担だけが生じてしまいます。また、十分な証拠があり、いじめの損害賠償請求が認められたとしても、職場のいじめでは高額な慰謝料は期待できず、費用倒れになってしまう可能性もあるため注意が必要です。

(2)職場のいじめの相談先

職場でのいじめを相談できる窓口としては、以下のものが挙げられます。

①社内の相談窓口

会社内にハラスメント相談の窓口が設置されているようであれば、それを利用してみるとよいでしょう。ただし、相談窓口が適切に運用されていなければ、相談をしたことで被害が拡大するおそれもありますので注意が必要です。

②総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーとは、各都道府県労働局や労働基準監督署に設置されている相談窓口です。いじめだけでなくさまざまな労働問題について無料で相談に応じてくれますので、こちらも利用してみるとよいでしょう。

③弁護士

いじめを理由とする損害賠償請求をお考えの方は、ぜひ弁護士に相談をしてみてください。

弁護士に相談をすれば、法的観点からいじめの立証が可能であるか、どのくらいの損害賠償請求が可能であるかを判断してくれます。また、労働者個人で対応が難しい場合には、弁護士が労働者の代わりに交渉や裁判などの対応を行ってくれます。

初回相談料無料で対応している弁護士もいますので、まずはそのような弁護士を探して相談してみるとよいでしょう。

3. 職場でのいじめの損害賠償金の相場

職場でいじめられた場合には、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか。以下では、職場でのいじめの損害賠償金の相場を説明します。

(1)職場でのいじめの慰謝料:相場は50〜100万円

職場でのいじめの慰謝料相場は、50万円から100万円が相場とされています。

これは、あくまでも一般的な慰謝料の相場になりますので、事案によっては、相場よりも低い金額になることもありますし、反対に相場よりも高額な慰謝料を請求できる可能性もあります。そのため、正確な慰謝料額を知りたいという場合には、まずは労働問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。

(2)いじめの慰謝料を増減させる要因

いじめの慰謝料は、さまざまな事情を踏まえて、金額が決められます。以下では、いじめの慰謝料を増減させる主な要因を紹介します。

①いじめの内容

いじめの慰謝料は、いじめの内容が悪質であるほど金額が高くなる傾向があります。

たとえば、無視されるいじめと暴力を受けるいじめでは、後者の方がより悪質と判断されますので、慰謝料額が高額になる可能性があります。

②被害者と加害者の関係

被害者と加害者、両者の力関係の差が大きくなればなるほど、慰謝料も高額になる傾向があります。

たとえば、同僚からのいじめよりも、上司からのいじめの方が立場を利用しているという点でより悪質だと判断されるため、慰謝料額が高額になる可能性があります。

③いじめの期間・頻度

いじめの期間が長い、または頻度が多い場合には、いじめの慰謝料は高額になります。なぜなら、単発的ないじめよりも継続的ないじめの方が被害者に与えるダメージが大きくなるからです。

④いじめにより生じた被害

いじめにより、被害者がうつ病になった、退職に追いやられた、自殺をしたなどの実害が生じている方が、いじめの慰謝料は高額になります。

⑤いじめに関する会社の対応

会社には、いじめに対して適切に対処する義務があります。労働者からいじめの相談を受けていたにもかかわらず、それを放置していたような場合には、会社にも落ち度があるといえますので、慰謝料が高額になる可能性があります。

4. 職場でのいじめで損害賠償を請求する手順

職場でのいじめで損害賠償請求をする場合には、どのような手順で行えばよいのでしょうか。

(1)職場のいじめでの法的措置

職場のいじめで法的措置をとることの、メリット・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

①法的措置をとるメリット

職場のいじめで法的措置をとれば、いじめ問題が顕在化しますので、会社としても本気で取り組まなければならなくなります。相談をしてもまともに取り合ってくれないケースでも法的措置をとることで、職場環境が大幅に改善されることが期待できます。

また、いじめの証拠が十分にあるケースであれば、加害者や会社の法的責任を追及し、いじめにより被った被害を回復できるというメリットもあります。

②法的措置をとるデメリット

法的措置をとるためには、弁護士への依頼が必要になるケースが多いです。そうすると弁護士費用の負担が生じるという点がデメリットとして挙げられます。

いじめによる損害賠償請求が認められたとしても、事案によっては弁護士費用の方が慰謝料額を上回るなど費用倒れになるリスクもあります。法的措置をとるかどうかは、弁護士費用との兼ね合いで慎重に判断することが大切です。

(2)労働審判・訴訟の手続きの流れ

職場のいじめで法的措置をとる場合には、労働審判または訴訟という方法が考えられます。以下では、それぞれの手続きの流れを説明します。

①労働審判

労働審判とは、労働者と事業主との間の労働問題を実情に即して、迅速・適正・実効的に紛争を解決できる手段です。このような労働審判は、以下のような流れで進みます。

  • 労働審判の申立
  • 期日指定
  • 第1回労働審判手続き期日
  • 第2回、第3回労働審判手続き期日
  • 調停成立または労働審判

なお、労働審判に不服があるときは、2週間以内に異議申立てをすれば、労働審判の効力は失われ、通常の訴訟手続きに移行します。

②訴訟

会社との話し合いで解決ができないときは、最終的に裁判所に訴訟を提起します。訴訟は、以下のような流れで進みます。

  • 裁判所に訴状を提出
  • 期日の指定
  • 第1回口頭弁論期日
  • 続行期日
  • 和解勧試
  • 当事者および証人尋問
  • 判決

なお、裁判の期日は、基本的には1か月に1回のペースで開催されますので、訴訟提起から判決までには、1年程度の期間を要することも少なくありません。

(3)労働問題を訴える際はまず相談から

職場でのいじめに対して法的措置をとる場合には、敗訴のリスクや費用倒れのリスクがありますので、法的措置を躊躇(ちゅうちょ)してしまう方もいるでしょう。

法的措置をとるためには、このようなリスクをしっかりと理解したうえで進める必要がありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士からこれらのリスクの説明や証拠収集のアドバイスなどを受けることで、法的措置をとるかどうかの結論が明確になります。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

労働問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す