不当解雇されたとき失業保険は給付される?

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
不当解雇されたとき失業保険は給付される?

会社による解雇が不当解雇であったとしても、それを争うためにある程度の期間がかかります。その間は、会社からの収入がありませんので、経済的な理由から不当解雇を争うことに躊躇してしまう方も少なくありません。

このような場合には、失業保険の仮給付という手続きを利用することで、経済的な不安なく不当解雇を争っていくことができます。

1. 不当解雇で争っている間も失業保険は受給できる

失業保険というと会社を退職または解雇されたときに受給するものというイメージがありますので、不当解雇を争う場合には失業保険はもらえないと考えている方も少なくありません。しかし、不当解雇で争っている間も失業保険の「仮給付」を受給できます。

失業保険の仮給付とは、労働者が解雇の有効性を争っている場合において、仮として失業保険を支給する制度です。あくまでも仮として失業保険をもらっているにすぎませんので、不当解雇を争う姿勢とは矛盾することはありません。

失業保険の仮給付では、普通の失業保険と同じ金額を同じ期間もらうことができます。しかし、解雇が無効と判断された場合には返還しなければならない点に注意が必要です。

2. 失業保険の仮給付の手続き

以下では、失業保険の仮給付の手続きについて説明します。

(1)通常、失業保険を受給するときと共通する手続き

失業保険の仮給付というと、特別な手続きをイメージするかもしれませんが、基本的な手続きは、一般的な失業保険を受給するときと同じです。具体的には、以下のような流れで手続きを進めていきます。

①離職票を受け取る

離職票は、ハローワークが発行する書類になりますが、会社を通じて発行の手続きが行われます。労働者を解雇した会社では、離職票発行の手続きを進めていきますので、後日会社から交付される離職票を受け取りましょう。

②ハローワークで失業保険の申請をする

会社から離職票が交付されたら、ハローワークに行き、失業保険の申請を行います。申請にあたっては、以下の書類が必要になりますので、あらかじめ準備しておきましょう。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • マイナンバーカード
  • 身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 証明写真2枚(縦3.0㎝×横2.5㎝)
  • 本人名義の預金通帳、キャッシュカード

③雇用保険受給者初回説明会

受給説明会では、失業保険受給に関する重要な説明を行いますので、必ず出席します。初回説明会では、雇用保険受給資格者証と失業認定書が交付されます。

④失業の認定

原則として、4週間に1度、失業認定を行います。指定された日にハローワークに行き、失業認定申告書に求職活動状況を記入し、雇用保険受給資格者証と一緒に提出します。

⑤失業保険の受給

失業認定を行った日から、通常は5営業日で指定された金融機関の口座に失業保険の基本手当が振り込まれます。

(2)「不当解雇を争っていること」の証明が必要

失業保険の仮給付を受けるには、上記で説明した一般的な提出書類に加えて、「不当解雇を争っていること」を証明する書類も提出しなければなりません。

「不当解雇を争っていること」を証明する書類としては、以下のものが挙げられます。

  • 訴状および受理証明書
  • 労働審判申立書および受理証明書
  • 労働委員会によるあっせんの申立書および受理証明書
  • 内容証明郵便による通知書および配達証明

不当解雇の問題を弁護士に依頼しているのであれば、上記書類は弁護士に用意してもらうことができます。

(3)会社から離職票をもらえていない場合

会社から離職票がもらえない場合には、まずは退職した会社に問い合わせをして、離職票の交付は法律上の義務であることを伝え、離職票の発行を促しましょう。それでも会社が応じてくれない場合には、ハローワークに相談すれば離職票なしでも手続きを進めてくれることもあります。

不当解雇で離職票を要求するのは矛盾するように感じるかもしれませんが、仮ではあっても失業保険を受給しますので、離職票が必要になります。

3. 失業保険の仮給付金を返さなければいけないケースに注意

失業保険の仮給付では、仮給付金を返還しなければならないケースがあります。

(1)仮給付金を返還しなければいけないケース

失業保険の仮給付は、解雇が有効であることを前提とした仮の給付になります。そのため、その前提が崩れた場合には、仮給付金の返還をしなければなりません。

失業保険の仮給付金を返還しなければならない具体的なケースとしては、以下の2つのケースが挙げられます。

①解雇が撤回され復職する場合

会社との交渉または裁判により不当解雇が撤回されれば、労働者は職場に復帰できます。これにより失業保険の仮給付をもらえる条件を満たさなくなりますので、すでに受け取った仮給付金は返還しなければなりません。

②解雇を撤回したうえで退職する場合

解雇が撤回されたとしても、会社に復職するつもりがないという場合には、会社を退職するという選択をすることもあります。解雇の撤回により、会社と労働者との雇用契約は遡って有効となりますので、退職日までの期間は、失業保険の仮給付の受給条件を満たさなくなります。そのため、この場合も仮給付金の返還が必要になります。

(2)仮給付金を返還しなくてもいいケース

解雇が撤回されず、退職日を解雇日とするのであれば、「解雇期間=失業期間」であることに変わりありませんので、仮給付金の返還は不要です。

(3)失業保険の返還を先延ばしにすると不正受給になる

失業保険の仮給付金の返還が必要であるにもかかわらず、返還を先延ばしにしていると不正受給とみなされる可能性があります。特に悪質なケースについては、失業保険の返還だけでなく、不正受給額の2倍の追納が命じられることもありますので注意が必要です。

4. 失業保険の仮給付手続きが済んだら

失業保険の仮給付の手続きが済めば仮給付金が振り込まれますので、経済的な不安も解消されます。続いて、会社に対し不当解雇を理由として解雇の撤回を求めていきましょう。

ただし、会社側は解雇の撤回に簡単には応じてくれませんので、労働審判や訴訟などの法的手続きが必要になるケースも多いです。そうなると労働者個人で対応するのは難しいといえますので、専門家である弁護士に対応を任せるとよいでしょう。不当解雇の疑いがある場合には、まずは弁護士にご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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