内部告発のやり方を解説|リスクと不遇処分があったときの対処法

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内部告発のやり方を解説|リスクと不遇処分があったときの対処法

社内における不正行為については内部告発をすることが考えられます。
しかし、十分な調査と検討を行わずに内部告発をすると、思わぬ不利益を被るおそれがあるので注意が必要です。弁護士のアドバイスを踏まえた上で、内部告発をすべきかどうか検討しましょう。

1. 内部告発をすることのリスク

内部告発をした労働者は、社内で冷遇されるなどの不利益を受けるおそれがあります。

しかし、内部告発が正当なものであれば、公益通報者保護法によって通報者は保護されます。内部告発をする際には、公益通報の要件を満たしているかどうか確認しましょう。

(1)内部告発によって告発者が被るリスク

内部告発をすると、通報者は以下のような不利益を受けることがあります。

  • 報復人事
    →出世ポストから外されたり、閑職に左遷されたりするおそれがあります。
  • 解雇
    →内部告発によって会社に損害を与えたことなどを理由に、解雇されるおそれがあります。
  • 人間関係の悪化
    →内部告発をしたことが噂で広まると、上司や同僚などとの関係性が悪化することがあります。
  • パワハラ
    →内部告発をしたことを恨む人などから、嫌がらせなどのパワハラを受けるおそれがあります。

(2)正当な内部告発(内部通報)は「公益通報」として保護される

社内における違法行為を正しく指摘する内部告発は、公益の観点から奨励されるべきです。そこで公益通報者保護法では、正当な内部告発を「公益通報」として保護しています。

公益通報の対象となるのは、以下のいずれかに該当する事実(=通報対象事実)です。犯罪・過料・行政処分に相当する行為は、広く公益通報の対象とされています。

  1. 公益通報者保護法別表に掲げる法律に規定される、犯罪または過料に当たる行為
  2. 違反した場合には 1 の法律に基づく犯罪または過料に該当する、行政処分の理由となる事実

(例)

  • 取締役が会社の資金を横領している。
  • 取締役が粉飾決算をしている。
  • 労働基準法違反の長時間労働など、さまざまな労働問題が社内で発生している。
  • 組織的に悪徳商法を行っている。

など

ただし、内部告発を行う窓口によって、公益通報として保護されるための要件が異なります。公益通報の保護要件については、後述します。

(3)内部告発を理由に懲戒処分を行うことは認められるのか?

内部告発が公益通報に当たる場合には、告発者である労働者に対して不利益な取り扱いをすることは禁止されます(公益通報者保護法第5条第1項)。

したがって、懲戒処分を行うことも認められません。公益通報者保護法に違反して懲戒処分を行った事業者は、内閣総理大臣による勧告や公表処分の対象となります(同法第15条、第16条)。

また、労働者が労働基準監督署に対して、労働基準法または労働安全衛生法に違反する事実を申告したことを理由に、使用者が労働者を不利益に取り扱うことも違法です(労働基準法第104条第2項、労働安全衛生法第97条第2項)。

2. 内部告発の窓口・手順・注意点

実際に内部告発を行う際の窓口・手順・注意点について解説します。

(1)主な内部告発の窓口と手順

内部告発の主な窓口としては、社内窓口・社外窓口・行政機関・その他の団体(報道機関や市民団体など)が挙げられます。

内部告発先によって、手順や公益通報としての保護要件が異なるので注意しましょう。

①社内窓口・社外窓口

会社が内部通報制度を設けている場合には、指定された社内窓口または社外窓口に対して内部告発を行いましょう。

通報対象事実(前述)が生じ、またはまさに生じようとしていると思料する状態で内部告発を行えば、公益通報として保護されます。

②行政機関

通報対象事実について監督を行う行政機関も、内部告発の有力な候補先です。行政機関のウェブサイトで連絡先を検索するか、または各行政機関の事務所へ訪問して内部告発を行いましょう。

行政機関に対する内部告発は、通報対象事実の発生等を信ずるに足りる相当の理由があるか、または実名で行った場合に限り、公益通報として保護されます。

③その他の団体

報道機関や市民団体などに対して内部告発をする際には、公益通報としての保護要件が非常に厳しい点に注意が必要です。

具体的には、社内窓口や社外窓口に通報すると解雇その他の不利益な取り扱いや証拠の隠滅等が行われる可能性が高い場合や、通報後20日が経っても調査開始の通知がない場合などに限り、公益通報として保護されます。

(2)内部告発をする際の注意点

内部告発をする際には、公益通報として保護されるための要件を満たしているかどうかを必ず確認しましょう。後に要件が満たされていなかったことが判明すると、会社から損害賠償請求や懲戒処分などを受けるリスクがあります。

また、内部告発をしたことは他の人に話さないようにすべきです。もし他の人に話してしまうと、内部告発をしたことが噂で広まってしまい、社内で冷遇されるリスクが高くなります。

特に匿名で内部告発をする際には、証拠資料に告発者を特定できる情報が含まれていないかどうか慎重に確認しましょう。

3. 内部告発をする際には弁護士に相談を

内部告発をする場合には、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、公益通報として保護されるかどうか、社内で冷遇されるリスクを防ぐにはどう対応すべきかなどについてアドバイスを受けられます。実際の内部告発の手続きについても、丁寧にサポートを受けられるので安心です。

社内で違法行為を発見したら、内部告発について速やかに弁護士へご相談ください。

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