内定取り消しに対する損害賠償請求|弁護士費用の相場や内訳を解説
- 労働問題

希望する企業から内定をもらったにもかかわらず、卒業間近になって突然内定が取り消されてしまうと、大きなショックを受けるでしょう。また、そのようなタイミングで内定が取り消されると、他の企業への就職も絶たれてしまいますので、経済的にも大きな損害を被ります。
企業による内定取り消しに違法性が認められる場合には、慰謝料などの損害賠償請求が可能です。違法な内定取り消しを受けたときは、弁護士に相談してしっかりと争っていくようにしましょう。
1. 違法な内定取り消しに対して弁護士ができること
違法な内定取り消しを受けたときに、弁護士はどのようなことができるのでしょうか。
(1)そもそも違法な内定取消しとは?
内定というとまだ入社前ですので、簡単に取り消されてしまうと考える方も少なくありません。
しかし、内定の法的性質については、始期付解約権留保付労働契約だと考えられています。そのため、内定の時点で、一定の期限・条件付きではありますが労働契約が成立していることになります。そのため、内定取り消しは、解雇と同様に厳格な要件で判断されますので、合理的な理由のない内定取り消しは違法となります。
①内定取り消しが違法になるケース
- 定員以上に採用したことを理由とする内定取り消し
- 社風に合っていないことを理由とする内定取り消し
- 妊娠を理由とする内定取り消し
- 特定の宗教に入信していることを理由とする内定取り消し
②内定取り消しが認められるケース
- 内定者が学校を卒業できなかった
- 必要な資格を取得できなかった
- 健康状態が悪化して働くことができない状態になった
- 経歴に虚偽があった
- 犯罪を起こして有罪判決を受けた
(2)違法な内定取消しに対する損害賠償請求での弁護活動
違法な内定取り消しがあった場合、弁護士に依頼することで、以下のようなサポートが受けられます。
①会社との交渉により内定取り消しの撤回を求める
弁護士に依頼すれば、弁護士が内定者の代理人として、会社との交渉を行うことができます。法的根拠に基づいて内定取り消しの違法性を説明することで、会社も内定取り消しの撤回に応じてくれる可能性が高くなります。
②内定取り消しの無効を主張して裁判を起こせる
会社との交渉が決裂した場合でも弁護士に依頼すれば、裁判により内定取り消しの無効を主張して、従業員としての地位確認を求める訴えを提起してもらうことができます。
内定取り消ししたような会社で働きたくないというときでも、慰謝料や解決金などによる解決を図ることができます。
(3)内定取消しに対して損害賠償が認められた判例
①最高裁 昭和54年7月20日
新卒予定の内定者がグルーミー(陰鬱)な印象だったことを理由に内定を取り消した事案について、裁判所は、内定取り消しは解約権の濫用にあたるとして、慰謝料100万円の支払いを命じました。
②東京地裁 平成16年6月23日判決
中途採用の内定者について、根拠のない悪評に基づいて内定を取り消したという事案について、裁判所は、内定取り消しは違法であると判断し、慰謝料100万円の支払いと2か月半分の給与相当額の損害の賠償を命じました。
2. 内定取り消しで損害賠償請求をするための弁護士費用の相場と内訳
違法な内定取り消しによる損害賠償請求を弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかります。以下では、弁護士費用の相場と内訳を説明します。
(1)内定取り消しに対する損害賠償請求での「弁護士費用の相場」
内定取り消しに対する損害賠償請求を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の相場は、約50万円前後になります。
これは、あくまでも一般的な相場ですので、事案によってはこれよりも低くなったり、高くったりすることもあります。また、弁護士費用は、事件を依頼する弁護士によって異なりますので、弁護士に依頼する前に弁護士費用の概算と内訳を出してもらうようにしましょう。
(2)内定取り消しに対する損害賠償請求での「弁護士費用の内訳」
弁護士費用には、さまざまな項目が含まれています。以下では、内定取り消しに対する損害賠償請求を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の内訳を説明します。
①相談料
相談料とは、弁護士に相談する際にかかる費用です。一般的には以下のような時間単価で設定している事務所が多いです。
- 30分あたり5000円(税別)
- 1時間あたり1万円(税別)
弁護士事務所によっては、初回法律相談料を無料にしているところもありますので、費用負担を抑えたいときは、そのような弁護士事務所を探してみるとよいでしょう。
②着手金
着手金とは、弁護士に依頼した際に発生する費用です。
内定取り消しの違法性を主張する事件では、労働者としての地位確認と損害賠償請求の双方を請求することが多いため、それぞれの請求内容や請求額などを基準にして着手金を計算します。
内定取り消しの事件を弁護士に依頼した場合の一般的な着手金の相場は、20万円~30万円程度です。
③報酬金
報酬金とは、事件が終了した時点で実際の成果に応じて支払われる費用です。
内定取り消しの違法性を主張する事件では、労働者としての地位が認められたか、損害賠償としていくら支払われたかが報酬金算定の基準となります。
内定取り消しを弁護士に依頼した場合の一般的な報酬金の相場は、20万円程度となり、さらに実際に回収できた金額の10~16%が報酬金に加算されます。
④実費
実費とは、弁護士が事件処理にあたって実際に必要になった費用です。
実費に含まれるものとしては、印紙代、切手代、コピー代、交通費などがあります。
⑤日当
日当とは、弁護士が事件処理にあたって時間的拘束を受けた場合に発生する費用です。 主に遠方の裁判所に出廷する際に発生し、拘束時間に応じて1~3万円程度がかかります。
3. 違法な内定取り消しに遭った場合の対処法
違法な内定取り消しにあった場合には、以下の対処法を検討しましょう。
(1)内定取消しの理由を確認する
内定先の企業から内定取り消しをされてしまったときは、素直に受け入れるのではなく、どのような理由で内定取り消しをしたのかを確認しましょう。
内定時点ですでに労働契約が成立していますので、合理的な理由がない内定取り消しは権利濫用として違法・無効になる可能性があります。会社から内定取り消しに対する正当な理由が提示されない場合には、違法な内定取り消しである可能性がありますので、すぐに弁護士に相談してください。
(2)証拠を残す、集める
内定取り消しが違法であるということは、内定者において立証していかなければなりません。そのためには、証拠が必要不可欠となりますので証拠を集めることが重要です。
内定取り消しの違法性を立証するための証拠としては、以下のものが考えられます。
- 内定通知書
- 内定取り消しの理由の通知書
- 内定取り消しに関する会社とのやり取り(文書、メールなど)
- 内定先企業との会話の録音
(3)早期に弁護士に相談する
内定取り消しは、新卒者であれば卒業間近のタイミングで、中途採用者であれば前職を退職したタイミングでなされることが多く、内定取り消しにより生じる不利益も非常に大きいものとなります。
そのため、できる限り早めに弁護士に相談をして、今後の対応や交渉・訴訟に向けた準備を進めていくようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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