長時間労働に悩んだときの相談先|相談前の準備と会社の違法性を解説

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
長時間労働に悩んだときの相談先|相談前の準備と会社の違法性を解説

慢性的な人手不足、過剰な業務負担などが原因となり、長時間労働が発生します。長時間労働が続くと、プライベートの時間が失われるだけでなく、疲労の蓄積により心身に重大な影響が生じるおそれもあります。
このような長時間労働が続き、お悩みの方は、早めに適切な相談先で相談することが大切です。また、長時間労働では適切な残業代が支払われていないなどの問題もありますので、会社への責任追及に備えて準備を進めていくようにしましょう。

1. 長時間労働の主な相談先

長時間労働でお困りの際には、以下の相談先に相談が可能です。

(1)人事などの社内通報窓口や労働組合

社内に相談窓口が設けられている場合には、外部に相談する前に社内の相談窓口を利用することも検討しましょう。コンプライアンス意識が高い企業であれば、労働者から相談があれば、状況の改善に向けて積極的に取り組んでくれるはずです。

また、労働組合に相談することも有効な手段となります。労働者個人の力では会社を動かすことができない場合でも、労働組合の団体交渉であれば会社も応じてくれる可能性があります。

ただし、小規模な会社では、社内窓口や労働組合がないこともありますので、その場合には、以下のような外部の相談窓口を利用するようにしましょう。

(2)労働基準監督署

労働基準監督署は、企業が労働基準法などの法令を遵守しているかを監督する公的機関です。長時間労働は、法定労働時間や残業時間の上限を定めた法律に違反する可能性がありますので、労働基準監督署に相談してみてもよいでしょう。

労働基準監督署による調査の結果、違法状態が確認されれば、指導や是正勧告などにより違法状態が改善されることが期待できます。ただし、労働基準監督署による指導や是正勧告には、強制力がありませんので、会社が任意に従わないときは効果を発揮できません。

(3)労働条件相談ほっとライン|厚生労働省

労働条件相談ほっとラインとは、違法な時間外労働、残業代の未払いなど労働基準関係法令に関するさまざまな問題について、専門の相談員がアドバイスや関係機関の紹介を行ってくれる電話相談窓口です。

労働条件ほっとラインへの電話相談は、全国どこからでも無料で利用でき、匿名での相談にも応じています。ただし、あくまでも電話相談のみですので、会社との対応は、労働者自身で行わなければなりません。

(4)労働相談ホットライン|全国労働組合総連合会

労働相談ホットラインとは、全国労働組合総連合会が提供している労働問題の相談窓口です。相談方法は、電話またはメールで、相談料は無料です。

長時間労働の問題以外にもさまざまな労働問題に対応しています。ただし、あくまでも電話相談ですので、具体的な対応は労働者自身で行わなければなりません。

(5)都道府県労働局

都道府県労働局では、総合労働相談コーナーを開設して、長時間労働などの労働問題の相談に対応しています。

労働局に相談をすると問題の解決に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、紛争調整委員会によるあっせんの手続きも利用できます。当事者同士の話し合いでは解決できないような事案については、中立な第三者が間に入ってくれる、あっせんを利用してみてもよいでしょう。

(6)弁護士

上記のような相談窓口では、基本的には相談対応のみで、具体的な対応は労働者自身で行わなければなりません。ご自身で対応が難しいという場合には、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士はさまざまな法律問題を取り扱う専門家ですので、長時間労働という問題についても適切な解決方法を示してくれます。それだけでなく、弁護士に依頼をすれば弁護士が労働者の代理人となり、会社との交渉、労働審判・裁判などにも対応してくれます。ひとりで対応するのが不安だという方は、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

2. 相談のためにまず準備すること

長時間労働の相談をするためには、まずは以下のような準備が必要です。

(1)相談したい内容を整理する

相談窓口での相談は、基本的には限られた時間内で相談内容を伝えなければなりません。正確に相談内容が伝わらなければ、得られるアドバイスも的外れなものになるおそれがありますので、まずは相談内容を整理することが重要です。

そのためのポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

①相談目的を明確にする

相談窓口で長時間労働の問題を相談する方の多くは、現状の問題を解決するためのアドバイスを期待して相談にいきます。相談員や弁護士から的確なアドバイスを受けるためには、そもそも労働者自身がそのような解決を希望しているのかを明確にする必要があります。

たとえば、長時間労働であれば

  • 長時間労働の職場環境を改善してほしい
  • 未払いの残業代があるため支払ってほしい
  • 長時間労働の証拠を集めたいが、どのようなものがあるか知りたい

などの目的が考えられます。それぞれの目的に応じて、相談時に話すべき内容やアドバイスの内容が変わってきますので、より的確なアドバイスを受けるためにも、この点を明確にしておきましょう。

②相談内容の整理の方法

長時間労働でお悩みの方は、「こんなに長時間働いてとてもつらい!」など今の働き方への不満をぶつけてしまいがちです。しかし、相談窓口での相談は、適切な解決方法をアドバイスしてもらうのが目的ですので、ただ感情をぶつけるのは得策ではありません。

長時間労働の問題を相談するのであれば、

  • 実際の労働時間
  • 残業代の支払い状況

など、現在の具体的な状況を整理するようにしましょう。

メモなどに箇条書きで書き出すだけでも、情報が整理されますので、相談に行く前には、簡単なメモを作成しておくのがおすすめです。

(2)長時間労働の証拠を集める

長時間労働の違法性を訴えるためには、労働者の側で実際に違法な長時間労働があったことを立証しなければなりません。そのためには、長時間残業を証明するための証拠が不可欠です。

長時間労働を立証するための証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  • 雇用契約書、就業規則、36協定
  • タイムカードや勤怠管理システムのデータ
  • 給与明細、源泉徴収票
  • 残業を指示されたメールや音声データ
  • 長時間労働で体調を崩したときは診断書

このような証拠は、会社にいれば比較的入手しやすいといえます。そのため、長時間労働で退職をお考えの方は、退職する前に長時間労働に関する証拠を確保しておくようにしましょう。

3. 長時間労働で相談すべき会社の違法性

長時間労働は、以下のような違法性が認められる可能性があります。

(1)法定労働時間や36協定が守られていない

労働基準法では、1日8時間、1週40時間が法定労働時間と定められています。法定労働時間を超えて働かせるためには、36協定の締結・届出が必要になります。このような36協定の締結・届出がなされていない場合には、違法な長時間労働となります。

また、残業時間には月45時間・年360時間という上限が設けられています。例外的に上限を超えることができるケースもありますが、そのようなケースに該当しないにもかかわらず、上限を超える長時間労働が繰り返されている場合にも違法といえるでしょう。

(2)過労死ラインを超えている

過労死ラインとは、長時間労働によって健康被害を生じさせる危険性が高い、時間外労働時間の目安です。このような過労死ラインは労災の認定基準として用いられており、以下のような残業時間の目安を超えていた場合には、業務と発症の関連性は強いとされます。

  • 発症日の直近1か月で、残業時間が月100時間を超えていること
  • 発症日前2~6か月間の残業時間が月平均80時間を超えていること

長時間労働による過労死や脳・心臓疾患、精神障害などが労災であると認められた場合には、労災保険から各種保険給付を受けられるだけでなく、労災により生じた損害を会社に対して請求できる可能性があります。

(3)未払いの残業代がある

会社は、労働者が残業をした場合には、所定の割増賃金率により増額した残業代を支払う義務があります。

長時間労働をしている場合、残業代が発生しているにもかかわらず、適正な残業代が支払われていない可能性があります。このような残業代の未払いは、労働基準法違反となりますので、使用者に対しては、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

また、適正な残業代が支払われていない労働者は、会社に対して、未払い残業代の請求をすることもできます。

4. 長時間労働を弁護士に相談するメリット

長時間労働でお悩みの方は弁護士に相談することをおすすめします。

長時間労働が常態化している職場では、残業代の未払いが発生している可能性がありますので、まずは、残業代を計算して未払い残業代の有無を確かめる必要があります。しかし、残業代計算は非常に複雑ですので、一般の方では正確に計算するのが難しいといえます。

弁護士であれば、迅速かつ正確に残業代を計算し、会社に対しての請求が可能です。また、会社が話し合いに応じないときは、労働審判や訴訟などの方法で解決に導くことも可能です。

長時間労働の問題は、ひとりで悩んでいても解決することが難しいため、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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