有給休暇をもらえない場合の相談先は?

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
有給休暇をもらえない場合の相談先は?

有給休暇を取得するのは、労働基準法が認めた労働者の権利ですので、基本的には、会社は労働者からの有給休暇の取得申請を拒むことはできません。しかし、会社によっては、労働者から有給休暇の取得申請を違法に拒み、有給休暇を与えないことも少なくありません。
このような違法な扱いを受けた場合には、弁護士に相談するなどして、適切に対処していくことが必要です。

1. 有給休暇の取得を拒否は違法

会社による有給休暇の取得拒否は、違法である可能性があります。

(1)そもそも有給休暇とは

そもそも有給休暇とは、一定の要件を満たす労働者に対して、法律上当然に付与される休暇です。通常、会社を休めば賃金は支払われませんが、有給休暇は仕事をしていなくても賃金の支払いを受けられるという特徴があります。

有給休暇は、雇用形態にかかわらず、以下の要件を満たす労働者に付与されます。

  • 雇入れ日から6か月が経過している
  • その期間の全労働日の8割以上出勤している

なお、有給休暇は、正式には「年次有給休暇」という名称になりますが、このコラムでは「年次」を省略し、「有給休暇」と表現します。

(2)有給休暇の拒否は違法! パワハラにあたるケースも

有給休暇は、労働基準法により労働者に認められた権利ですので、労働者から有給休暇の取得申請があった場合、原則として会社はそれを拒否することはできません。

ただし、労働者の希望日に有給休暇を取得させると、事業の正常な運営を妨げるおそれがある場合には、例外的に別の日に有給休暇を取得させることができます。これを「時季変更権」といいます。しかし、あくまでも別の日に変更できるだけですので、有給休暇の取得自体を拒むのは違法です。

なお、時季変更権の要件を満たさないにもかかわらず労働者の有給休暇の取得申請を拒否すると、会社によるパワハラが成立し、慰謝料を請求できる可能性もあります。

(3)有給休暇を拒否した場合の刑事罰

正当な理由がないにもかかわらず有給休暇を拒否した場合には、労働基準法39条違反となり、事業主には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条)。

2. 有給休暇がもらえない場合の相談先

会社により有給休暇の取得申請が拒否されたときは、以下のような相談窓口を利用してみるとよいでしょう。

(1)社内の相談窓口

上司から有給休暇の取得を拒否されたときは、さらに上の立場の人や社内の相談窓口で相談してみるとよいでしょう。

有給休暇の取得拒否は、労働基準法に違反する行為ですので、コンプライアンス意識の高い職場であれば真摯に対応してくれるはずです。ただし、社内の相談窓口が設置されていない、設置されていても独立性が確保されていないような場合には、適切な対応は期待できません。

(2)労働組合

労働組合とは、労働条件や職場環境の改善を目的として、労働者が主体となって組織する団体です。

労働組合に相談をすれば、団体交渉という手段を使って、会社と交渉を行ってくれますので、労働者個人で対応するよりも有利な解決が得られる可能性があります。ただし、会社によっては労働組合がない、または労働組合があっても形骸化していることもありますので、そのような場合には、適切な対応は期待できません。

(3)労働基準監督署

①労働基準監督署の役割

労働基準監督署とは、企業が労働基準法などの労働関連法令を遵守しているかどうかを監督する公的機関です。

労働基準監督署は、労働者からの申告により企業が法令に違反している疑いが生じた場合には、事業所への立ち入り調査などにより違反の有無を確認します。その結果、違反が確認されれば、指導や是正勧告などにより違法状態の改善が期待できます。

有給休暇の取得拒否は、労働基準法に違反する行為ですので、労働基準監督署への相談も有効な手段といえます。

②労働基準監督署に相談すべき有給休暇トラブル

労働基準監督署に相談すべき有給休暇のトラブルには、以下のようなものがあります。

  • 有給休暇の取得要件を満たしているにもかかわらず、有給休暇が与えられない
  • 有給休暇を申請したのに拒否された
  • 有給休暇を取得したことで会社から不利益な取り扱いを受けた
  • 退職にあたって有給消化をさせてくれない

③労働基準監督署への相談の流れ

労働基準監督署に相談する場合には、以下のような流れで行います。

有給休暇に関する証拠を準備する

有給休暇に関して勤務先による違法行為があったことを立証するための証拠を集めます。 労働基準監督署への相談時に違法行為の証拠があれば、労働基準監督署もスムーズに対応してくれるでしょう。

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署への相談は、メールでの情報提供、電話相談、窓口相談の3種類があります。証拠などを提示しながら説明できる窓口相談の方が会社による違法行為があったことを理解してもらいやすいため、できる限り窓口相談を利用するようにしましょう。

事業場への調査

労働者からの相談を踏まえて、法令違反が疑われる場合には、事業場への立ち入り調査を実施することがあります。

指導、是正勧告

労働基準監督署による調査の結果、法令違反が認められると、指導や是正勧告などが行われます。

(4)弁護士

有給休暇に関するトラブルは、弁護士に相談・依頼するのもおすすめです。

労働基準監督署による指導や是正勧告には、強制力がありませんので、労有働基準監督署に相談しても改善されないケースもあります。また、労働基準監督署に相談しても、すぐに対応してくれるとは限りませんので、問題が解決するまである程度の期間を要することもあります。

弁護士であれば労働者の代理人として会社との交渉を行うことができますので、迅速に違法状態を求めていくことができます。また、有給休暇の拒否がパワハラに該当する場合には、交渉や裁判により慰謝料を請求していくこともできます。

弁護士に依頼すれば非常に心強い味方になりますが、唯一のデメリットとしては、弁護士費用がかかるという点です。

3. 有給休暇トラブルの早期解決は弁護士相談がおすすめ

有給休暇は法律上認められた労働者の権利ですので、有給休暇を拒否するのは原則として違法となります。会社から有給休暇の取得を拒否されたときは、泣き寝入りせずにすぐに誰かに相談することが大切です。

有給休暇に関するトラブルが発生した場合の相談窓口にはさまざまなものがありますが、早期解決を希望するのであれば弁護士に相談するのがおすすめです。有給休暇を拒否されてお困りの方は、まずは弁護士にご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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