会社の内部告発はデメリットが生じるリスクが高い?

会社の内部告発はデメリットが生じるリスクが高い?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

法定検査のデータ改ざん、食品の産地偽装など、会社が隠ぺいしていた不祥事が明るみにでるケースが相次いでいます。そのきっかけの一つとなっているのが、従業員による「内部告発」です。

不正をやめさせるために内部告発は非常に大事な手段ですが、告発者が特定されてしまうと、クビになったり嫌がらせを受けたりする可能性があります。

そこで今回は内部告発の仕組みと、告発のメリット・デメリットなどを解説します。

1. 内部告発とは

内部通報制度が浸透し、内部告発は今や珍しいものではなくなりました。ただ名前は知っていても、内容は知らない方も多いと思います。まずは内部告発について確認していきましょう。

(1)内部告発とは

内部告発とは、企業の従業員が企業や役員、同僚などの不正を、社内の通報窓口や行政機関、報道機関などに伝えることです。

一般的には、次のような不正に関して行われています。

  • 食品の産地偽装
  • 検査データの改ざん
  • リコール隠し
  • 横領
  • 不正会計
  • インサイダー取引

内部告発により不正行為をやめさせることができれば、消費者や株主らが不利益を受けるのを防げます。また職場の環境改善にもつながると期待できます。

(2)公益通報制度とは

正義感などから内部告発をした際、通報したことが会社や上司にバレて左遷や降格などの報復を受けることがあります。報復が許容されてしまえば、次第に不正を見つけても内部告発をする労働者はいなくなってしまうでしょう。すると次第に手口が悪質化し、大きな問題を引き起こす可能性があります。

そこで告発者を守り、不正を通報しやすくするために「公益通報者保護制度」が設けられました。

公益通報者保護制度とは、内部告発をした労働者が会社から解雇や降格などの不利益な扱いを受けることのないように保護する制度です。

通報者が解雇されたり派遣契約を解除されたりした場合、その解雇や契約解除を無効とするとしています。また通報者に対して降格や減給などの処分を下すことも禁じています。

ただし内部告発すべてが公益通報に当たるわけではありません。保護の対象となるのは、一定の条件を満たした通報です。

例えば、公益通報者として、通報行為が法律上保護される者は、以下の者に限定されています。

  • 労働者(正社員、アルバイト、パート、公務員、通報日の前1年以内の退職者)
  • 派遣労働者(通報日の前1年以内に派遣契約が終了した派遣労働者を含む。)
  • 下請事業者や他の取引事業者の労働者及び派遣労働者(通報日の前1年以内に退職、終了した場合を含む。)
  • 役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人のほか、法令の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。))
  • 下請事業者や他の取引事業者の役員

また、公益通報として保護される通報対象事実についても、刑事罰の対象となる犯罪行為及び過料(行政罰)の対象となる事実に限定されています。具体的には、刑法、金融商品取引法、個人情報保護法などがこれに該当します。

なお令和4年に改正公益通報者保護法が施行されたことにより、従業員301人以上の事業者には、通報窓口の設置や通報者を守るための規程の整備などが義務づけられました。

2. 内部告発の方法

内部告発によって企業の不正を正すことは社会や消費者にとってプラスになるほか、企業の悪しき習慣を変えるきっかけにもなります。ただしメリット・デメリットがあるためそれを考慮したうえで内部告発を検討してください。

(1)内部告発の方法と窓口

内部告発をする場合には、違法行為の写真や動画、改ざん前後のデータ、上司からの指示メール、違法行為に関する打ち合わせの録音など、可能な限り多くの証拠を集めて、以下のような窓口に連絡しましょう。

①社内の内部告発用窓口

多くの大手企業では内部告発用のホットラインなどを設けていて、匿名で利用できることもあります。中小企業では、コンプライアンス室や人事総務部などが担当になるでしょう。

②行政機関

社内で告発しても調査してもらえない場合、会社には言いづらい場合には、行政機関に通報しましょう。原則、匿名で通報できます。

都道府県のほか、各省庁が通報窓口を設けています。消費者庁が公益通報の通報先機関の検索システムを公開していますので、チェックしてみてください。

③報道機関、マスコミ

新聞社やテレビ局などに手紙やメールを送ることで、会社の不正について伝えることもできます。その際、証拠資料を一緒に渡すと信じてもらいやすいでしょう。

(2)内部告発のメリット・デメリット

内部告発には企業や通報者にとって、次のようなメリット・デメリットがあります。

<メリット>

  • 会社の不正が正される
  • 経営上のリスクがわかり、会社の社会的信用が失墜するのを防ぐことができる

<デメリット>

  • 内部告発したことがバレると、通報者が解雇や降格処分を受けることがある
  • 上司や同僚との関係が悪くなったり、いじめを受けたりする可能性がある
  • 組織ぐるみの不正の場合、告発がもみ消されるおそれがある
  • 不正が社会に知られたことで会社の業績が悪化することがある

3. 周囲にバレずに内部告発を進めるには

内部告発をする際に、一番気がかりなのは周囲にバレることでしょう。不正が明らかになっても、会社から報復を受け仕事を失えば、自分や家族が生活に困るでしょう。

会社にバレずに内部告発をするためには、次のような点に気をつけることが大事です。

  • 内部告発をしたことを周囲に秘密にしておく
  • 通報の際は個人所有のメールや電話を使用しない
  • 匿名で通報できる窓口を選ぶ

告発したことで会社から不利益な扱いを受けている場合には、消費者庁の「公益通報者保護制度相談ダイヤル」や、弁護士に相談しましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年10月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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