薬物犯罪で問われる罪とは? 種類と罰則を解説

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薬物犯罪で問われる罪とは? 種類と罰則を解説

薬物犯罪は、薬物を使用した本人の心身を蝕むだけでなく、幻覚などを引き起こし他人に危害を加えるおそれのある犯罪です。また、薬物売買による利益は反社会的勢力の資金源となっていることから厳格に処罰されています。

1. 薬物犯罪で問われる罪と罰則

薬物犯罪で問われる罪と罰則について説明します。

(1)薬物犯罪とは

薬物犯罪とは、法令により規制されている薬物を所持、使用、販売、製造、栽培、輸出入などをすることにより成立する犯罪です。法令により規制されている薬物には、人の心身を蝕むなど危険なものが含まれており、反社会的勢力の資金源にもなっていることから、厳しく取り締まりが行われています。

なお、薬物犯罪で所持や使用が禁止されている薬物には、以下のものがあります。

  • 大麻
  • 覚せい剤
  • あへん
  • マリファナ
  • コカイン、ヘロイン
  • 向精神薬
  • LSD、MDMA
  • シンナーなどの劇毒物
  • その他の薬物(危険ドラッグなど)

(2)薬物を禁止している法律の種類

薬物犯罪は、薬物の種類ごとに適用される刑罰が異なります。薬物犯罪を規制する法律について説明します。

①覚せい剤取締法

覚せい剤取締法とは、覚せい剤の使用、所持、譲渡、譲受、輸出入などの行為を取り締まる法律です。

覚せい剤取締法に違反した場合には、以下の刑罰が科されます。

行為 非営利目的 営利目的
輸出入、製造 1年以上の懲役 無期または3年以上の懲役(情状により1000万円以下の罰金が併科)
譲渡、譲受、所持、使用 10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
原料の輸出入、製造 10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
原料の譲渡、譲受、所持、使用 7年以下の懲役 10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)

②大麻取締法

大麻取締法とは、大麻の所持、譲渡、譲受、輸出入などの行為を取り締まる法律です。現行法では、大麻の使用罪は処罰対象とはされていませんが、将来的には大麻の使用罪を創設する動きがあります。

大麻取締法に違反した場合には、以下の刑罰が科されます。

行為 非営利目的 営利目的
輸出入、栽培 7年以下の懲役 10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)
譲渡、譲受、所持 5年以下の懲役 7年以下の懲役(情状により200万円以下の罰金が併科)

③あへん法

あへん法とは、あへんなどの使用、所持、譲渡、譲受、栽培、製造、輸出入などの行為を取り締まる法律です。

あへん法に違反した場合には、以下の刑罰が科されます。

行為 非営利目的 営利目的
ケシの栽培 1年以上10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
ケシガラの輸出入 1年以上10年以下の懲役 1年以上の有期懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
ケシガラの譲渡、譲受、使用、所持 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)
あへんの輸出入、製造 1年以上10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
あへんの譲渡、譲受、所持 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)
あへんの使用 7年以下の懲役

④麻薬および向精神薬取締法

麻薬および向精神薬取締法とは、ヘロイン、コカイン、MDMA、モルヒネなどの使用、所持、譲渡、譲受、製造、輸出入などの行為を取り締まる法律です。

麻薬および向精神薬取締法に違反した場合には、以下の刑罰が科されます。

行為 非営利目的 営利目的
ヘロインの輸出入、製造 1年以上の懲役 無期または3年以上の懲役(情状により1000万円以下の罰金が併科)
ヘロインの譲渡、譲受、所持、使用 10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
ヘロイン以外の麻薬の輸出入、製造 1年以上10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
ヘロイン以外の麻薬の譲渡、譲受、所持、使用 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)
麻薬原料の輸出入、製造 1年以上10年以下の懲役 1年以上の懲役(情状により500万円以下の罰金が併科)
麻薬原料の譲渡、譲受、所持、使用 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役(情状により300万円以下の罰金が併科)

⑤その他の薬物取締法

上記の薬物犯罪を取り締まる法律以外にも、シンナーなどの毒劇物については「毒物及び劇物取締法」により規制されており、危険ドラッグなどについては「薬機法」によって規制されています。

2. 薬物犯罪で捕まったらどうなる?

薬物犯罪で捕まったらその後はどうなってしまうのでしょうか。

(1)薬物犯罪は身柄拘束(勾留)されやすい

薬物犯罪は、薬物の入手先である共犯者が存在し、薬物は水に流すなどして容易に処分できるため証拠隠滅のおそれが高い犯罪類型です。そのため、一般的な犯罪に比べて、警察により逮捕された場合には、引き続き勾留される可能性が高いといえ、勾留されると、最大で20日間もの身柄拘束を受けることになります。

(2)被害者がいないので示談できない

被害者がいる犯罪であれば被害者と示談を成立させることで、不起訴処分の獲得や、裁判で有利な判決を獲得することが可能です。

しかし、薬物犯罪は、犯罪の性質上被害者が存在しませんので、被害者と示談をすることはできません。そのため、被害者との示談により有利な処分を獲得する方法をとることができません。

3. 薬物事件は弁護士への早急な相談が肝心

薬物事件で逮捕された場合には、すぐに弁護士へ相談するようにしましょう。

(1)逮捕直後から接見できるのは弁護士だけ

薬物事件で逮捕されると、たとえ家族であっても被疑者と面会できません。逮捕中に被疑者と面会できるのは弁護士に限られますので、早期に弁護士に依頼することで、逮捕段階からさまざまなサポートを受けられます。

(2)早期釈放を目指せる

薬物事件で逮捕されると、勾留により長期間の身柄拘束が続く可能性があります。身柄拘束中は、学校や仕事に行けず、日常生活に与える影響も大きいため、一日でも早い釈放を目指すことが大切です。

弁護士に依頼をすれば、早期の身柄釈放に向けて検察や裁判所に働きかけることができます。

(3)可能な限り有利な処分になるようにサポート

薬物事件は、再犯率が非常に高い犯罪類型ですので、有利な処分を受けるためには、再犯のおそれがないことを裁判所に理解してもらう必要があります。

弁護士であれば、医療機関や更生施設とも連携しながら、再犯防止に向けた取り組みを進めていくことができます。少しでも有利な処分を希望される方は、早めに弁護士にご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年01月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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