被害届を取り下げてもらうには?

  • 犯罪・刑事事件
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
被害届を取り下げてもらうには?

被害者によって被害届が提出されると、逮捕による身柄拘束や、起訴され前科が付くなどのリスクが生じます。そのリスクを回避するためには、被害者に被害届を取り下げてもらう必要があります。

1. 被害届とは

被害届とはどのようなものでしょうか。被害届の概要と提出後の流れについて説明します。

(1)被害届とは

被害届とは、被害者が捜査機関に対して、犯罪の被害に遭ったことを申告する書類です。被害届が提出されると、捜査機関に何らかの犯罪が行われたことが伝わり、捜査のきっかけになります。

被害届と同様に、被害者が捜査機関に提出するものとして「告訴状」があります。告訴状と被害届は、どちらも犯罪の被害に遭ったことを申告する点で共通しますが、告訴状は処罰を求める意思を含む点で被害届とは異なります。

また、告訴状が受理されたあとは、捜査機関は捜査をする義務が生じますが、被害届が受理されたとしてもそのような義務は生じません。

(2)被害届を出されるとどうなる?

被害者によって被害届が提出されたあとの流れや加害者に生じる影響などについて説明します。

被害届を出されたあとの流れ

被害届が提出された場合には、一般的に以下の流れで刑事手続きが進みます。

①捜査機関による捜査の開始

被害届が受理されると、捜査機関による捜査が開始されます。ただし、告訴状とは異なり捜査する義務は生じませんので、事件の内容によっては、すぐに捜査が始まらずに放置されるケースもあります。

②(場合によっては)被疑者の逮捕、勾留

捜査の結果、被疑者が逃亡または罪証隠滅のおそれがあると認められる場合には、被疑者が逮捕される可能性もあります。逮捕された場合には最大で72時間の身柄拘束となり、その後勾留されると最大で20日間の身柄拘束を受けることになります。

③検察への送致

警察での捜査が終了すると、事件は検察庁に送致されます。事件の送致を受けた検察では、被疑者の取り調べや補充捜査を行います。

④検察官による起訴、不起訴の判断

検察官は、起訴するか不起訴にするかの判断を行います。起訴された場合には、刑事裁判が行われることになります。

加害者への影響

被害者により被害届が提出されると、それまで犯罪事実を把握していなかった捜査機関に犯罪行為が知られます。それにより、加害者には、以下のリスクが生じます。

  • 逮捕、勾留により身柄拘束を受ける
  • 起訴され有罪となれば刑事処罰を受ける
  • 会社や学校に事件が知られてしまう

2. 被害届を取り下げてもらう方法と効果

(1)被害届を取り下げてもらう方法

被害者に被害届を取り下げてもらうためには、以下の方法が考えられます。

①示談を成立させる

まずは、被害者と示談交渉を行い、示談を成立させる必要があります。示談が成立した場合には、示談書に「被害届を取り下げる」旨の内容を明記し、それを捜査機関に提出することで被害届の取り下げと同様の効果を生じさせることができます。

捜査機関では、被害者に意向確認を行い、本当に被害届を取り下げる意思があると確認できた場合には、被害届の取り下げがあったものとして扱います。

②取下書を作成し、署名押印してもらう

示談書ではなく、被害届の取下書を作成し、それに署名押印してもらうことで、被害届の取り下げができます。

なお、被害届の取り下げのタイミングは特に制限はなく、どのタイミングでも行うことができます。しかし、処分が下されてからでは期待していた効果を得られませんので、できる限り早い段階で被害届の取り下げをしてもらうことが大切です。そのため、まずは、検察官が起訴・不起訴を判断するまでに被害届の取り下げを目指すとよいでしょう。

(2)被害届を取り下げてもらうメリット

被害届を取り下げてもらった場合には、以下の効果(メリット)が生じます。

①身柄拘束から解放される可能性

すでに逮捕・勾留されている場合には、被害届の取り下げにより、身柄拘束から解放される可能性があります。なぜなら、被害者と示談が成立していれば、加害者から被害者に働きかけて罪証隠滅をするおそれがなくなるからです。

②刑事処分を受けずに済む可能性

被害届の取り下げにより、被害者の処罰感情が消滅しますので、捜査機関ではそれ以上捜査を続ける意味がなくなり、その時点で捜査が打ち切られる可能性があります。また、捜査が打ち切られなかったとしても、検察官が起訴・不起訴を判断する際に考慮されますので、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

3. 被害届を取り下げてもらえないとどうなる?

(1)逮捕される可能性が高まる

被害届を取り下げてもらえないと、捜査機関による捜査が継続します。その結果、被疑者による逃亡または罪証隠滅のおそれがあると認められる場合には、逮捕・勾留により身柄拘束をされる可能性が高くなります。

逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及び、その間は、留置施設の外に出ることはできません。会社員であれば、長期間の無断欠勤を理由に会社を解雇される可能性が生じ、学生であれば犯罪行為が学校に知られ、停学や退学処分を受けるリスクが生じます。

(2)起訴、前科がつく可能性が高まる

被疑者と被害者との間で示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な要素です。示談が成立し、被害届が取り下げられていれば、被害者の処罰感情がないものとして、不起訴の判断に大きく傾きますが、反対に示談が成立していない場合には、起訴される可能性が高くなります。

また、日本の刑事司法では、検察官により起訴された事件は、約99%の確率で有罪となりますので、起訴されれば前科が付く可能性が非常に高くなります。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年01月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す