自己破産手続きは2種類ある|同時廃止と管財事件の手続き方法を解説
- (更新:2025年01月09日)
- 借金・債務整理

借金の完済が事実上不可能になってしまった方は、「自己破産」を検討しましょう。
自己破産には「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があります。手続きの種類によって免責までの流れが異なるので、全体像について弁護士に確認することをおすすめします。
1. 自己破産の手続きは2種類
収入が安定せず、借金の返済が苦しい方は「自己破産」を検討しましょう。
(1)自己破産とは
「自己破産」とは、財産の処分と引き換えに、原則として借金などの債務全額を免除する債務整理手続きです。
借金の返済などが困難になってしまった方を救済するため、破産法に基づいて自己破産の制度が設けられています。
特に借金の額が多い方、多くの金融機関から借り入れをしている方、収入が安定しない方などは、自己破産が有力な解決策となるでしょう。
(2)自己破産の手続きの種類|同時廃止事件・管財事件
自己破産の手続きは、「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類に大別されます。
①同時廃止事件
破産手続きが開始と同時に終了します。
破産者の所有する財産が乏しく、破産手続きに必要な費用を賄まかなえない場合には、原則として同時廃止となります(免責不許可事由がある場合には、管財事件となることもあります)。
裁判所に予納する費用が安く済み、手続きの期間も比較的短いのが同時廃止事件の特徴です。
②管財事件
破産管財人が、破産者の財産の換価・処分等を行います。
破産者が一定以上の財産を所有している場合には、管財事件となります。
管財事件は、破産管財人が通常の業務を行う「通常管財」と、簡略化された業務を行う「少額管財」に大別されます。
少額管財は、裁判所の予納する金額が少なく済むメリットがありますが、弁護士への依頼が条件です(少額管財の運用を行っていない裁判所もあります)。
2. 自己破産の手続きの流れ|必要書類や注意点などを解説
自己破産の手続きの流れは、以下のとおりです。
- 必要書類の準備
- 破産手続開始の申立て・決定
- 破産管財人による財産の換価・処分
- 債権者集会・債権者への配当
- 免責審尋・免責許可決定
(1)必要書類の準備
自己破産を申し立てるに当たり、以下の書類が必要となります。弁護士と協力して、必要書類の準備を進めましょう。
- 破産手続開始・免責許可申立書
- 債権者一覧表
- 資産目録
- 破産者の陳述書(または代理人弁護士の報告書)
- 家計全体の状況(申し立ての直前2か月分)
- 住民票
- 戸籍全部事項証明書
- 預金口座の通帳の写し(または取引明細書)
- 事業者の場合は、確定申告書や決算書類など
- その他、裁判所が指示する書類
(2)破産手続開始の申立て・決定
必要書類の準備が整ったら、裁判所に対して破産手続開始の申し立てを行いましょう。
破産者が支払不能(=弁済期にある債務を一般的・継続的に弁済できない状態)にあると判断した場合、裁判所は破産手続開始の決定を行い、破産管財人を選任します。
破産手続開始の決定時点において破産者が所有する財産は、その管理処分権が破産管財人に移動します。勝手に財産を処分することはできない点にご注意ください。
同時廃止事件の場合は、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定が行われます。この場合、破産管財人は選任されず、免責審尋に移行します。
(3)破産管財人による財産の換価・処分
裁判所によって選任された破産管財人は、破産者の財産を換価・処分して、債権者への配当原資を確保します。
99万円以下の現金や生活必需品などの例外を除き、破産手続きを通じて財産が処分されてしまう点に留意しておきましょう。
(4)債権者集会・債権者への配当
破産管財人は、破産者財産の換価・処分の状況を、債権者集会において債権者に報告します。
換価・処分が済んだ段階で、破産管財人は債権者への配当を行います。
(5)免責審尋・免責許可決定
債権者集会の終結後、裁判所は破産手続終結の決定を行ったうえで、引き続き「免責審尋」が行われます。同時廃止の場合は、裁判所が破産者を呼び出し裁判官との面談で、破産理由や免責不許可自由がないかなどの質問が行われます。
免責審尋の目的は、破産免責の可否を判断することです。嘘をつくことなく、裁判所の質問に対して正直に回答しましょう。
免責不許可事由が存在しないか、または裁量免責を認めるべきだと判断した場合、裁判所は免責許可決定を行います。
※裁量免責とは、免責不許可事由があった場合でも裁判所の判断で破産免責を認めることです。
免責許可決定が確定すると、原則として残った債務は全額免責されます。
(6)手続き終了までに必要な期間
①同時廃止事件の期間
同時廃止事件の主な流れとおおよその期間は以下の通りです。
上記の通り、同時廃止事件では、申し立てから4か月程度ですべての手続きが終了することになります。
同時廃止事件は、破産管財人が選任されない手続きですので、以下のような条件を満たす場合に同時廃止事件に振り分けられることになります。
②少額管財事件の期間
少額管財事件の場合には、破産管財人による財産調査、財産の換価処分、配当手続、免責調査などが行われますので、同時廃止事件に比べて手続き終了までに要する期間は長くなります。
破産者の財産状況などによって換価に要する時間が異なってきますので、終了までの期間を正確に示すことはできませんが、自己破産の申し立てからおおむね6か月程度はかかるといえるでしょう。また、少額管財事件の場合には、引継予納金として20万円が必要になります。
③通常管財事件の期間
通常管財事件は、基本的には少額管財事件と同じく、破産管財人によって各種調査や換価・配当が行われますが、少額管財事件とは異なり法人破産など複雑な事件が振り分けられますので、少額管財事件よりも手続き終了までに期間を要するのが通常です。
そのため、終了までの期間としては、6か月から1年程度はかかるといえます。通常管財事件の場合には、引継予納金として負債額に応じて、個人であれば50万円以上、法人であれば70万円以上が必要になります。
3. 自己破産の手続き終了までに気を付けるべきこととは?
(1)信用情報機関の事故情報に記載される
信用情報機関とは、個人の信用情報の管理をしている機関であり、消費者金融業者やクレジットカード会社との取引状況などが登録されています。個人が自己破産をしたという情報も一定期間事故情報として信用情報機関に登録されることになります。
信用情報機関に事故情報が記載されると、一定期間は、新規の借り入れをすることができず、新たなクレジットカードの作成もできなくなります。
(2)職業によっては破産によって制約を受けることもある
自己破産をすることによって、以下の職業については制限を受けることになります。ただし、一生制限されるというわけではなく、免責許可が確定するなどして復権した場合には、資格制限がなくなります。
(3)自己破産をしても、免責されない債務がある
自己破産をすると、借金やクレジットカードの利用料金などは全額免責されます。
その一方で、自己破産をしても免責されない債務(=非免責債権)があることに注意が必要です。非免責債権については、自己破産後に全額支払わなければなりません。
被免責債権に当たるもの
- 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く)
(例)税金、国民年金保険料、国民健康保険料、社会保険料 - 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意または重大な過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(②に当たるものを除く)
- 次に掲げる義務に係る請求権
- 夫婦間の協力扶助義務
- 婚姻費用の分担義務
- 子の監護に関する義務
- 扶養義務
- 上記に掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預り金の返還請求権
(例)賃金の支払債務 - 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く)
- 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金または過料の請求権
自己破産で免責がおりなかった場合の対処法。放置したらどうなる?
4. 自己破産を2回以上できる?
過去に自己破産をして免責を得たことがあるにもかかわらず再び自己破産を申し立てることができるかどうか、またその条件について解説します。
(1)2回目であっても自己破産は可能
破産法では自己破産を行うことができる回数について、特別な制限を設けていません。したがって、2回目であっても自己破産を行うことは可能です。
しかし、自己破産をすることは債権者にとって大きな不利益となりますので、債務者の個人的な事情によって何度も自己破産をするのは不誠実とみなされる可能性が高くなります。そのため、法律上は2回目以降も自己破産が可能であっても、その条件については1回目の破産よりも厳格に審査されることになります。
例えば、1回目の自己破産であれば、ギャンブルなどの免責不許可事由(免責不許可事由の説明については⑵➀のとおり。)であっても、裁量免責により免責が認められるケースもあります。しかし、再びギャンブルにはまったなど、前回と同じ免責不許可事由によって2回目の自己破産に至った場合は、裁量免責を受けるのは非常に困難になります。
(2)2回目の自己破産の条件
2回目の自己破産をする場合には、以下のような条件を満たしている必要があります。
①前回の自己破産から7年が経過していること
破産法では、自己破産の申し立てがあったとしても免責が認められない事由(免責不許可事由)を定めています。免責とは、支払いの責任を問わないと許可された状態です。
この免責許可決定の確定日から7年以内の自己破産の申し立ては、免責不許可事由とされています(破産法252条1項10号イ)。
したがって、2回目の自己破産の申し立てが、前回の自己破産による免責許可決定が確定した日から7年以内の申し立てだった場合には、原則として、2回目の自己破産での免責は認められません。
②前回とは別の理由での自己破産であること
前回と同様の理由での自己破産の申し立てであったとしても、それだけでは免責不許可事由にはあたりません。しかし、同様の理由で再度多額の負債を抱えることになったという事情があると、破産者は、前回の破産で反省をしていない人物とみなされてしまいます。したがって、2回目の自己破産をする場合には、前回とは別の理由であるということが重要となります。
なお、これらの条件を満たさない場合でも例外的に自己破産が認められることもありますが、厳しく審査されることになります。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
借金・債務整理に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?