自己破産で免責がおりなかった場合の対処法。放置したらどうなる?

自己破産で免責がおりなかった場合の対処法。放置したらどうなる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

自己破産とは、借金を返済できない方が裁判所に申し立てを行い、返済義務を免除してもらうための手続きです。免責がおりれば借金はゼロになりますが、免責がおりないケースもあります。

本コラムでは、自己破産で免責されないケース、免責が認められなかった際の対処法、免責されないまま放置したときのリスクについて解説します。

1. 自己破産で免責されないケース

自己破産で免責不許可事由や非免責債権に該当した場合、免責はおりないものとされています。免責とは何なのかを理解し、免責不許可事由や非免責債権に該当するケースを知っておきましょう。

(1)免責とは

自己破産における「免責」とは、借金の返済義務が免除されることを意味します。免責がおりるのは「支払い不能であること」「免責不許可事由に該当しないこと」という2つの条件を満たしたときです。

支払い不能とは、債務を返済するための財力や能力がなく、返済が不可能な状態を指します。また、裁判所に免責を認めてもらえない理由を免責不許可事由といいます。免責不許可事由に該当すると判断された場合、原則として免責はおりません。

(2)免責不許可事由とは

破産法では、11の項目が免責不許可事由にあたるとされています。代表的な3つの例について、理解しておきましょう。

①不当に財産の価値を減少させた

自己破産では、一定以上の価値がある財産を破産管財人が換金し、債権者へ平等に分配されます。破産手続きを行う直前や最中に、財産を隠したり贈与したりする行為は、免責不許可事由に該当します。

具体的には、家族の口座に現金を移す、不動産や車を親族に安価で売却するなどの行為です。つまり、債権者が本来受け取れるはずの財産を減少させてしまった場合、免責はおりなくなります。

②ギャンブルや浪費が原因の借金だった

ギャンブルや浪費、投資などで多額の借金を背負った場合、原則として免責は認められません。たとえば、パチンコ・パチスロ・競馬・高級車またはブランド品の購入・ホストやキャバクラ通いのほか、株・FX・仮想通貨取引などにより借金を背負った場合などです。

破産法では、これらの行為によって「著しく財産を減少させたこと」「過大な財産を負担したこと」が免責不許可事由として明記されています。

③特定の債権者にだけ返済した

自己破産では「債権者平等の原則」によって、すべての債権者は平等に扱われるものとされています。そのため、特定の債権者に借金を返済する「偏頗(へんぱ)弁済」は、認められていません。「ここだけは返済しておきたい」という思いから特定の相手に絞って借金を返してしまうと、免責不許可事由に該当するため注意が必要です。

ただし、免責不許可事由があったとしても「裁量免責」によって免責がおりるケースもあります。破産者の態度や自己破産に至るまでの経緯が考慮されれば、裁判所の裁量により免責がおりる可能性が高くなるのも事実です。

(3)非免責債権とは

自己破産は、どのような借金でも免責されるわけではありません。「非免責債権」と呼ばれる支払いは、免責不許可事由の有無に関係なく免責の対象外です。

  • 税金(所得税、住民税、自動車税など)
  • 公的保険料(国民健康保険料や厚生年金保険料など)
  • 損害賠償金(破産者が悪意で加えた不法行為に基づくものなど)
  • 養育費
  • 下水道料金
  • 罰金(規律違反や交通違反による反則金など)

これらは、非免責債権に該当するため自己破産後も支払わなければなりません。なお、非免責債権は自己破産前に優先して支払ったとしても、偏頗弁済に該当しません。

2. 免責許可できなかった場合の対処法

前述したように、免責不許可事由に当てはまる場合でも裁量免責がおりる可能性はあります。また、裁量免責もおりず、免責が許可されなかったとしても、何も対処できないわけではありません。

(1)他の債務整理方法に切り替える

債務整理の方法は、自己破産だけではありません。他にも「任意整理」と「個人再生」といった選択肢があります。自己破産では、ギャンブルや浪費など借金の理由が免責不許可事由になります。しかし任意整理や個人再生の場合、そのようなことはありません。

①任意整理

裁判所を介さず債権者と交渉することで借金を減額する方法です。主に、将来利息の減額やカットが見込めます。減額できる借金の額は少ないものの、過払い金が発生していれば大幅に減額できる可能性があります。

②個人再生

裁判所を介すことにより借金を減額する方法です。減額率は最大で約10分の1となりますが、大半のケースでは約5分の1が目安です。ギャンブルや浪費による借金でも問題なく利用でき「住宅ローン特則」の制度により住宅を残せます。

(2)即時抗告を申し立てる

免責不許可の決定後2週間以内であれば、高等裁判所に「即時抗告」を申し立て、異議を述べられるものとされています。申し立てが認められると、免責が許可されます。

ただし、一度免責不許可となっている以上、即時抗告を申し立てても免責がおりる可能性は極めて低くなります。弁護士などに相談し、法的な根拠や資料をしっかり準備した上で臨むのが理想的です。

(3)消滅時効の援用

「消滅時効」とは、債務者に対して債権者が支払いを要求せず、法で定められた期間を経過した場合に借金の返済義務がなくなる制度です。自己破産の手続きが決定すると、金融機関や貸金業者は貸し倒れの扱いとして、債務者に支払いを要求しないケースもあります。

督促が再開されずに所定の期間が経過すると、債権者の権利が消滅したことを申し立てる「時効の援用」が行えるようになります。借金には時効が存在しますが、単に期間が過ぎただけで消滅するものではありません。消滅時効を成立させるには「時効援用通知」を債権者に送付し、消滅時効を援用する旨を知らせる必要があります。

ただし債権者が訴訟を起こして時効が更新されれば、再び時効の期間はゼロからのスタートになります。そのため、成立は難しく、現実的な解決方法とはいえません。

3. 免責許可がおりなかったらどうなる?

免責許可がおりなかった場合は、そのまま放置せず、できるだけ早めに対処しましょう。借金の返済義務が残ってしまえば、財産を差し押さえられるリスクが生じます。免責許可がおりないと、破産者は自己破産しているにもかかわらず、すべての借金を返済しなければなりません。

また、債権者には債権を回収する権利があるため、裁判を起こして財産を差し押さえようとする可能性もあります。差し押さえの対象となるのは、給料・預貯金口座・持ち家・生命保険の解約返戻金など、債務者が有するさまざまな財産です。

差し押さえを阻止するためにも、免責許可がおりないとわかった時点で、自己破産に詳しい弁護士への相談をおすすめします。法律の専門家である弁護士のサポートがあれば、より良い対処法を見つけられるはずです。

弁護士JP編集部
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