【30分前出勤】早出の強制は労働基準法違反?

【30分前出勤】早出の強制は労働基準法違反?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

サービス残業が違法なのは周知のことですが、始業時刻前の出社を無償で強制する「サービス早出」の場合はどうなのでしょうか。

本記事では、早出の強制が労働基準法の違反に該当するのか否か、そしてサービス早出を強制された場合の未払い賃金の請求方法について解説します。

1. 30分前出勤が労働基準法違反かどうかの基準とは

無償で30分前出勤をすることが労働基準法違反になるかは判断が難しいところがあります。その理由は、退勤時刻と比べて、何時に会社へ出勤するかは従業員の裁量に委ねられているからです。

たとえば、「電車に座りたい」「ゆっくりお茶や雑談の時間をとってから始業したい」などの理由で従業員が自主的に早出をしてくる場合もあります。もちろん逆に、「上司に命令された」「朝一番で提出しなければいけない書類がある」などの理由で、やむなく早出せざるを得ない場合もあるかもしれません。

無償の30分前出勤をどう扱うかの基準は、早出理由が深く関係しています。つまり、従業員が自由意思で早出しているのか、それとも会社や仕事の都合で「労働時間」の一種として早出しているのかが大きなポイントです。そのため、以下では労働時間の法律上の定義を確認していきます。

(1)労働時間の法律上の定義

そもそも労働時間とは、従業員が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間のことです。これは三菱重工業長崎造船所事件という労働紛争において、最高裁判所が定義しています。

ここでポイントになるのは、「労働時間=業務をしている時間」とは限らないことです。つまり、たとえ表面的には机に座っているだけでも、会社のルールや上司の指示などに従ってそうしているならば、基本的に労働時間に含まれます。

なお、始業時刻は従業員が業務を開始する予定時刻であり、出勤時刻は従業員が実際に職場に到着した時刻です。早出する必要もないのに自分の意思で早めに出勤したとしても、始業時刻までは労働時間に含まれないので注意が必要です。

(2)労働時間の具体例

上記の定義に従うと、一般的に認知されているより多くの時間が労働時間として使われている可能性があります。

まず、業務に必要な時間はすべて労働時間に含まれます。たとえ上司に直接命じられたのでなくても、納期など業務上の必要から早出をしないといけないとしたら、それは労働時間です。「会社指定の作業着や制服に着替える」「始業時刻までに確認しなければならないメールのチェックをする」なども、業務で必要な時間として該当します。

また、会社からの具体的な指示や命令などで強制的に拘束される場合も労働時間です。たとえば、手待ち時間や電話番など、実際には手持ち無沙汰な状態でも該当します。早出の場合は、掃除や朝礼が名目になっていることも多いです。

さらに、会社に強制されて研修や訓練などを受講する時間も労働時間です。始業時刻前に出勤してラジオ体操をするなども、強制性があるなら労働時間に含まれます。

そのため、早出が労働時間とみなされるかは、主に「業務上で必要な早出か」「会社や上司の強制による早出か」というふたつの観点が重要です。

2. 早出の未払い残業代がある場合の相談先

上記の定義や事例に照らすと、労働時間として早出を無償で大量にしていたことが明らかになった人もいるかもしれません。その場合、終業後の残業と同じく、早出に関しても残業代を請求する権利があります。もし早出による未払いの残業代がある場合、以下の方法で対処することが考えられます。

  • 社内のコンプライアンス部門などに相談する
  • 労働組合に相談する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 弁護士に相談する

いきなり社外の機関や弁護士などに相談するのがためらわれる場合は、まず社内のコンプライアンス部門に相談してみるのがおすすめです。とはいえ、規模の小さな会社ではこうした部門がないことも珍しくありません。相談しても対応に消極的なこともあります。

そうした場合は、労働基準監督署や弁護士など社外の機関や専門家に相談することで、必要な助言やサポートを得ることが可能です。特に労働問題に強い弁護士は、豊富な法律知識やノウハウを駆使して、さまざまな観点から会社の落ち度を明らかにし、交渉を優位に進めてくれることが期待できます。

3. 早出残業の残業代請求方法

早出残業の残業代を請求するためには、以下の手順を実行することが必要です。

(1)残業代請求のための証拠を集める

未払いの残業代を請求するためには、労働時間や残業時間を客観的に証明するための証拠が必要です。出勤簿や勤務表、メールのやり取りなど、労働時間や残業時間を裏付ける書類やデータを収集しましょう。証拠資料を集めたら、法定の割増賃金率に応じて未払いの残業代の総額を算出します。

(2)会社へ未払いの残業代を請求する

未払いの残業代を計算し終えたら、内容証明郵便で会社に請求書を通知します。内容証明郵便なら、書面の内容や相手がいつ受け取ったかも記録に残せるので、会社は「そんな請求は知らない」と言い逃れることができなくなります。もしも会社が請求に応じないようなら、労働審判や訴訟手続きを検討することになります。

会社に強制された早出なのに残業代が出ないという場合は労働基準法違反です。自分で残業代の請求書を作成したり会社と交渉したりすることが不安な場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年08月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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