交通事故で治療中症状固定と言われたら? 「症状固定」の持つ意味と症状固定後の流れ
  • 2021年05月18日
  • 交通事故

交通事故で治療中症状固定と言われたら? 「症状固定」の持つ意味と症状固定後の流れ

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

「症状固定」の時期は、損害賠償額を計算する上での重要なポイントとなります。そこで、今回は交通事故によるケガの症状固定について知りたい方のために、「症状固定」の持つ意味と、症状固定後の流れについてご紹介します。

1. 症状固定とは?

症状固定とは、それ以上治療を続けても痺れや痛みといった症状が回復する見込みがない状態であると判断されることです。症状固定と判断をされた場合、交通事故の加害者から固定日以降の治療費の支払いを受けることはできません。

また、症状固定日以降の期間は、仮に治療を継続したとしても、慰謝料の算定根拠となる「通院日数」や「治療期間」としてみなされません。つまり、症状固定と判断された日までの通院日数や治療期間で、慰謝料を算定することになります。

なお、治療によって、交通事故のケガが完治した場合は「治癒」となります。

2. 症状固定を判断する際にもっとも重要視されるのは医師の意見

症状固定を判断する際には医師の意見が重視されます。

この点について、加害者側の保険会社の交渉担当者が一方的に判断すると勘違いされている方も多いかと思います。しかしながら、「これ以上治療をしても症状の改善が見込めない」と判断ができるのは医師だけであるはずです。

そのため、保険会社の担当者は、医師に「そろそろ症状固定はどうでしょうか」と照会し、その回答内容によって打ち切りの判断をしています。医師の中には、保険会社の働きかけに従って症状固定の判断を下すケースや、積極的に症状固定の判断をしない医師、双方おられます。いずれの場合も、事故の被害者にとっては、好ましい状態ではありません。

早すぎる症状固定では、治療をしっかりと受けることができませんし、賠償金の金額も少なくなります。逆に、症状固定が遅くなりすぎると示談が進まずに、慰謝料の支払いが遅くなります。

また、症状固定の延長を交渉しても、保険会社側が一方的に治療費の支払いを打ち切ることもあります。ただし、治療の継続が必要であると認められれば、後で治療費を請求することが可能です。とはいえ、一時的であっても治療費の支払いは大きな負担となります。支払いが厳しい場合は健康保険に切り替えるための「第三者行為による傷病届」を提出した上で、健康保険を利用して負担を少しでも減らしましょう。

3. 症状固定と判断されるタイミングはいつ?

一般的には、事故から6か月程度で症状固定と判断されますが、交通事故によるケガの種類は多く、骨折やむち打ち、裂傷などケガの種類や程度によって症状固定と判断されるタイミングが異なります。

(1)むち打ち

むち打ちは、レントゲンやMRI等の画像に所見が現れにくく、自覚症状のみで判断することが多いため、症状固定の時期が判断しにくい症状です。保険会社によっては3か月程度での症状固定や、治療費の打ち切りを主張してくることがあります。

(2)骨折

骨折で、可動域の制限等がなければ骨が癒合(しっかりとくっついた状態)した時点で治癒となります。しかしながら、骨折が原因で関節の可動域が制限されリハビリが必要になった場合や、手術によりプレートなどを入れた場合は、1年以上の治療ののち症状固定と判断されることもあります。

(3)醜状障害

醜状障害とは、裂傷や、熱傷、挫傷等により皮膚が損傷を受けて、治療をしても手術痕やケロイドなどの傷痕が残る状態のことです。傷痕が残っている場合、一般的には、6か月程度で症状固定となりますが、レーザー治療などで改善できる場合は長期の治療を要し、症状固定に時間がかかることもあります。

(4)高次脳機能傷害

高次脳機能傷害では、身体機能障害や認知障害の程度だけではなく、労働能力の喪失の程度も見極める必要があります。症状固定と判断されるためには、リハビリの改善効果を見ながら1年~2年程度かかります。

(5)複数のケガの場合

交通事故では複数のケガを負う場合も多く、複数の負傷が後遺症となってしまうことがあります。その場合、部位や症状ごとに症状固定の判断をします。後遺障害等級認定には「併合認定」というルールがあり、複数の後遺症がある場合は等級が高くなる場合もあるので、すべての症状固定を終えてから後遺障害等級認定を申請します。

4. 症状固定後の流れ

医師に症状固定を告げられたら以下の流れで手続きが進みます。

(1)後遺障害認定を受けるかどうかを判断

医師に症状固定と判断されたら、後遺障害等級の認定を受けるかどうかを検討します。交通事故の損害賠償においては、症状固定後に自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が定める後遺障害等級の認定を受けられれば、等級に応じた慰謝料、逸失利益を受け取れるからです。

(2)後遺障害等級認定の手続き

後遺障害等級の認定を受ける場合は、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい、後遺障害等級認定のための手続きに着手します。後遺障害等級の認定手続きは以下の2通りです。

<加害者の保険会社が行う事前認定>

事前認定とは、加害者の保険会社がすべての書類を用意して、損害保険料率算出機構に提出をして後遺障害に該当するかどうかの判断を受ける手続きです。被害者がほぼ負担を感じることなく手続きが進みます。ただし、加害者側の保険会社の担当者が書類の用意をしますので、必ずしも後遺障害等級の認定が受けられるような書類になっていない可能性もあります。

<被害者や被害者の弁護士が行う被害者請求>

被害者請求とは、被害者自身が加害者の自賠責保険に対して後遺障害等級の認定を請求する手続きです。被害者が交通事故証明書などの書類やレントゲン画像といった医療資料を被害者自身で用意する必要があり、手間や費用がかかります。一方で、交通事故事件を積極的に取り扱っている弁護士に依頼をすれば、治療の経過や現在の症状について適切に反映された資料を用意することができますので、適切な等級に認定される可能性が高くなるといえるでしょう。

(3)示談

後遺障害等級の認定を受けた場合も受けなかった場合も、症状固定後は示談交渉が進みます。治療期間や通院日数によって慰謝料が決定され、損害賠償金の総額が決まったら、示談書の取り交わしです。示談書の取り交わしが済むと被害者の口座に慰謝料を含めた賠償金が支払われます。

5. 症状固定前に弁護士に相談を

症状固定のタイミングや後遺障害が認定されるかどうか、認定される等級によって、受け取ることができる損害賠償の額が大きく異なります。適切な損害賠償を受け取るためには、症状固定する前に弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の損害賠償を扱っている弁護士に相談すれば、症状固定の時期や被害者請求の方法について的確なアドバイスをしてくれます。また、保険会社との症状固定についての交渉や等級認定後の示談交渉、等級認定のための書類・資料の作成や収集を任せることもできます。弁護士に依頼をすれば、後遺障害等級の認定が受けやすくなるだけでなく、慰謝料も高額な基準で算定されますので、賠償金の総額が高くなる可能性が高くなるでしょう。

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