交通事故で「12級」の後遺障害等級が認定されるのはどんな場合?
交通事故によるケガの症状が治療後にも残りつづけて後遺症となった場合、「後遺障害等級」の認定を受けることで、慰謝料や逸失利益などの損害賠償を加害者に対して請求することができます。
後遺障害等級のなかでは、「12級」は比較的軽い後遺障害等級に該当します。
それでも、慰謝料や逸失利益の金額は数百万円以上になる可能性があります。そのため、後遺障害等級が適切に認定されるかどうかは、被害者にとって非常に重要なことです。
この記事では、後遺障害等級に関する基礎知識と、後遺障害12級に該当する具体例や、後遺障害12級の場合の慰謝料や逸失利益などについて紹介します。
1. 交通事故の後遺障害等級とは?
交通事故で負傷した際には、治療後に残った症状の部位や重さなどに応じて、1級から14級までに分かれた「後遺障害等級」が認定される可能性があります。
そして、後遺障害等級が認定された場合には、等級に応じた「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」などの損害賠償を加害者に対して請求することができるようになるのです。
(1)後遺障害等級は部位や症状の重さなどに応じて定められている
後遺障害等級は、後遺障害の部位や症状の重さなどに応じて、認定基準が細かく定められています。
全等級についての認定基準は「後遺障害等級表」として公開されており、下記の国土交通省のサイトで確認することができます。
(参考:「後遺障害等級表」(国土交通省))
(2)後遺障害等級認定の申請の流れ
交通事故における後遺障害等級の認定は、「治療してもこれ以上回復の見込みがない」と判断された段階で残った症状に対して行われます。
この「治療してもこれ以上回復の見込みがない」という状態を、「症状固定」といいます。後遺障害等級認定の申請を行う際には、まず、医師による「症状固定」の診断を受けていることが前提となります。
また、後遺障害等級を認定してもらうためには、「損害保険料率算出機構」に後遺障害診断書を含む必要書類を提出して、申請を行う必要があります。
(参考:「損害保険料率算出機構」)
なお、申請の方法には「事前認定」と「被害者請求」の二種類が存在します。
それぞれの概要は、以下の通りです。
①事前認定
加害者側の任意保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せる方法です。
被害者にとっては、手続きの手間が省けるというメリットがあります。
しかし、損害賠償を支払う側である相手方の保険会社に申請を任せてしまうために、被害者にとって有利になるような書類を追完できない、というデメリットも存在します。
②被害者請求
被害者側が、後遺障害等級認定の申請を行う方法です。
申請の準備などに手間がかかることになり、事前認定に比べると認定までにかかる時間は伸びてしまいます。
しかし、提出する書類の準備を被害者側で行えるために、有利な等級認定を得やすくなる、という大きなメリットがあるのです。
適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、専門家である弁護士に相談しながら被害者請求を行うことをおすすめします。
2. 後遺障害等級が「12級」になる場合とは?
後遺障害等級が「12級」に該当する後遺障害の種類や、12級の場合に請求できる慰謝料や逸失利益などの損害賠償について解説いたします。
(1)「12級」に当たる後遺障害一覧
後遺障害等級表で定められている、後遺障害12級に該当する障害の種類は以下の通りになります。
1号:一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号:一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号:七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号:一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号:鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7号:一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8号:長管骨に変形を残すもの
9号:一手のこ指を失つたもの
10号:一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
11号:一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
12号:一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
14号:外貌に醜状を残すもの
(参考:「後遺障害等級表」(国土交通省))
(2)神経障害(むちうちなど)における12級と14級の違い
「むちうち」は、交通事故でも特に発生しやすいケガです。
基本的に、むちうちによって生じる後遺障害は「神経障害」に分類されることになります。
むちうちによる神経障害の場合、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」、または14級9号「局部に神経症状を残すもの」のいずれかに認定される可能性があります。
一般的に、12級13号と14級9号を分ける違いは、「他覚症状の有無」であるとされています。
つまり、レントゲン・MRI・CTなどの画像検査において客観的な所見が得られる場合には12級が認定される可能性がありますが、自覚症状のみの場合は14級になる可能性が高くなります。
したがって、交通事故の治療後に神経障害が残ってしまった場合、他覚的所見を得られるかどうかも請求できる損害賠償の金額に関わってくるといえるでしょう。
被害者としては、医師に相談して精密検査を行ってもらう、等級を認定する際に申請する書類の内容について弁護士に相談する、などの対応を行うことが重要になるでしょう。
(3)後遺障害12級の慰謝料・逸失利益
後遺障害12級の認定を受けた場合に、被害者が受け取れる「後遺障害慰謝料」の金額は、弁護士基準(※)で290万円となります。
※弁護士基準=交通事故の被害者が受けるべき損害賠償の金額を計算するために、過去の裁判例に基づいて策定された基準。自賠責保険基準・任意保険基準よりも被害者に有利かつ正当な基準である。弁護士を代理人として示談交渉を行うことで、弁護士基準による示談金の支払いを受けられる可能性が高まる。
また、後遺障害12級の場合、一般的に「14%」の労働能力喪失率が認められます。
そして、この割合に基づいて逸失利益の補償を受けることができるのです。
逸失利益の計算式は、以下の通りになります。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
※基礎収入=原則として、事故前の現実の収入を用いる。専業主婦などで収入がない場合には、賃金センサスの全年齢や性別平均賃金などを用いる。
※ライプニッツ係数(法定利率3%)は以下を参照
(参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省))
後遺障害慰謝料や逸失利益の求め方がわからない場合や、任意保険会社との示談交渉を専門家に任せたい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2022年07月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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