支払督促で時効の完成を阻止できる? 注意するポイントとは
  • 2022年03月10日
  • 債権回収

支払督促で時効の完成を阻止できる? 注意するポイントとは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

知人に貸したお金や会社間の売掛金などの債権には消滅時効があるため、債権者は時効が完成する前に回収を進める必要があります。時効が迫っている場合には、まずは時効を完成させないことが大事です。その手段の一つが「支払督促」です。

ただし、支払督促には注意するポイントがありますので簡単にご紹介します。

1. 債権の時効の完成を阻止する「支払督促」とは

「支払督促」とは「貸したお金を返してもらえない」「売掛金を支払ってもらえない」といった場合に、裁判所から債務者に支払いを命じてもらう手続きのことです。時効の完成を阻止する手段としてよく利用されています。

そもそも売掛金などの債権には「消滅時効」があります。たとえば売掛金の消滅時効期間は「原則5年」です(令和2年4月の改正民法施行前に生じていた債権は2年)。

時効が過ぎれば原則として請求できなくなります。そのため時効が迫っている場合は、まず時効のカウントをストップさせる必要があります。

時効の完成を阻止する法的効果には以下の二つがあります。

  • 完成猶予
  • 更新

なお、かつては停止 中断といった言葉が使われていましたが、新民法になった際に、語法が変わると同時に、どのような場合にどのような効果が認められるかについても整理し直されました。

「完成猶予」とは一定期間、時効を止めることです。一方で「更新」とは時効をゼロに戻し、そこから新たにカウントを始めることです。たとえば時効が5年で、4年経過したときに更新されれば、その時点から5年間が時効期間です。完成猶予は暫定的な手段になるため、効果的な債権回収をしたい場合には時効の更新をめざすのが良いでしょう。

時効が更新されるのは、主に次のようなケースです。

  • 確定判決、確定判決と同じ効力のある権利の確定
  • 強制執行
  • 債務の承認

このうち、債務の承認以外の2つは、それぞれ手続を始めることでまず時効の完成猶予が生じ、その後に更新が生じるように作られています。今回のテーマである「支払督促」は確定すれば確定判決と同様の効力を持ちます。つまり、時効の完成猶予をまず行い、最終的には時効の更新を生じさせる一つの手段なのです。

一般的に裁判は双方の主張を聞いて判断するため判決までに早くても数か月かかりますが、支払督促は申立人が提出した書類のみに基づいて判断されるため、裁判に比べて短期間で結果がでます。また郵送やオンラインでの申し立てができ、費用も安くすむため利用しやすい制度といえます。

2. 支払督促で注意すべきポイント

支払督促は時効中断には非常に有効な手段ですが、利用には次のような注意点があります。

(1)支払督促だけでは時効は更新されない

支払督促の申し立て後、裁判所が認めれば債務者に支払督促が送付されます。この時点で時効は更新されたと思って安心してしまう方が少なくありませんが、実はそうではありません。この時点では、時効の完成猶予が生じているだけです。

支払督促は申立人からの主張のみで判断されるため、債務者にとっては身に覚えがない可能性があります。それで時効が更新されてしまえば大きな不利益を被ります。そのため債務者には2週間の異議申し立て期間が認められています。

期間内に異議申し立てがなかった場合、債権者は30日以内は「仮執行宣言」の申し立てができます。申し立てを裁判所が認めると今後は「仮執行宣言付支払督促」が相手に送達されます。

さらにそこから2週間、債務者から異議申し立てがなければ権利が確定し、その時点でようやく時効が更新されます。

仮執行宣言が確定すれば確定判決と同一の効力を持つため、新たな時効は以前の時効が10年未満であっても10年に変更されます(民法第169条)。また相手の財産を差し押さえる「強制執行」もできるようになります。

なお支払督促を申し立てた時点で、手続きが終わるまでは時効の完成が猶予されています。そのため仮執行宣言までに時効満了のタイミングがきたとしても、時効はいったんストップしているため完成はしません。

(2)裁判になる可能性がある

支払督促に対して2週間以内に相手が異議を申し立てた場合、通常裁判に移行します。裁判となると支払督促と違って手続きに時間を要し、結果が確定するまでに時間もかかります。そのため支払督促を使わずに最初から裁判をした方が結果的に早く決着がつくケースがあります。相手が異議申し立てをする可能性が高い場合には、利用すべきかよく検討したほうがよいでしょう。

(3)時効援用がされる可能性がある

また時効は時効期間が過ぎれば自動的に成立するわけではありません。必ず相手に時効が過ぎたことを通告する「援用」という手続きが必要です。

援用がされていなければ、消滅時効期間が過ぎてしまっていても支払督促の申し立てはできますが、債務者が時効に気づき、異議申し立ての中で時効援用を主張してくる可能性があります。

その場合、支払督促申し立ての時点で時効は過ぎてしまっているため、時効の完成猶予や更新もできません。時効中断の効果も生まれません。

支払督促は時効更新の手段として有効ですが、時効期間が到来していたり、相手が異議申し立てをする可能性が高かったりする場合には、裁判などほかの手段も考える必要があります。判断には法律の知識も必要になるため、「債権回収を進めたい」「時効が迫っている」といった場合はできるだけ早く弁護士に相談されることをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年03月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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