支払督促に異議申立されたら強制執行は不可能? 通常訴訟での注意点
貸金の返済が滞り、支払督促での債権回収を検討している方もいるのではないでしょうか。しかし支払督促を申し立てても、相手方の異議申立によって通常訴訟へ移行することがあります。通常訴訟は債権者にも大きな負担となります。
本コラムでは、支払督促のリスクや通常訴訟における注意点、支払督促以外の債権回収手段について解説します。
1. 支払督促とは
支払督促は、債権者の申し立てに応じて、裁判所(書記官)が債務者に対して貸金や損害賠償金などの金銭、有価証券などの返済を督促する法的手続きです。債権者の主張・証拠により、債権者の請求権が明らかに認められる場合に支払い督促を利用できます。
(1)メリット
民事訴訟を提起するのに比べて手続き費用が半額で済むことや、必要なのが書類審査のみで、証拠提出は不要な点が挙げられます。裁判所に出向く必要はなく、債権を回収できる確率も高まります。
(2)実際の手続き
債権者が支払督促申立書を裁判所に郵送またはオンラインで送信することで手続きします。送付先は債務者の住所地を管轄する簡易裁判所です。裁判所が債権者の申し立てを理由ありと認めると、債務者に支払督促が行われます。
債務者が支払督促の送達を受けた日の翌日から2週間以内に異議申立が行われない場合には、債権者は、裁判所に対し、30日以内に仮執行宣言を申し立てます。これにより裁判所は、債務者の預金や給与を差し押さえる強制執行ができるようになります。
2. 支払督促に対する異議申立とは
支払督促を受けた債務者は、以下の3つから対応方法を選択できます。
- 督促に応じて債権者に金銭を支払う
- 支払督促を無視する
- 異議を申し立てる
債務者が支払督促を無視した場合、債権者は通常、強制執行による債権回収を試みます。異議申立を行うには、特別な理由は必要ありません。債務の存在そのものや債務額に対して異議を申し立てたり、単に支払えないという理由で申し立てたりする場合もあります。
異議申立のタイミングは2回あります。1回目は裁判所からの支払督促を受け取った日の翌日から2週間以内、2回目は仮執行宣言付支払督促を受け取った日の翌日から2週間以内です。
3. 異議申立をされるとどうなるのか
債務者が異議申立をすると、民事訴訟法にしたがって、通常訴訟の審理が行われます。審理は、債権が140万円以下の場合は簡易裁判所で、また140万円を超える場合には地方裁判所で行われます。
強制執行の可否は、異議申立のタイミングによって異なります。支払督促に対して異議申立が行われた場合には、支払督促は直ちに失効し、強制執行はできません。仮執行宣言付支払督促に対して異議申立が行われた場合は、仮執行宣言付支払督促は失効しますが、支払督促自体は有効です。債務者が執行停止を申し立てない限り、強制執行は可能です。
4. 通常訴訟への移行後の留意点
通常訴訟では、債権者は主張と要点をまとめた訴状を用意しなければなりません。加えて、原告である債権者は、債権の存在を証明するために自ら証拠を集める必要があります。
また、支払督促では書面で審理が行われるのに対し、通常訴訟の場合、審理が行われるのは法廷です。裁判管轄は被告(債務者)の住所地に限定されるため、かなり遠方に出向かなければならない場合もあります。
さらに、申立手数料は支払督促の2倍かかります。このように通常訴訟は支払督促と比較すると、時間も費用も労力もかかります。ただし、確定判決を得られれば、強制執行により債権を回収することが可能です。
5. 支払督促以外の手段
支払督促は迅速かつ簡便な債権回収手段ですが、債務者の異議申立によって失効することがあり、即座に通常訴訟に移行するなど、不安定な側面もあります。そのため支払督促を実行する前に、ほかの債権回収手段を検討することが重要です。
(1)電話・メール・面会による交渉
債務者とコンタクトが取れる場合には、法的手続きに入る前に直接、交渉することが賢明です。弁護士などの第三者を交えることによって、交渉が円滑に進むことも多くあります。
(2)内容証明郵便の送付
内容証明郵便は、文書の内容・時期・差出人・受取人を郵便局が証明するサービスです。債権回収においては通常、最初に利用される方法が内容証明郵便です。高い証拠力を持ち、消滅時効の中断事由(催告)になるだけでなく、相手方に心理的圧力を与え、支払いに応じる可能性を高める効果があります。内容証明郵便には、債権の種類・金額・支払期限・支払先・支払いが行われなかった場合の法的措置の予告などが記載されます。
(3)民事調停手続
民事調停手続は裁判官と一般人から選ばれた調停委員が、債権者・債務者とともに話し合いをすることで紛争を解決するシステムです。通常訴訟よりも費用が安く、一般的に解決までの時間も長くかかることはありません。通常、相手方(債務者)の住所地の裁判管轄である簡易裁判所に申し立てを行います。調停が成立しない場合、通常訴訟に移行することがあります。
(4)少額訴訟
債権回収の額が60万円以下の場合には、少額訴訟を提起できます。少額訴訟は1日で審理が終わり、控訴も禁止されているため、スピーディーな解決が期待できます。ただし、被告(債務者)が少額訴訟を望まない場合には、通常訴訟に移行することになります。
(5)通常訴訟
債務者が簡単に応じないことが予想される場合、最初から通常訴訟を提起することもひとつの方法です。支払督促から通常訴訟へ移行する場合と異なり、被告(債務者)の住所地以外からも裁判管轄を選択することが可能です。
(6)請求を取り下げる
債権回収には多くの労力が必要です。特に通常訴訟では債権者にも大きな負担がかかります。債権の額が低額であれば、債権回収を断念することも賢明です。
上記のいずれの手段を選択するにせよ、法的知識が必要です。債権回収を効率的かつ効果的に行うためには、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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