交通事故によるケガで通院。請求できる慰謝料の種類を解説
交通事故で負傷して入院や通院をした場合、治療費や交通費だけではなく、実際に事故のために休まなければならなかった分の休業補償や、通院を強いられたことに対する精神的損害についての慰謝料を加害者に対して請求できます。
このコラムでは、交通事故によるケガで通院した場合に請求できる慰謝料の算定方法を解説します。
1. 交通事故における「慰謝料」とは?
交通事故における慰謝料とは、交通事故でケガをした場合に生じた精神的損害を賠償するお金のことを指します。
民法第709条では、他人の「不法行為」によって損害を受けた場合に、原状復帰のための損害賠償を請求できると規定されています。交通事故における損害賠償は、この規定にのっとってなされています。
また、精神的な苦痛の賠償については民法第710条で規定されています。慰謝料は損害賠償金や示談金と呼ばれるお金の一部です。
交通事故の損害賠償金は、加害者が加入している、自動車損害賠償責任保険(以降「自賠責保険」)や任意保険から支払われます。加害者がいずれにも加入していない場合には、加入者自身に請求することになります。
2. 通院をしていなければ慰謝料は請求できない
交通事故で、慰謝料を請求できるのは、基本的には「ケガをして医師の診察を受けた場合のみ」です。明らかにケガをしていても、医療機関に通院をしていなければ、慰謝料は請求できません。
また、自動車やバイクが破損しても、慰謝料の請求が認められることはありません。もっとも、例外的に、家屋が損壊した場合、生活の平穏を害され、多大な精神的苦痛を被ったとして慰謝料が認められることがあります。
(1)被害者が加害者に請求できるお金
交通事故の被害者は、以下の費用を請求できる可能性があります。
①ケガをして通院をしている方が加害者に請求できるお金の例
- 通院交通費
- 休業損害
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
②車やバイク、自転車などの物的損害がある場合に請求できるお金の例
- 車、バイク、自転車の修理費用
- 修理期間中に要した代車費用
- 業務用車の場合は、休車損害(認められないケースもある)
- 車、バイク、自転車が修理不能になった場合は、同程度のものを購入するための費用
(2)慰謝料の種類
交通事故でケガをした場合に請求できる慰謝料の種類は以下の通りです。
①入院慰謝料
入院したことに対して支払われる慰謝料です。入院日数や治療期間に応じて算定されます。
②通院慰謝料
通院慰謝料は、通院の日数や治療期間に応じて支払われる慰謝料です。一般的には通院日数や治療期間が多いほうが、慰謝料の金額は高額になります。
③後遺障害慰謝料
交通事故でケガをして、通院をしたにもかかわらず事故によって一定の後遺症が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。後遺障害慰謝料を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受けなければなりません。後遺障害慰謝料は、ケガの入院慰謝料や通院慰謝料とは別途に支払われます。
3. 入通院慰謝料の3つの算定基準
入通院慰謝料の算定は、通院日数や治療期間によって画一的に計算されます。算定方法は、以下の3通りです。
(1)自賠責基準
自賠責基準は3つの算定方法の中で、もっとも低額になる可能性が高い慰謝料算定方法です。自賠責基準では、治療期間もしくは、実際の通院日数によって慰謝料を算定します。
- 治療期間(初診から治療完了までの日数)
- 実際の通院日数×2
上記の2つのうち少ないほうに、4300円を乗じた金額が慰謝料となります。
(2)任意保険基準
任意保険基準とは、任意保険会社独自の算定基準です。交通事故の損害賠償は、まず自賠責保険によって行い、自賠責保険の支払限度額に達した場合は任意保険を用います。
任意保険の慰謝料算定基準は、民間の保険会社がそれぞれ算定しており、正確な計算方法は公開されていません。しかしながら、自賠責保険基準とほぼ同額といわれています。また、通院回数が多い場合は、通院回数に4300円を乗じた金額よりも低額になることもあります。
(3)裁判基準
裁判基準とは、裁判になった場合や弁護士が交渉した場合に用いられる算定基準です。3つの算定方式の中ではもっとも高額な慰謝料が期待できる算定方法となります。自賠責保険や任意保険基準と比較すると、2倍から3倍になることも珍しくありません。
4. 交通事故による慰謝料請求を弁護士に相談するメリット
ケガによる慰謝料を加害者に請求する際に、弁護士に交渉を依頼することで、以下のメリットが生じます。
- 裁判基準での慰謝料が請求できる
- 後遺障害の等級認定手続きを依頼できる
- 加害者側との交渉ストレスを軽減できる
弁護士費用特約に加入している場合は、ほとんどの保険会社が300万円を限度に弁護士費用を支払います。この場合は、重傷の場合を除いて、弁護士費用の自己負担がほぼなくなりますので、弁護士に依頼をする前にご自身の自動車保険等の契約を確認しておきましょう。
たとえ特約に加入していなくても、ケガの状態によっては、弁護士費用を支払ったとしても、手元に残るお金が増える可能性が高いと考えられます。交通事故の慰謝料請求でお困りの方は、交通事故案件を取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年05月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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