教員に残業代が出ないのは当たり前? 請求できるのか?

教員に残業代が出ないのは当たり前? 請求できるのか?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

学校現場で働く教員は激務であることが知られており、労働時間が長くなりがちです。その一方で、特に公立学校の教員については、残業代がほとんど支給されません。 公立学校の教員に残業代がほとんど支給されないことには、「給特法」という法律が関係しています。

今回は、公立学校教員の残業代がほとんど出ない理由、公立学校と私立学校における残業代ルールの違い、未払い残業代請求の可否などを解説します。

1. なぜ公立学校教員の残業代はほとんど出ないのか?

公立学校教員は、労働時間が長い傾向にあるにもかかわらず、残業代がほとんど支払われていません。その理由は、「給特法※」という法律により、残業代について特別なルールが定められているためです。

※正式名称:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

(1)公立学校の教員は残業代が不支給とされている

義務教育諸学校等※の教育職員※には、時間外勤務手当と休日出勤手当が支給されないことになっています(給特法第3条第2項)。

<義務教育諸学校等>

  • 小学校
  • 中学校
  • 義務教育学校
  • 高等学校
  • 中等教育学校
  • 特別支援学校
  • 幼稚園

<教育職員>

  • 校長(園長を含む)
  • 副校長
  • 教頭
  • 主幹教諭
  • 指導教諭
  • 教諭
  • 養護教諭
  • 栄養教諭
  • 助教諭
  • 養護助教諭
  • 講師(常勤勤務の者および定年退職者等である短時間勤務者に限る)
  • 実習助手
  • 寄宿舎指導員

したがって、公立学校の教員がどんなにたくさん残業をしても、残業代によって給与が増えることはありません。

(2)残業代の代わりに支払われる「教職調整額」は低額

義務教育諸学校等の教育職員に対しては、残業代の代わりに「教職調整額」が支給されます(給特法第3条第1項)。教職調整額は、月額給与の4%が基準とされています。

残業代が不支給とされる一方で、固定額の教職調整額が支給されるのは、教員の職務が自発性・創造性に期待する面が大きいことが根拠とされています。

勤務時間の長短により機械的に評価するのは不適切であるとの考え方によって、勤務時間に比例した残業代を支給するのではなく、固定額の教職調整額を支給することになっているのです。

しかし、月額給与の4%という教職調整額は、1966年(昭和41年)当時の月平均超過勤務時間を参考に決められた経緯があります。

現代では当時に比べて教員の労働時間が数倍に増えていることを踏まえると、教職調整額が月額給与の4%に据え置かれていることは不適切との意見が根強く存在する状況です。

2. 私立学校の教員には残業代が支払われる

公立学校の教員とは異なり、私立学校の教員には給特法が適用されません。

私立学校の教員は、学校の設置者に雇用される労働者です。給特法が適用されない以上、会社員など通常の労働者と同様に、労働基準法が全面的に適用されます。

したがって、学校の設置者は私立学校の教員に対して、労働時間に応じた時間外労働手当・休日手当・深夜手当を支払う義務を負います。

残業代が支払われず、微々たる教職調整額しか支払われない公立学校の教員と、きちんと残業代が支払われる私立学校の教員の間には、かなりの待遇格差が生じているケースがよくあります。

こうした状況においては、公立学校から私立学校への転職を目指す教員の方も少なからずいらっしゃるでしょう。

3. 教員は未払い残業代を請求できるのか?

教員が学校の設置者(または国・公共団体)に対して未払い残業代を請求できるのか否かについては、公立学校教員の場合は不可、私立学校教員の場合は可という結論になります。

公立学校教員については、給特法の定めにより、法的に残業代が発生しません。残業代が未払いなのではなく、そもそも発生していないのですから、未払い残業代請求はできないというのが現在の結論です。

これに対して私立学校教員の場合、労働基準法に従った残業代を受け取る権利があります。したがって、学校の設置者が支給する残業代が客観的な金額に不足している場合には、未払い残業代を請求できます。

公立学校と私立学校ではこのように、残業代に関する大きな待遇格差が存在すると言わざるを得ない状況です。

残業代の出ない状況に不満がある公立学校教員の方は、今後の制度改正に期待するか、それが待てなければ、私立学校などへの転職をご検討ください。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年03月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

労働問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す

労働問題に強い弁護士

  • 若松 俊樹 弁護士

    弁護士法人リーガルプラス柏法律事務所

    千葉県 柏市
    千葉県柏市中央1-1-1 ちばぎん柏ビル4階
    JR・東武柏駅からお越しの場合
    東口より徒歩5分
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    電話相談(簡易回答)は、交通事故・遺留分・残業代請求のみとなります。

     
    注力分野

    未払い残業代の請求、労災、退職勧奨・不当解雇問題を中心に、ご依頼者の方が泣き寝入りすることのない解決を目指します

    現在営業中 9:00〜20:00
    WEBで問い合わせ
  • 都築 直哉 弁護士

    弁護士法人平松剛法律事務所仙台事務所

    宮城県 仙台市青葉区
    宮城県仙台市青葉区中央1-6-35 東京建物仙台ビル14階
    【電車でお越しの方】
    JR 仙台駅 徒歩5分
    市営地下鉄 仙台駅
    北7出口より徒歩3分

    【お車でお越しの方】
    提携(近隣)駐車場のご案内
    アエル地下駐車場
    宮城県仙台市青葉区中央1-3-1
    ※提携駐車場から事務所までは、200mほど離れております。
    ※詳細はお問い合わせ下さい。
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 夜間相談可
    • 全国対応
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • LINE相談可
    • メール相談可
    • 初回相談無料

    休日・夜間相談は要事前予約とさせて頂いております。お問い合わせください。

     
    注力分野

    《不当解雇・残業代請求等お任せ!》300件以上の実績がある経験豊富な弁護士が解決に導きます。 【退職金請求等にも広く対応】【無料相談・着手金無料あり】

    現在営業中 9:00〜19:00
    WEBで問い合わせ
  • 平田 純一 弁護士

    平田純一法律事務所

    大阪府 大阪市西区
    大阪府大阪市西区西本町1-13-32 レイズ本町ビル8階
    ■大阪メトロ四つ橋線 本町駅 徒歩4分
    ■大阪メトロ中央線 本町駅 徒歩5分
    ■大阪メトロ御堂筋線 本町駅 徒歩8分
    • 当日相談可
    • 夜間相談可
    • 24時間予約受付
    • ビデオ相談可

    夜間、土日相談希望の場合も、まずはお問い合わせくださいませ。

     
    注力分野

    現在営業中 10:00〜19:00
    WEBで問い合わせ
  • 土井 將 弁護士

    賢誠総合法律事務所丸の内事務所

    東京都 千代田区
    東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスビル5階515区
    ・JR「東京駅」丸の内北口より徒歩8分。 *東京駅より 地下通路もご利用いただけます。
    ・地下鉄「大手町駅」C13b出口より地下通路直結。
    • 休日相談可
    • 夜間相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • メール相談可
    • 初回相談無料

    ※いずれも、内容や状況により異なりますので、問い合わせ先へご確認ください。

     
    注力分野

  • 坂井 宏輔 弁護士

    ベリーベスト法律事務所 広島オフィス

    広島県 広島市中区
    広島県広島市中区八丁堀15-6 広島ちゅうぎんビル5階
    バス・路面電車「八丁堀停留所駅」より徒歩1分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 全国対応
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

     
    注力分野

    残業代未払や不当解雇など、労働問題でお悩みの方、今すぐご相談を。迅速な解決のため尽力いたします。

    現在営業中 9:30〜21:00
    WEBで問い合わせ