
- (更新:2024年12月19日)
- 労働問題
無断欠勤を理由にした懲戒解雇は認められる? 普通解雇と懲戒解雇の違いとは
突発的に会社を休まなければいけなくなった場合、社内ルールに基づき連絡をするのが一般的です。しかし、体調不良などの理由で、会社に連絡することができずに仕事を休んでしまうことがあるかもしれません。
労働者としては、欠勤したことについてきちんとした理由があったとしても、会社側から無断欠勤を理由として懲戒解雇が言い渡されることもあります。このようなケースでは、どのように対応したらよいのでしょうか。そもそも無断欠勤のみを理由にした懲戒解雇は認められるのでしょうか。
今回は、労働者の方向けに、無断欠勤を理由にした懲戒解雇が認められるのかどうか、また普通解雇と懲戒解雇の違いについて解説します。
1. 労働者が知っておくべき解雇の基本
懲戒解雇は、不祥事のニュースなどで報じられることが多い言葉です。懲戒解雇なのか、それとも普通の解雇であるのかは、当事者でなければ、あまり気にならないかもしれません。しかし解雇される労働者にとっては、その違いは非常に大きいものとなります。
労働者が知っておくべき基礎知識として、解雇の種類と普通解雇、整理解雇、懲戒解雇の違いを理解しておきましょう。
(1)普通解雇とは
普通解雇とは、会社が一方的に労働契約を終了させる解雇のうち、労働者の勤務態度が悪い、営業成績が悪い、協調性に欠けているといった労働者の落ち度や健康状態などを理由としてなされる解雇です。
(2)整理解雇とは
整理解雇とは、会社が一方的に労働契約を終了させる解雇のうち、労働者に非はなく、経営状況の悪化など会社側の都合によってなされる解雇のことを指します。一般に「リストラ」と呼ばれるものです。
(3) 懲戒解雇とは
懲戒解雇は、企業の秩序を乱す重大な規律違反を行った労働者に対して制裁として行われる解雇です。懲戒解雇処分には、戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇(諭旨退職)、懲戒解雇があり、懲戒処分はもっとも重い処分です。
懲戒解雇の理由となりうる行為としては、業務上横領や会社の信用を著しくおとしめる犯罪行為などが挙げられます。
懲戒解雇は、使用者が労働者に対して制裁として行うものであり、一方的に労働契約関係を終了させることになります。そのため、使用者が自由に行うことができる性質のものではありません。
懲戒解雇は、懲戒解雇となる理由が就業規則に明記されているなど、客観的に合理的な理由があり、処分内容が過度に重くないなど社会通念上相当と認められる場合でなければ認められません(労働契約法第15条)。
このような要件を満たさない懲戒解雇は、不当解雇であるとして無効になります。
2. 懲戒解雇と普通解雇の違い
懲戒解雇と労働者に責任がある普通解雇は、どちらも労働者の行為や態度が原因となる解雇です。しかし主に次のような点で、違いがあります。
(1)解雇の目的
普通解雇と懲戒解雇では、解雇の目的や理由に違いがあります。
懲戒解雇は、会社からの一方的な契約の解約であり、労働者に対する制裁としての意味合いがあります。
一方、普通解雇は会社からの一方的な契約の解約であることは共通しますが、制裁を目的としていません。普通解雇は、労働者が労働契約で求められる役割を果たせないため、契約を継続することが困難だと判断された場合に行われます。
(2)解雇予告・解雇予告手当
解雇を行う場合、企業は解雇日の30日前までに、労働者に対して解雇予告をする必要があります。30日に満たないときは、30日に不足する日数分の平均賃金を、解雇予告手当として支払わなければいけません。
普通解雇、懲戒解雇ともに、解雇予告または解雇予告手当の支給が原則として必要です。ただし、懲戒解雇の場合は、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受ければ、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要になります。
(3)退職金
普通解雇では、解雇事由によって支給額が異なることがあるものの、退職金は支給されるのが一般的です。
一方、懲戒解雇の場合には、退職金規定などで退職金を減額または不支給とする旨を定めているケースがあります。このような規定がある場合には、退職金が減額されたり支給されなかったりする可能性があります。退職金規定や就業規則、契約等に減額や不支給とする旨の規定がないにもかかわらず退職金が支給されない場合は、会社に請求できる可能性がありますので、会社に該当規定を示すよう求め、弁護士にご相談されるとよいでしょう。
(4)解雇の有効性の要件
解雇は、客観的に合理的な理由があって、社会通念上も相当な場合でなければ、認められません。これは普通解雇でも懲戒解雇でも同様です。
さらに懲戒解雇では、就業規則に懲戒処分となる事由や処分内容が明記されており、処分の相当性、企業秩序違反の程度、他の懲戒処分との比較などを考慮したうえで、判断する必要があるとされています。普通解雇と比較すると、懲戒解雇のほうが非常に厳格な要件を満たす必要があり、容易に行える処分ではありません。
(5)転職
普通解雇と懲戒解雇では、転職の場面で違いが生じる可能性があります。
履歴書に、解雇された旨を記載する必要はありません。ただし、懲戒解雇の場合は、退職時に発行される離職票に、重責解雇と記載される可能性があります。転職先に離職票の提出を求められた場合は、懲戒解雇処分を受けたことがわかってしまうことになります。
また、面接時に懲戒解雇を受けたことを隠したまま採用が決まったとしても、後日に懲戒解雇を受けたことが発覚した場合は、解雇の理由になるおそれがあります。
3. 無断欠勤を理由とした懲戒解雇は認められる?
無断欠勤のみを理由として懲戒解雇をされた場合には、不当解雇として争うことができる可能性があります。
会社の就業規則などに「○日以上の無断欠勤」を懲戒事由として規定している場合、会社側は、就業規則の懲戒規定を形式的に適用して、無断欠勤をした労働者を懲戒解雇にすることがあります。
しかし、懲戒解雇は懲戒処分の中でももっとも重い処分であり、労働者に対して著しい不利益を課す処分となります。そのため、懲戒解雇の有効性を判断するハードルは極めて高く、容易には認められません。
労働者に無断欠勤があったとしても、普段の勤務態度に問題がなく、これまで懲戒処分を受けたことがないような場合には、直ちに懲戒解雇をするということは相当性を欠くとして、不当解雇と認められる可能性が高いといえます。
4. 労働者も理解しておきたい解雇の流れ
懲戒解雇をされる場合は、次のような流れで行われるのが一般的です。
(1)労働者に対して弁明の機会を与える
懲戒解雇を行う場合には、労働者に対して弁明の機会を与えることが必要になります。会社側としては、無断欠勤をした労働者に対して、無断欠勤をしたことに関して言い分があるかどうかを確認することになります。
無断欠勤をしたことに関して正当な理由がある場合は、弁明の機会にきちんと会社側に伝えて、懲戒解雇の撤回を求めるようにしましょう。
(2)解雇予告の除外認定
懲戒解雇をする場合であっても、普通解雇と同様に、原則として30日前の解雇予告、または解雇予告手当の支払いが必要になります(労働基準法第20条)。
ただし、懲戒解雇の場合には、労働基準監督署に申請をして解雇予告の除外認定を受けることによって、解雇予告手当の支払いが不要になることがあります。即日解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われていないという労働者の方は、解雇予告の除外認定の手続きがとられているかどうかを確認してみるとよいでしょう。
(3)懲戒解雇通知書の交付
弁明の機会を与えたうえで、なお懲戒解雇が相当であると考える場合には、会社は労働者に対して、懲戒解雇通知書を交付して、懲戒解雇を言い渡すことになります。
懲戒解雇をされたもののその内容に納得がいかない労働者の方は、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。
(4)離職票の発行
懲戒解雇の場合も、普通解雇や通常の退職手続きと同様に、会社は労働者に対して離職票を交付する必要があります。懲戒解雇の場合、会社都合での退職と比べて、失業保険を受給するまでの期間が長い、失業保険をもらうことができる日数が少なくなるなど、不利な取り扱いになることがあるため、注意が必要です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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