発信者情報開示請求の流れを解説! 発信者が特定されるまでの手順

発信者情報開示請求の流れを解説! 発信者が特定されるまでの手順

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

ネット上での暴言や誹謗中傷のコメントの発信者が検挙される事例が増えています。令和元年12月には、ひき逃げ被害に遭った遺族に対して「捕まえてみろ」と犯人を装うメールを送信した男が、令和2年12月にはタレントに対して会員制交流サイト(SNS)上で「いつ死ぬの?」などと投稿した男が、それぞれ検挙されました。

悪質な暴言・誹謗中傷などを投稿した発信者については、たとえ偽名やアカウント名しか名乗っていなくても個人特定につながる情報の痕跡が残っているので、「発信者情報開示請求」によって発信者を特定できる可能性があります。

1. 発信者情報開示請求とは

インターネット掲示板・SNSなどのサイト管理者は、投稿者に関する正確な情報を持っておらず、たとえ情報を保有していても明かしてくれることはありません。

また、インターネット回線の利用を提供している通信会社は契約者に関する情報を保有していますが、重要な個人情報にあたるので「教えてほしい」と問い合わせても、開示してくれることはないのです。

しかし、「発信者情報開示請求」を行えば、インターネット上で暴言や誹謗中傷を投稿した発信者を特定できる可能性があります。

インターネット掲示板や会員制交流サイト(SNS)への投稿は、携帯電話会社やインターネットプロバイダが提供するインターネット回線を利用することになります。インターネットを利用すると必ず痕跡が残るので、その痕跡をたどって発信者を特定する作業が発信者情報開示請求です。

なお、発信者情報開示請求のほかに、「プロバイダ責任制限法」第4条に基づく開示請求という方法もあります。ただし、この方法では開示請求を受けたプロバイダが発信者に対して、「情報を開示してもよいか?」と伺いを立てることになります。

もちろん、ほとんどの発信者が「開示してほしくない」と回答するうえに、プロバイダ側もこの方法での開示には消極的です。

プロバイダ責任制限法に基づく開示請求で発信者の個人情報が開示された事例はほとんどないので、任意での開示請求は期待できないと考えたほうがよいでしょう。

2. 相手を特定するまでの流れ

発信者情報開示請求では、裁判所への申し立てによって発信者を特定します。

(1)個人特定には二段階の請求が必要

暴言や誹謗中傷の投稿を発信した個人を特定するには、最低でも二段階の請求を経る必要があります。

(2)コンテンツプロバイダに対する情報開示請求

まずは、裁判所に「仮処分」の申し立てを行い、インターネット掲示板やSNSといったコンテンツを提供している管理者から、発信者のIPのアドレスなどを開示させます。

ここで判明するのはIPアドレスなどの情報だけで、これだけをみても発信者が「どこの誰なのか」まではわかりません。

(3)インターネットプロバイダに対する情報開示請求

コンテンツプロバイダからIPアドレスの開示を受けると、発信者がどのインターネット回線を利用したのかがわかります。

そこで、発信者が利用したインターネット回線を提供しているプロバイダに対して「このIPアドレスを割り当てられたのは誰なのか?」という契約者情報を開示するよう、訴訟を提起します。勝訴すれば、住所氏名など発信者の情報を開示してもらうことが可能です。

なお、現在、2段階手続きの負担軽減を含めた、法改正が検討されているとされています。そのため、令和3年には開示請求の手続きが短縮化される可能性もあるでしょう。

3. 発信者情報開示請求は「時間との勝負」

一般的に、インターネットプロバイダが通信の痕跡を保存している期間は、わずか3か月ほどと言われています。

つまり、インターネットプロバイダに対する開示請求の訴訟を起こすまでのタイムリミットは、非常に短い期間しかありません。

プロバイダに対して、発信者情報の消去禁止を求める「発信者情報消去禁止の仮処分」を行うことはできますが、保存期間を経過してしまっていれば意味をなさないでしょう。そのため、暴言や誹謗中傷が投稿されたら直ちにアクションを起こすべきといえます。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年07月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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