被相続人がアメリカ国籍の場合、相続にはどの国の法律が適用される?
日本に住んでいるアメリカ国籍の方が亡くなった場合、相続手続きには、日本とアメリカのどちらの国の法律が適用されるのでしょうか。
この記事では、相続の準拠法決定に関する国際私法のルールを踏まえて、アメリカ国籍の方の相続に関する準拠法がどのように決まるかについて解説します。
1. 被相続人がアメリカ国籍の場合、相続に適用される法律は?
被相続人の方が外国人の場合、「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)のルールに従い、相続に関する準拠法が決定されます。
以下では、アメリカ国籍の方が亡くなった場合の相続に関する準拠法について、通則法のルールに沿って検討してみましょう。
(1)相続の準拠法は原則として「本国法」
通則法第36条では、「相続は、被相続人の本国法による」と定められています。
また、遺言の成立・効力についても、遺言の成立の当時における遺言者の本国法によるとされています(通則法第37条第1項)。
「本国法」とは、原則として国籍を有する国を意味すると解されています。
ただし、以下のようにイレギュラーな場合には、通則法第38条に定められるルールに従って決定されます。
①当事者が二以上の国籍を有する場合(通則法第38条第1項)
- いずれかが日本の国籍の場合は、日本法
- 1に該当せず、国籍を有する国のうち、常居所を有する国があるときはその国の法
- 1、2に該当しない場合は、当事者に最も密接な関係がある国の法
②当事者が国籍を有しない場合(同条第2項)
常居所地法
③当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合(同条第3項)
- その国の規則に従い指定される法
- 1の規則がない場合には、当事者に最も密接な関係がある地域の法
(2)アメリカは州ごとに法律が異なる
アメリカは、50の州に高い独立性が認められており、適用される法律も州によって異なります。
つまり、被相続人がアメリカ国籍のケースは、「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合」に該当します。
したがって、アメリカの連邦法上の準拠法決定ルールに従って定められる州法が、「本国法」として相続の準拠法となります。
アメリカの連邦法がどのように適用されるかについては、日本の弁護士を通じて、現地弁護士に確認するのがよいでしょう。
2. 不動産の相続には日本法が適用されることに注意
すでに解説したとおり、アメリカ国籍の方の相続には、原則としてアメリカの州法が適用されます。
しかし、相続財産中の不動産に限っては特別のルールが設けられており、結論としては、不動産の相続の準拠法は日本法となります。
(1)通則法の「反致」ルール
通則法第41条によれば、当事者の本国法に従うと日本法が準拠法になる場合には、準拠法を日本法と定めることになっています。
このルールを「反致」といいます。
(2)アメリカの国際私法では、不動産の相続は「所在地法」が準拠法
アメリカ国籍の被相続人の「本国法」に属する、アメリカの国際私法(Restatement of Conflict of Laws)第249条では、不動産の相続の準拠法は、不動産の所在地国の法律とする旨が定められています。
したがって、日本に所在する不動産の相続については、通則法の「反致」ルールにより、最終的に日本法が準拠法となるのです。
(3)相続登記も日本法に従って行われる
日本に所在する不動産を相続した場合、権利の移転を確実なものにするため、所有権移転登記(相続登記)の手続きをとることが必要です。
不動産登記は、常に日本の「不動産登記法」に従って行われます。
(なおこの点は、所有権移転の原因となった法律関係(相続・契約など)の準拠法がどの法律であるかとは関係がありません。)
以上をまとめると、アメリカ国籍の方が亡くなった場合における相続の準拠法は、以下のとおりです。
原則
アメリカの州法(連邦法の準拠法ルールにより決定)
例外
不動産の相続は日本法(登記も日本法)
外国人の方が亡くなった相続では、複数の国にまたがった法令リサーチなどが必要となる場合があります。
不備なく相続を完結させるためには、現地の法律事務所との連携が不可欠です。
国際相続を取り扱う日本の弁護士は、現地の法律事務所との連携を含めて適切に対応してくれますので、まずは一度弁護士に相談してみましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年07月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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