
- (更新:2024年11月08日)
- 家族・親子
精神的苦痛を理由に家族を訴えることはできる? 慰謝料請求の方法を解説
このコラムでわかること
- 精神的苦痛で慰謝料請求ができる理由
- 家族を訴えられる精神的苦痛の具体的なケース
- 精神的苦痛で家族を訴えるための手順
家族からモラハラやDVなどで精神的苦痛を受けた場合、身内のことだと内々に済ませがちです。しかし、精神的苦痛を証明できれば慰謝料を請求できる可能性があります。
本コラムでは、精神的苦痛により家族を訴えられるケースとはどのようなものか、また訴えるにあたって踏むべき手続きについても具体的に解説します。
1. 精神的苦痛で慰謝料請求は可能?
精神的なダメージは、肉体的な苦痛と違い目に見えにくく、具体的に被った損害を証明しにくいものです。しかし中には、慰謝料という形で損害賠償を請求できるケースがあります。
(1)精神的苦痛とはどのような状態を言うのか
精神的苦痛とは、肉体的な暴力を伴わず、言葉の暴力や無視、裏切りなどによって受けた精神的なダメージを指します。傷害のように受けた傷の度合いが第三者にわかりやすいものではありませんが、中には精神的苦痛によりうつ病を発症したり、トラウマに苦しんだりして、肉体的なけがより回復に長い時間を要する場合もあります。
(2)精神的苦痛=「不法行為」にあたる(慰謝料請求のための法的根拠)
精神的な苦痛により慰謝料を請求できる法的根拠としては、民法第709条の「不法行為」が挙げられます。
(不法行為による損害賠償)
出典:e-Gov法令検索「民法」
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
さらに続く民法第710条では、損害賠償を請求できる要件として、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合」と、財産以外の損害の賠償についても明記されています。
また、民法第415条の「債務不履行による損害賠償」にも、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」と定められています。
第709条のように財産以外の損害について明記はされてはいませんが、債務不履行により精神的苦痛を被った場合も慰謝料を請求できる場合があります。
2. 精神的苦痛で家族を訴えられるケース
家族から受ける精神的苦痛にもさまざまな種類があります。ここからは具体的に慰謝料請求が可能なケースについて、有効な証拠となりうるものと併せて解説します。慰謝料を請求できる相手方は、親や配偶者以外に、義両親も含まれます。
(1)モラハラ、言葉の暴力
大声で怒鳴って威圧する、行動を監視し自由を与えない、無視をする、大事にしているものを捨てるなどの行為はモラハラに該当します。また、人前でばかにしたり、「ばか」や「甲斐性なし」といった人格を否定したりするような言葉の暴力があった場合にも慰謝料を請求できる場合があります。
モラハラや暴言の証明には、録音や録画、精神科での診断書などが有効です。
(2)浮気・不倫
婚姻関係にある夫婦は、互いに配偶者以外の相手と肉体関係を持ってはいけないという貞操義務を負っています。浮気や不倫により精神的苦痛を与えられた場合、貞操義務に反しており、平穏な家庭生活を送る利益を侵害していることから、配偶者と、浮気・不倫相手に対し慰謝料を請求できます。
証拠となるのは、日付が入ったメールやLINEでのやり取り、通話履歴や通話記録、一緒にいる写真や動画などです。また、相手の詳しい言動がわかるメモを継続的にとっておくと、証拠として認められる場合があります。
(3)DV
DVというと配偶者や親による肉体的な暴力を想像される方も多いと思います。しかし先述したモラハラや言葉の暴力のほか、性行為の強要や避妊拒否といった性的暴力、生活費を渡さないなどの経済的暴力もDVに該当します。さらに、子供の前で配偶者を罵倒したり、暴力を振るったりする面前DVもあります。
DVの証明には、録音や録画、けがの診断書などが有効です。また、経済的DVの場合、通帳のコピーや家計簿を準備しておきましょう。
(4)過干渉など
そのほか、家族の問題として近年はいわゆる「毒親」による過干渉も問題となっています。過干渉だけで慰謝料を請求するのは難しいですが、暴言などにより精神的被害を受けたり、盗聴などがあったりする場合には、不法行為として慰謝料を請求できる場合もあります。
また、必要な食事を与えないといった育児放棄(ネグレクト)も「児童虐待防止法」に違反する行為であり、これによる精神的損害を慰謝料として請求できる場合があります。
これらの証拠となるのは、録音や録画、日時などが具体的に記された日記などです。
3. 精神的苦痛で家族を訴える方法
精神的苦痛により家族を訴えるための手順を、以下に詳しく紹介します。
(1)証拠収集
裁判も見据えた場合、精神的苦痛を受けたことを第三者にもわかってもらうため、証拠を集める必要があります。
先述した録音や録画、写真のほか、メールや通話履歴、通帳・家計簿のコピーやレシートなど、ケースに応じて証明に適した資料は異なります。いずれの資料でも、相手方や日時、場所などの情報が含まれていることで証拠としての価値が高まるため、収集する際には意識しておきましょう。
話し合いだけであれば、証拠が十分でなくても進めていくことは可能です。証拠がないからという理由で、あきらめる必要はありません。
(2)話し合い(内容証明郵便の送付)
慰謝料を請求する場合、まずは相手に対して、文書を送って、慰謝料を請求することが多いです。通常、弁護士から通知書の内容証明郵便を送付することによって行います。
内容証明は誰がどんな書類を送ったかを証明するもので、慰謝料の支払いを強制できるものではありません。しかし、これを送ることで法的手段に訴える心づもりがあることを相手に示せ、心理的プレッシャーを与えられます。また、裁判に発展した場合も、確かに慰謝料請求をしたことの証拠になります。
(3)調停
当事者同士の話し合いでまとまらない場合は、裁判所で調停の手続きをとることもできます。
調停とは裁判所の調停委員が当事者の間に入って話を聞き、裁判所から、慰謝料の額などについて妥当な案を提示することもある手続きです。これに互いが納得できれば、合意内容をまとめた調停証書を作成します。
(4)裁判
話し合いや調停では合意できなかった場合には、裁判を起こして慰謝料を請求します。
慰謝料請求の裁判を起こすには、訴状を裁判所に提出し、請求の根拠を立証するための証拠も提出します。また、裁判の過程で請求した慰謝料が、受けた精神的苦痛に見合うものであることを、裁判官が納得できるよう主張する必要もあります。
そうした手続きを行うには、法律の知識を持った専門家のサポートがあると安心です。
精神的苦痛で損害賠償請求を行う場合、情報収集や内容証明郵便の送付、裁判に発展すれば訴状や証拠書類の作成などを行う必要があり、法律の知識のない個人が対応するのは困難です。もしお困りの場合は、専門知識を持った弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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