モラハラを繰り返す兄弟と縁を切ることはできる? 対処法を解説

モラハラを繰り返す兄弟と縁を切ることはできる? 対処法を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

兄弟からモラハラを受け続けており、関係性を完全になくしたいという人は少なくありません。しかし、法的には兄弟の縁を切る方法がなく、絶縁状などで実質的な縁切りをすることになります。

この記事では、モラハラ兄弟と関わりたくないときの対処法を解説します。

1. 兄弟と縁を切ることはできる?

同じ親から生まれた兄弟や姉妹でも、仲が悪くなったり、金銭トラブルがあったりすると、兄弟と縁を切りたいと思うこともあるかもしれません。幼少時から繰り返されるモラハラも、その理由となり得ます。

しかし、法律的な観点から言えば、兄弟と縁を切ることは基本的にできません。法律上、兄弟関係の縁を切るという制度はなく、兄弟の関係は続くことになります。

親子関係については、特別養子縁組(民法817条の2第1項)という手続きがあり、実親との親子関係を例外的に終了させることができる場合があります。それに伴い、実親の兄弟との親族関係も終了します。しかし、これは兄弟の縁を切ることを目的とする手続きではありません。

「法的には無理でも、連絡を取らなければ事実上縁を切ったことになるのでは?」と思うかもしれませんが、そううまくはいきません。なぜなら、直系血族(父母・祖父母や子ども・孫)や兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があると民法877条1項で定められているからです。つまり、兄弟が自立できない状況だと、生活を援助する必要があるということです。

病気や障害、失業、貧困などで生活が困窮している兄弟がいる場合、その存在を無視することはできないため、完全に縁を切るのは不可能です。たとえば、兄弟が生活保護を申請した場合、兄弟に問い合わせが来る場合があります。

ただし、兄弟姉妹に対する扶養義務は、あくまでも経済的余力で対応できる範囲内になります。自身も就労不能や何らかの事情で経済的余裕がない場合、無理をしてまで扶養する必要はありません。扶養の具体的な方法について当事者間の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に申し立てて判断してもらうことも可能です。

2. 兄弟と関わりたくない場合の対処法は?

法的に兄弟と縁を切ることはできませんが、兄弟と関わりたくない場合に対処することはできます。状況に合う方法で兄弟との縁を事実上切れるよう対処しましょう。

(1)連絡を遮断する

電話を着信拒否にしたり、ブロックしたりして、兄弟からの連絡を受けないようにする方法です。より徹底する場合には、引っ越しや新しい携帯番号への移行などを検討しましょう。

また、可能な限り周囲の理解を得て、自分の居場所や連絡先が兄弟に伝わらないようにすることも大切です。第三者から連絡が伝わらないよう、協力してもらえるのであれば家族や親戚、さらに共通の友人などに根回しをして、自分に関する情報を秘密にしてもらうようにしましょう。

(2)絶縁状を送る

兄弟に対して、今後一切関わらない旨を書面で伝えるのも対処法のひとつです。絶縁状自体に法的な拘力はありませんが、相手に意思表示をすることでトラブルを防ぐ効果があります。

なお、絶縁状を書くときは、今度関わりを持たないことだけを簡潔に伝えましょう。積もり積もった感情から書きたいことも多々あるかもしれませんが、この際に感情的な表現を使うと脅迫罪に該当してしまう可能性があるので注意してください。

また、確実に相手方へ通知するためには、内容証明郵便を使うこともおすすめします。内容証明郵便は宛先人に郵便局職員が直接手渡しを行い、郵便内容を郵便局が証明するので、「絶縁する」という強い意志を相手に伝えることができます。

(3)不法行為があれば弁護士に相談する

兄弟から暴力やつきまといなどの不法行為を受けた場合は、弁護士への相談がおすすめです。必要に応じて損害賠償請求や差止請求などの法的手段を行えるだけでなく、第三者を間に挟むことで精神的に余裕を持てる効果も期待できます。

損害賠償請求を行う場合には、民事訴訟を経て裁判所に申し立て、つきまといや暴力などによって被った損害を相手へ支払うように求めることが可能です。

また、兄弟が不法行為を繰り返すおそれがある場合には、差止請求を行いその行為をやめさせるよう求めることができる可能性があります。差止請求も民事訴訟で裁判所に申し立てることができ、認められると相手は裁判所からの命令に従わなければなりません。命令に従わない場合には、強制執行などの措置が取られます。

また、兄弟からのモラハラに対する慰謝料請求も可能です。兄弟との会話の録音やメッセージのやり取り、カウンセリングや病院に通った履歴などがあれば、裁判で有効な証拠となります。

どのように請求を行っていけばよいのかわからない場合や対応に不安があるという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。法的な観点からアドバイスをもらうことができ、スムーズな解決が期待できます。

3. 兄弟と絶縁したいと考えた場合の注意点

連絡の遮断や絶縁状などで兄弟と事実上の縁切りができたとしても、これまで解説したように、完全につながりを絶てるわけではありません。兄弟ならではの注意点を把握し、自身が損をしないようにしましょう。

(1)親の相続は兄弟間での話し合いが必要

相続に関しては、たとえ絶縁状態であったとしても、共に遺産相続を進めなければなりません。先述の通り、兄弟関係を法的に解消する方法はないため、仮に絶縁状態でも相続人の立場はそのままの状態です。

たとえば親が死亡した場合、相続人全員で遺産分割協議が必要ですが、このとき、連絡が取れない兄弟がいると、話し合いができなくなります。行方不明なら「不在者財産管理人」や「失踪宣告」などの方法で協議を進められますが、連絡を無視されているだけだと、調停や審判といった裁判所での手続きを申し立てなければいけません。

また、連絡が取れて話し合いができた場合でも、真っ向から対立すると、やはり調停・審判が必要です。裁判での手続きは時間や費用のコストがかかるので、スムーズに遺産分割ができるよう、相続に関する話し合いには応じられるようにしておくことをおすすめします。

(2)兄弟が借金を残して亡くなった場合はどうなる?

親ではなく、兄弟が亡くなった場合にも注意が必要です。兄弟に子どもがおらず、父母・祖父母も亡くなっている場合、兄弟に相続権が回ってきます。

プラスの財産があれば経済的なメリットになりますが、借金やローンなどのマイナスの財産があると、それらも引き継ぐことになるので注意が必要です。マイナスの財産を相続したくない場合は、相続権そのものを放棄する「相続放棄」や、プラスの財産の限度でマイナスの財産も相続する「限定承認」を行いましょう。

兄弟と縁を切りたい場合にはスムーズな解決を目指すためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年09月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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