- (更新:2023年05月26日)
- 離婚・男女問題
退職金は離婚時の財産分与の対象になる? 分割割合や計算方法を解説
日本では高齢化社会の進展や価値観の多様化などによって、熟年離婚も珍しいことではなくなっています。高齢で離婚するときには、財産分与や年金分割などで老後の資金をどれぐらい確保できるかどうかが、非常に重要な問題となります。
特に相手に退職金が支給されるときには、退職金が財産分与に含まれるか否かによって、確保できる老後の資金には大きな差が生じてくるのです。
このコラムでは、退職金が財産分与の対象になるケースと分割割合や計算方法について紹介します。
1. 退職金が財産分与の対象になるケースとは?
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を離婚時に分け合うことを意味します。退職金も財産分与の対象に含められる場合があります。
「退職金=給与の後払い」という性質があるため、給与からの貯金が財産分与の対象となるように、退職金も場合によっては対象となります。まだ退職金が支給される前の段階の場合はまた別の問題があり、特に支給されるのが相当先である場合は対象にならないこともありますので注意しましょう。
なお、退職金は、法律によって支給が義務づけられているものではありません。したがって、会社の就業規則や雇用契約などで退職金に関する定めが設けられていることが、財産分与を行ううえでの前提となります。
(1)すでに退職金が支給されているケース
定年退職しており、すでに退職金が支給されている場合には財産分与の対象になります。前記した通り、退職金は給与の後払いという性質があるため、婚姻関係にある間に支払われた退職金の相当部分は「夫婦の共有財産」とみなされることが多いです。
(2)退職金の支給がほぼ確実なケース
退職を迎えていなくても、将来的に退職金の支給がほぼ確実に見込めるケースでは、財産分与の対象になるとされています。たとえば、近々支給されることが決まっていて具体的な金額も決まっている場合には、財産分与の対象になる見込みが高いといえるでしょう。また、数年先に定年退職を迎える場合でも、対象になる可能性があります。
一方で、退職金の支給が明確に見込めない場合には、対象にならない可能性もありますので弁護士にご相談ください。たとえば、退職が10年以上先であるとか、会社の状況が不安定で退職金の支給が明確に見込めない場合などです。
退職まで時間があるとしても、公務員や倒産の可能性がきわめて低い大企業などで働く会社員であれば、退職金の支給がほぼ確実と評価され、財産分与の対象になることもあり得ます。
2. 退職金の分割割合や計算方法は?
離婚時の財産分与における、退職金の分割割合や計算方法について説明します。
(1)退職金の分与の割合
財産分与の割合は、特別な事情がなければ、基本的にそれぞれ2分の1ずつ分け合います。これを「2分の1ルール」と呼びます。
しかし、退職金の財産分与の割合については、単純に退職金を半分ずつにすることにはなりません。なぜなら財産分与の対象になる退職金は、「婚姻期間中のもの」に限られるためです。
たとえば30年勤務して支給された退職金がある場合に、その30年のうち独身時代が10年、婚姻期間が20年であったとします。この場合、婚姻期間の20年分の退職金だけが財産分与の対象となるのです。
(2)すでに退職金が支給されているときの計算方法
すでに退職金が支給されており、使用されずに残っているときには、財産分与の対象になる退職金額は「退職金総額×勤続期間中の婚姻期間÷勤続期間」として計算することができます。そして、計算によって算出された退職金額について、基本的には2分の1ずつ分けることになります。
ただし、計算式の「婚姻期間」とは、夫婦が同居している期間に限られます。別居期間に築いた財産は、夫婦で協力して築いたものとはいえないためです。
(3)将来の退職金が財産分与の対象になるときの計算方法
退職金の支給がほぼ確実であっても、具体的な支給額が決まっていない場合には、財産分与の対象金額を明確に計算することは難しくなります。
代表的な計算方法として、「離婚時に(自己都合)退職したと考えたときの退職金額」もしくは「退職予定(定年退職)時に支給される退職金額」を基準とする方法があります。
「離婚時に退職したと考えたときの退職金額」は、別居した時点、別居しなかった場合は離婚した時点で自己都合退職したものとして、会社の就業規則などから計算することができます。そして計算した金額に、勤続期間中の婚姻期間÷勤続期間を乗じることによって財産分与の対象額が分かるのです。
財産分与に含まれる退職金額は下記のとおりに計算できます(前述のとおり、「婚姻期間」は夫婦の同居期間に限られ、別居期間を含みません)。
退職金額×勤続期間中の婚姻期間÷勤続期間=財産分与の対象となる退職金額
この場合の別居とは、いわゆる夫婦関係の悪化による別居を指します。会社命令の単身赴任などはこのケースの別居期間には含まれない可能性が高いでしょう。
一方で、「退職予定時に支給される退職金額」として対象額を計算するときには、算出した金額に勤続期間中の婚姻期間÷勤続期間を乗じるだけでなく、「中間利息」を差し引く必要があります。
「中間利息」とは、簡単にいえば、将来の退職金に相当する金額を早く受け取った分だけ発生する利息となります。
(4)夫婦の「寄与度」で分割割合を調整する
財産分与の対象となる退職金額がわかったら、その額から夫婦それぞれの取り分を決めましょう。
財産分与割合は原則として2分の1で分割しますが、話し合いで割合を決定する際にはお互いの貢献度「寄与度」によって分割金額を決める場合もあります。
分割割合の合意は公正証書にまとめることが大切ですが、財産分与が取り決め通りに果たされないことがないようにするためには、弁護士などの専門家に依頼し公正証書を作成することをおすすめします。
(5)分割割合や計算で合意できないときには
退職金は大きな金額になることも多いため、分割割合や計算方法で当事者同士が合意できないこともあります。また、将来支給予定の退職金が財産分与の対象になるときには、計算が複雑で算出しにくいといった問題が生じることもあるのです。
そういったケースでは、弁護士に相談したり、家庭裁判所の調停を申し立てたりして、解決を図ることが選択肢になります。
離婚問題は、退職金に限らず、慰謝料の請求や年金分割制度など知っておきたいお金の問題があります。後から「知っておけば違った対応ができたのに」などと思うことがないように、できるだけ情報収集して専門家などへの相談も検討することが大切です。
- こちらに掲載されている情報は、2023年05月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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