二世帯住宅は離婚時の財産分与に含まれる?

二世帯住宅は離婚時の財産分与に含まれる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚する際は、家などの不動産も財産分与を行います。しかし二世帯住宅の場合、必ずしも財産分与の対象になるわけではありません。

本コラムでは、どのようなケースで二世帯住宅の財産分与が可能になるか、財産を分ける方法、二世帯住宅に夫婦どちらかが住み続ける場合の注意点を解説します。

1. 二世帯住宅は、離婚した際の財産分与の対象になるのか

二世帯住宅が財産分与の対象となる条件は、その土地の所有権や取得した時期によって変わります。

(1)土地・建物がともに親名義の場合

二世帯住宅が財産分与の対象になるのは、夫婦が婚姻中に取得した土地・建物であることが原則です。親名義となっている場合には、財産分与の対象になりません。

(2)自分または配偶者が所有している場合

婚姻中に二世帯住宅を取得した際は、夫婦どちらの名義であっても原則共有財産とみなされます。このようなケースでは、財産分与の対象に含まれることになっています。ただし、購入する際に親から資金援助があった場合、財産分与の対象となるのは援助分を差し引いた額です。

(3)親と共有している場合

二世帯住宅を親との共同名義としている場合、財産分与の対象となるのは夫または妻の持ち分のみです。たとえば、土地と建物で7000万円の二世帯住宅を親と共同名義で所有していて、持ち分が2分の1ずつとなっている場合、財産分与の対象は3500万円と算出されます。そこからさらに夫婦で2分割にするため、配偶者が分与される財産は1750万円です。

(4)自分または配偶者が婚姻前に取得した場合

婚姻前に取得し、住宅ローンなども払い終わっている二世帯住宅は、夫婦共有財産に該当しません。そのため、財産分与の対象外になります。

(5)二世帯同居中に相続して所有権を取得した場合

もともと土地・建物とも親名義となっている二世帯住宅に住んでいて、親の死亡により子が相続した場合、夫婦の共有財産とはみなされません。相続人が単独で所有する特有財産となります。ただし、相続してから長い期間、修繕にかかる費用などを一緒に負担してきた場合、夫婦の共有財産とみなされることもあります。

(6)住宅ローンの残高に注意

財産分与を行うときに住宅ローンが残っている場合、アンダーローンもしくはオーバーローンの状況により、財産分与できるかどうかが判断されます。

住宅の評価額がローン残高を上回るアンダーローンの場合、住宅の評価額からローン残高を差し引いた額が財産分与の対象です。一方、住宅の評価額がローン残高を下回る際は、分与できる財産がないため対象になりません。

2. 二世帯住宅を財産分与する方法

アンダーローンを前提としたとき、二世帯住宅を財産分与する方法は2つあります。

(1)換価分割

住宅を売却し、住宅ローンを差し引いて残った額を夫婦で分ける方法です。子育てをサポートしてもらうために同居していた場合、離婚して妻子が出ていくと二世帯住宅が不要となるケースもあります。この場合、不動産を売却した代金で財産を分ける換価分割を適用する事例が多くなっています。

なお、親が高齢で同居を必要とする場合には、いったん家を売却して買い主と賃貸借契約を結ぶ「リースバック」を利用するのもひとつの方法です。

(2)代償分割

住宅を売却せず、実子が二世帯住宅で親と同居を続け、離婚した配偶者に分与する財産は金銭で支払う方法です。リースバックは、長期間利用すると金銭の負担が重くなるため、親が高齢でなければ代償分割で同居を続けた方が合理的と考えられます。

(3)代償金が支払えない場合

二世帯住宅の物件は高額になりやすいため、代償金の支払いが困難になるケースもあります。その場合、配偶者に対して減額や分割払いを交渉することも可能です。財産分与額の割合に関しては法律で定められていないため、相手側の合意があれば必ずしも2分の1とする必要はありません。

また土地や建物の評価額は、評価方法によって大きく変わることも珍しくありません。固定資産税や公示地価、鑑定、不動産業者の査定など、不動産の価値を評価する方法はさまざまです。評価額に納得できない場合、評価方法を再考することも検討してみましょう。

3. 離婚後も二世帯住宅に住み続ける場合の注意点

離婚後も夫婦のどちらかが二世帯住宅に居住し続ける場合、財産分与をうやむやにすることは避けるようにしましょう。

(1)公正証書を作成しておく

すぐに家を売却しない場合は、二世帯住宅を含めた財産分与や、その他の離婚に関する合意内容をまとめた離婚公正証書を作成しておくと安心です。公正証書は公証役場で原本を保管するため、紛失や改ざんの可能性は極めて少なく、相手が財産分与に応じないときの強制執行にも効力を発揮します。

(2)家の権利関係を確認しておく

住宅の居住や売買、収益化には、それぞれに定められている権利が必要です。住宅に関する権利のポイントも押さえておきましょう。

①所有権

家を所有している人が持つ権利です。家の使用や処分、収益化について全面的な権限を持ちます。

②共有持分権

家の使用や処分、収益化の権利を他の人と共有するパターンがこれに該当します。家は自由に使用できますが、家全体の売却や人に貸す際は共有者の合意が必要です。

③賃借権

家の持ち主に賃料を支払った上で、家を使用したり人に貸したりできる権利です。

④使用借権

持ち主の許可を得て家を使用するほか、収益化することも可能な権利を指します。賃料はかかりませんが、持ち主の意向次第で家から追い出されてしまうリスクがあります。

以上のうち、自分にどのような権利があるのか明確にしておくことが大切です。売却や収益化する際は、誰の合意や許可が必要なのかを正しく把握することで、のちに起こりうるトラブルを回避しやすくなります。

(3)住宅ローンの債務者変更について確認しておく

夫名義で購入した二世帯住宅に妻が住み続ける場合は、通常は離婚時に住宅の名義変更を行わなければなりません。それに従い、住宅ローンが残っていれば、債務者の変更手続きも必要です。なお、債務者変更にあたっては金融機関の再審査があります。そのため、新債務者となる人が審査に通る条件を満たしているかどうか、前もって金融機関へ確認しておくと安心です。

4. 二世帯住宅の財産分与は弁護士のサポートがあると安心

離婚における財産分与の中で、二世帯住宅は一般の住宅よりも権利関係が複雑になりがちです。スムーズな解決を目指すのであれば、早めに専門家へ相談してみましょう。

権利関係の確認から公正証書の作成、財産分与まで、不慣れな手続きを必要とする財産分与に不安を感じる方は少なくありません。法律に詳しい弁護士に相談すれば、適切なアドバイスやサポートが受けられます。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年03月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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