薬物初犯は懲役何年? 執行猶予がつく可能性は
違法な薬物を所持・使用して逮捕された場合、初犯であっても実刑判決が下され、刑務所に収容される可能性があります。
本コラムでは、薬物事件の初犯でどの程度の量刑となるのか、執行猶予はつくのか、というトピックについて解説します。逮捕後の流れと弁護士によるサポートの内容にも触れますので、参考にしてください。
1. 薬物初犯の量刑相場
(1)法律で禁じられる行為
薬物を取り締まる法律のうち、覚せい剤取締法・大麻取締法・あへん法・麻薬及び向精神薬取締法をまとめて「薬物四法」と呼びます。これらで禁じられる主な行為は以下のとおりです。
- 輸入出
- 製造
- 栽培
- 譲渡
- 譲受
- 所持
- 使用
(2)初犯の量刑相場
薬物犯罪の初犯の量刑は、使用状況や情状酌量の余地といったさまざまな要素を踏まえて判断されます。そのため、以下はあくまでも目安にすぎない点に注意してください。
①覚せい剤取締法
懲役1年6か月、執行猶予3年ほど
②大麻取締法
- 所持や譲渡、譲受の場合:懲役6か月~1年、執行猶予3年ほど
- 栽培の場合:懲役1年6か月~2年、執行猶予3~4年ほど
- 営利を目的とする輸入出の場合:懲役3年以上、罰金150万円以下
③麻薬及び向精神薬取締法
- 少量所持の場合:懲役1年6か月、執行猶予3年ほど
- 大量所持の場合:実刑の可能性あり
④毒物及び劇物取締法
懲役6か月~1年、執行猶予3年ほど
⑤医薬品医療機器等法(薬機法)
危険ドラッグなどの所持・購入・譲受・譲渡・使用:懲役6か月~1年、執行猶予3年ほど
(3)量刑の判断基準
量刑は裁判官が専門的な判断によって決めますが、判断を左右する主な要素とされている要素は、以下のとおりです。
- 薬物の所持量:大量に所持しているほど刑は重くなる場合が多い
- 使用期間:長く使用しているほど刑は重くなる傾向にある
- 使用頻度:頻繁に使用しているほど刑は重くなる場合が多い
- 目的:自己所有目的に比べ、営利目的は公序良俗という法益を大きく侵害するので、刑は重くなる
- 再犯の可能性:再び罪を犯す可能性が高いと判断されれば刑が重くなる
- 更生の可能性:立ち直る可能性が低いと判断されれば刑が重くなる
一方で、「薬物の所持量が少ない」「使用は1度きりだった」「売人と密接な関係があるわけではない」「更生に向けて家族などの支えがある」などのケースでは量刑が軽くなる傾向にあると考えられます。
2. 薬物初犯であれば執行猶予がつくのか?
(1)執行猶予がつく可能性は高い
量刑の判断にあたっては、使用期間や頻度、再犯・更生の可能性が考慮されることからも、初犯では刑罰が軽くなる傾向にあります。初犯であれば薬物の使用期間も短く、頻度も少ないことが一般的であり、かつ繰り返し逮捕された人間よりは薬物と縁を切って立ち直れる可能性が高いと考えられるためです。したがって、初犯では執行猶予がつく可能性が高いといえます。
(2)実刑の可能性がある場合とは
ただし、薬物の大量所持や営利を目的とした仕入れで捕まった場合、この限りではありません。広く流通させることへの意思が強く推認されるため、悪質性が高いと判断されるからです。このような場合には、初犯であったとしても執行猶予がつかずいきなり実刑となる可能性も否定できません。
なお、執行猶予はあくまでも刑務所へ収容されない(刑の執行がいったん猶予される)だけのことであり、無罪を意味するものではありません。執行猶予であっても前科がつくことに注意しましょう。
3. 薬物初犯の逮捕の流れ
(1)逮捕に至るパターン
薬物に関する犯罪で逮捕されるパターンには、職務質問や家宅捜索からの逮捕、知り合いが逮捕されたことによる芋づる式逮捕などがあります。
とりわけ単純所持の場合、逮捕されるきっかけとしては職務質問が多いとされています。不審な挙動を目撃した警察官や一般人からの通報によって職務質問や薬物検査が行われ、陽性反応が出た場合には現行犯逮捕されるという流れです。
(2)逮捕後の流れ
逮捕されてからは、以下の流れをたどります。
- 警察:事件と被疑者の身柄を48時間以内に検察庁へ送致
- 検察:勾留するべきかを24時間以内に判断し、勾留が必要とされた場合は裁判所に勾留請求
- 裁判所が勾留を許可した場合:被疑者は原則として10日間の勾留(裁判所が認めた場合、最長10日間の勾留延長が可能)
- 検察が不起訴と判断した場合:身柄釈放
- 検察が起訴の判断をした場合:保釈されない限り身柄拘束が継続
- 有罪となった場合:執行猶予がつかなければ収監される可能性あり
それぞれの場面では、弁護士によるサポートを受けることで早期釈放や刑の減軽につながる可能性があります。
(3)薬物事件において弁護士ができること
まず、単に運び屋として利用された場合など、本人が薬物を所持している認識がないケースでは、知らなかったことを理由として無罪であるとの主張を行うことになります。
次に、薬物を所持・使用している認識があるケースでは、逮捕や検査の手続きに違法性がなかったかどうかを調べ、場合によっては不起訴処分や無罪判決を求めます。
捜査機関の手続きに違法性が見られないケースでは、初犯であることの主張をはじめとして、情状弁護を行うのが基本です。「先輩に押し付けられて断れなかった」「仲間に誘われてやむを得ず使用したが、乗り気ではなかった」など、悪質性が低いと判断されそうな事情を捜査機関や裁判官に伝えます。
基本的には身柄の早期解放を求めていくことになります。逮捕時点では釈放を、勾留されてからは保釈を請求する流れです。これらと並行して、本人には取り調べに関するアドバイスを行います。
薬物事件では、窃盗や傷害のように被害者は存在しないため、示談による不起訴処分などの早期解決は見込めません。しかし、身柄の解放や執行猶予を含む刑罰の減軽を目指すのであれば、弁護士が提供するサポートは非常に重要です。
薬物事件では、初犯であれば執行猶予がつく可能性もあります。早期での釈放や刑罰の減軽を目指す場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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