放火の罪は重い? 放火により適用される罪と刑罰を解説
「放火罪」とひとくくりに語られがちですが、刑法で放火罪は細かな分類がされており、刑罰の重さもそれぞれ異なります。
本コラムでは、家族が放火の罪で逮捕されてしまった方に向け、放火罪の種類やそれぞれの刑罰、ケースごとの罪の適用例、執行猶予の可能性などを解説します。
1. 放火の罪は重い
放火は、瞬く間に延焼し、不特定多数の生命や財産に損害を与えるおそれのある、極めて凶悪な犯罪です。その重大性に鑑み、法定刑として死刑を含む非常に厳しい罰が定められています。ただし、一口に放火と言っても、法律で実際に定められた罪は事件の性質に応じてさまざまです。
放火に関連する罪と刑罰の具体例としては以下が挙げられます。
(1)現住建造物等放火罪
人が居住する建造物または人がいる建造物に放火する罪を指します。刑罰は、死刑、無期または5年以上の懲役と非常に重いです。なお、ここでいう「建造物」には住宅などの建物だけでなく、電車や船、鉱坑(こうこう)なども含みます。
(2)非現住建造物等放火罪
人が居住していない、または人がいない建造物、艦船、鉱坑への放火行為に適用される罪です。法定刑は2年以上の懲役です。建造物等が自己所有のものだった場合は6か月以上7年以下の懲役と引き下げられます。また、公共の危険を生じなかったときは処罰されません。
(3)建造物等以外放火罪
上記の「建造物等」以外の物へ放火し、公共に危険を与える行為に適用される罪です。刑罰は、1年以上10年以下の懲役刑が科されます。放火した対象が自己所有のものだった場合の刑罰は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
(4)延焼罪
自己が所有する非現住建造物等または自己が所有する建造物等以外への放火が原因で、現住建造物等または他人が所有する非現住建造物等に延焼させた場合に成立する罪です。3か月以上10年以下の懲役が科されます。
また、自己が所有する建造物等以外の放火が原因で他人が所有する建造物等以外に延焼させた場合の刑罰は、3年以下の懲役です。
(5)消火妨害罪
火災発生時に消火活動を妨害した場合に適用される罪です。直接的に消火活動の邪魔をするだけでなく、消火用の物品を壊したり隠したりした場合も該当します。1年以上10年以下の懲役が罰則です。
(6)殺人罪
殺人を目的に放火行為をし、実際に人を死に至らしめた場合、現住建造物等放火罪と殺人罪の両罪が成立します。このようにひとつの行為が複数の罪にあたることを「観念的競合」といい、もっとも重い刑により処断されます。
現住建造物等放火罪と殺人罪の刑罰はいずれも死刑または無期もしくは5年以上の懲役なので同じ刑が適用されますが、各罪のみを犯した場合と比べて実際に言い渡される量刑は厳しくなると考えられます。
出典:刑法108~114条、199条2. 放火により該当する可能性のある罪
上記のように、放火に対する罪はさまざまですが、目的別や状況別に見た場合、どのような罪が該当する可能性があるのでしょうか。以下では、それぞれのケースについて解説します。
(1)殺人目的で放火したケース
故意に人を殺害する目的で放火した場合、先述のとおり適用されるのは現住建造物等放火罪と殺人罪(または殺人未遂罪)です。なお、殺人罪と殺人未遂の刑罰は同じなので、仮に人が亡くなっていなくても厳罰は免れません。
(2)殺人後、証拠隠滅目的で放火したケース
この場合は、殺人をした上で証拠隠滅のために放火をしているため、殺人罪と現住建造物等放火罪がそれぞれ別個に成立します。
両罪は併合罪の関係にあたり、有期懲役に処するときの刑は罪が重いほうの刑期の1.5倍となります。つまりこのケースで有期懲役になる場合、刑期の上限は7年6か月です(5年×1.5倍)。ただしどちらかの罪について死刑または無期懲役に処するときはほかの刑を科されません。
(3)人がいないと思って放火したものの人がいたケース
このケースだと、加害者の認識が重大な争点です。たとえば、「現在も居住中の家屋ではあるが、家人は留守中である」という認識だった場合は、現住建造物等放火罪が該当します。他方で、「ここは廃屋だ(誰も住んでいない家屋で、今も人がいない)」という認識だった場合、適用されるのは非現住建造物等放火罪です。
ただし、「本当に廃屋だと思い込んでいたのか」「人がいる可能性をまったく考慮しなかったのか」は、取り調べや裁判で厳しく追及されることになります。
(4)自殺目的で自宅に放火したケース
この場合、加害者以外にも人が住んでいたかどうかが争点のひとつです。家族が一緒に住んでいた場合、あるいは自宅が集合住宅だった場合は、現住建造物等放火罪とみなされる可能性が高いです。
他方で、戸建ての一人暮らしの場合、放火犯以外には人がいない状況なので、非現住建造物等放火罪となります。
なお、加害者が放火時に心神喪失・耗弱であったと判断された場合は、無罪または罪が軽くなること(減軽)もあります。
3. 放火事件を起こしたら弁護士に相談を
放火は極めて重大な犯罪なので、行為が事実であれば捜査機関による厳しい追及と厳罰は免れません。特に現住建造物等放火罪は刑の下限が懲役5年なので、「3年以下の懲役・禁錮の言い渡しを受けたとき」という執行猶予の条件を満たさず、実刑が予想されます。
ただし、「自首をした」「犯行を自分の意思によって途中でやめた」など、特定の事由や情状酌量の余地があれば、刑が減軽されて懲役3年以下になり、執行猶予を受けられる可能性も出てきます。また、ほかの放火の罪についても、事案によっては被害者への真摯(しんし)な謝罪や示談によって早期の身柄釈放や不起訴処分につながる場合があります。
こうした刑罰の減軽や執行猶予の獲得、早期釈放や不起訴処分などの望ましい結果を得るには、弁護士への相談が欠かせません。弁護士は、逮捕後の刑事手続きに関するアドバイスや被害者との示談交渉の代行、裁判を有利に進めるための証拠収集や法廷弁護など、さまざまな面から被疑者とその家族をサポートします。
放火罪は、事案によっては死刑さえもありうる重い罪です。少しでも刑を軽くするためには、刑事裁判の解決実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2024年09月30日
- 犯罪・刑事事件
-
- 2024年09月10日
- 犯罪・刑事事件
-
- 2024年08月03日
- 犯罪・刑事事件
犯罪・刑事事件に強い弁護士
-
電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00
-
電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00
-
電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00
-
電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00
-
電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00