ストーカーで起訴されたら? 実刑判決を避けるには
ニュースで見かけるストーカー事件の報道では、犯人に「実刑判決」が言い渡されているものが多くあります。
ストーカー規制法が制定されるきっかけとなった、いわゆる桶川ストーカー殺人事件でも、主犯格をはじめ実行犯など事件に関与した容疑者はすべて懲役の実刑判決が言い渡されました。
近年のストーカー事件でも実刑判決を受けた事例が数多く報じられているので、いまストーカー容疑をかけられている方の中には「自分も起訴されて実刑判決を受けるのではないか?」と強い不安を感じている方もいるでしょう。
ストーカー容疑で実刑判決を避けるためにはどうすればよいのでしょうか?
1. ストーカー行為とは?
一般的には「特定の相手をつけまわすこと」をストーカーと呼びますが、法律に照らすとその解釈には少し誤解があります。
ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)が規制対象としているのは、恋愛感情やそのほかの好意の感情、またはこれらが満たされなかったことで怨恨(えんこん)を抱き、特定の相手やその家族などに対して、次の3つの行為をはたらくことに限定しています。
- つきまとい等
- 位置情報無承諾取得等
- ストーカー行為
それぞれの行為を詳しくみていきましょう。
(1)「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」
ストーカー規制法第2条には「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」が定義されています。
つきまとい等とは、次の8つの行為です。
- 相手の通勤・通学経路などにおける待ち伏せや相手の自宅付近をうろつく行為
- 拒否されているのに面会・交際・復縁を求める行為
- 拒否されているのに電話・メール送信・SNSのメッセージ送信などを繰り返す行為
- 相手の名誉を害する内容の文章などを広める行為
- 相手の帰宅を見計らって「おかえり」というメッセージを送るなど、監視を思わせる行為
- 大声で罵声を浴びせるなど、著しく粗野・乱暴な行為
- 汚物や動物の死骸など、不快・嫌悪を催させる物を自宅などに送りつける行為
- わいせつな写真や画像を送りつけたりネットで掲載したりする行為
従来はこれら8つの行為が規制対象でしたが、令和3年6月から新たに「位置情報無承諾取得等」も規制対象に加えられました。
- GPSなどを用いたアプリを利用して相手の位置情報を取得する行為
- 相手の車などの所有物に無断でGPS機器などを取り付ける行為
一般的なイメージでは、これらの行為が「ストーカー行為」だと理解している方も多いでしょう。しかし、これらの行為がただちにストーカー行為になるわけではありません。
(2)つきまとい行為などを繰り返すと「ストーカー行為」
ストーカー規制法第2条4項によると、ストーカー行為とは、同一の者に対してつきまとい等や位置情報無承諾取得等を反復しておこなうことと定義されています。
たとえば、元交際相手に復縁を求めたメッセージを一度限りで送信しても、ストーカー規制法にはあたりません。
ただし、メッセージの送信は一度きりでも、待ち伏せや名誉を毀損したり、嫌がらせ行為をしたりするなど、複数の行為が別々の機会において繰り返された場合は「反復」と評価され、ストーカー行為になります。
2. ストーカーで問われる罪と罰則
ストーカー規制法によって規制されている行為をはたらくと、どんな罪になり、どのような刑罰が科せられるのでしょうか?
(1)つきまとい行為自体には罰則が設けられていない
「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」は、ストーカー規制法による規制対象となる行為ですが、それ自体には罰則が設けられていません。
ただし、警察からの警告や公安委員会からの禁止命令の対象となります。
被害者が望めば、警察署に呼び出されて取り調べを受けたうえで、厳しく注意され、警告などを受けることになるでしょう。
この禁止命令に違反する場合や状況の改善が見られない場合には、逮捕される可能性があります。
「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」自体は罰則が設けられておらず、上述したように1回の行為によってはストーカー規制法に抵触しないものもありますが、他方、義務のないことを求めれば刑法の強要罪、危害を加える旨を告げれば脅迫罪、暴力を加えれば暴行罪や傷害罪の処罰対象となります。
「一度限りなら合法」というわけではないので誤解してはいけません。
(2)ストーカー行為に対する罰則
ストーカー行為には、ストーカー規制法第18条にもとづき、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
被害者が警察に相談した段階ですでに反復したストーカー行為がある場合は、被害者の意向次第でただちに事件化されてしまうかもしれません。
また、事前に公安委員会からの禁止命令を受けたうえでさらに禁止対象になっているストーカー行為をはたらくと「禁止命令違反」となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
禁止命令を受けたあとで、禁止されていないつきまとい等や位置情報無承諾取得等をはたらいた場合も6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
3. 実刑判決は避けたい! どう対応すればいい?
ストーカー行為などが刑事事件に発展した場合は、過去に悲惨な事件へとつながったケースも多いため、検察官が起訴に踏み切る可能性が高いでしょう。
懲役の実刑判決を受けてしまうと長期にわたって刑務所に収監されてしまうので、実刑を避けるための対応を尽くさなくてはなりません。
(1)真摯(しんし)な反省を示す
裁判官が実際の刑罰を考えるときは「再び罪を犯す可能性はあるのか?」という点が重視されます。自分が犯した罪の重さを自覚したうえで、真摯に反省を尽くせば、再犯の危険は低いと評価される可能性が高まるでしょう。
実刑を避けたいと望むなら、今後も被害者に接触を図る可能性を示唆したり、相手の落ち度を指摘する発言をしたりといった対応は控えるべきです。
(2)被害者との示談交渉を尽くす
実刑判決を避けるためにもっとも有効な対応が、被害者との示談交渉です。被害者に謝罪したうえで慰謝料などを含めた示談金を支払い、和解に至れば、たとえ有罪であっても裁判官が判決に執行猶予を付したり、罰金で済ませられたりする可能性が高まるでしょう。
もし事件が発覚して早いタイミングで示談交渉を尽くせば、不起訴処分となって刑事裁判に発展する事態も回避できるかもしれません。
ただし、ストーカー被害者との示談交渉を加害者やその関係者が進めるのは困難です。円滑な示談成立を実現したいなら、弁護士に対応を一任したほうが安全でしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年03月29日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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