育休は入社1年未満で取得できない? 取得の条件とは
育休は入社1年未満でも取得できるのか、多くの方が疑問・不安に思っていることでしょう。
本記事では、産休や育休の定義をはじめ、転職直後の育休の取得や相談できる機関について解説します。正しい育休の情報や仕組みを理解して、問題解決に役立てましょう。
1. 産休・育休とは
(1)産休とは
「産休(産前・産後休業)」とは、母体保護を目的とした、女性労働者のみに認められた休業制度です。労働基準法第65条では、産前6週間と産後8週間の休業に関して定められています。
産前休業は女性労働者の申請に基づいて認められますが、産後休業は女性労働者の申請の有無に関係なく、就業させてはならないとされています。ただし、産後6週間を過ぎた女性労働者が申請し、かつ支障がないと医師が認めた場合は就業可能です。
産休における勤続年数の記載はないので、入社1年未満でも取得できます。
(2)育休とは
「育休(育児休業)」とは、育児と仕事の両立支援を目的とした、育児・介護休業法により定められた制度です。勤務先の就業規則に育休に関する規定がない場合でも、女性労働者・男性労働者ともに取得可能です。
原則1歳未満の子どもを養育するために認められますが、希望しても保育所に入所できない場合や、1歳を超えても育休が必要と認められる場合などは、最長2歳まで延長できます。
(3)社会保険が免除される
手続きを行うことで、産休・育休期間は社会保険(健康保険、厚生年金保険など)の支払いが免除されます。労働者側だけではなく、企業側も対象です。
産休とは、産前42日(多胎妊娠の場合には98日)と産後56日のうち、妊娠または出産を理由に勤務していなかった期間を指しますが、社会保険料の免除が始まるのは、産休の開始月からです。免除が終わるのは、産休終了予定日の翌日の属する月の前月までとなっています。育休の場合も一定の条件を満たせば、産休と同様に労働者・企業の支払いが免除されます。
2. 転職直後に育休は取得できる?
入社1年未満で、育休の取得に必要な要件を押さえましょう。
(1)入社1年未満でも育休は原則取得可能
入社1年未満でも育休の取得は可能ですが、無期雇用か有期雇用かによって要件が異なります。無期雇用(雇用期間に期限がない雇用)の場合、企業側は基本的に労働者からの育休の申請を断れません。有期雇用(雇用期間に期限がある雇用)の場合、申請する時点において、以下の要件を満たせば育休を取得できます。
- 子が1歳6か月に達する日までに契約が満了することが明らかでない
育児・介護休業法の改正前は、「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件もあったため、入社1年未満の場合の育休は取得できませんでした。令和4年4月1日の改正により、この要件が撤廃され、契約状況に応じて入社1年未満でも育休を取得できるようになっています。
(参考:「育児休業や介護休業をすることができる有期雇用労働者について」(厚生労働省))
(2)対象外になるケースに注意
入社1年未満の育休取得には例外があります。それは、労働者と企業(雇用主)間で交わす労使協定において、入社1年未満の場合は育休対象外であると定めている場合です。
この規定がある場合、企業は労働者からの育休の申請を拒否できます。ただし、労使協定を交わした場合でも、企業側が認めた場合は育休の取得が可能です。
(3)育児・介護休業法の改正で男性の育休取得が促進
育児・介護休業法の改正により、「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設され、育休の分割取得が可能になりました。産後パパ育休は、子の出生から8週間以内に、最大4週間(28日)を2回に分けて休業を取得できる制度で、育休とは別に取得可能です。
制度の目的は男性の育休取得促進であり、この制度の創設によって仕事と育児を両立しやすくなりました。
3. 入社1年未満で育休が取得できない場合の扱いは?
入社1年未満で育休を取得できない場合は、申請する時期の調節や会社への交渉、給付制度の利用を検討しましょう。
(1)入社1年以上経過した時点で申請する
確実に育休を取得する方法は、入社1年以上経過後に申請することです。行政通達では、入社1年未満の判断時点において、「育児休業申請の時点」としています。
したがって、1年以上経過した時点で申請すれば、1か月後から育児休業の取得が可能です。
(2)産休後働けなかった空白期間は会社の判断による
入社1年未満で出産した場合、産休終了後から育休開始日までに空白期間が生じます。産休終了後からすぐに就業できなかった場合、欠勤扱いにするか、育休を認めるかを判断するのは企業です。
近年では、多くの企業が人手不足や人材の確保に悩んでいるため、交渉次第によっては育休が認められるかもしれません。
(3)給付制度をチェックしよう
「出産育児一時金(妊娠4か月以上で出産した場合)」と「出産手当金」は、健康保険の被保険者であれば、入社1年未満でも受給が可能です。
「育児休業給付金」は、育休を取得した雇用保険の被保険者に支払われますが、無期雇用の場合は基本的に以下の要件が必要です。
- 育休開始日前の2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上の月が12か月以上ある
- 育休開始日から起算した、1か月ごとの期間中の就業日数が10日以下、または就業時間数が80時間以下である
支給金額や要件をしっかり確認しましょう。
(参考:「Q&A~育児休業給付~」(厚生労働省))
4. 条件を満たしているのに育休が取得できない場合
必要な要件を満たしているのに育休を取得できない場合は、以下の窓口に相談することをおすすめします。
(1)会社の相談窓口
直属の上司が育休に関してあまり知識がない場合、受理されないかもしれません。相談窓口を通して、人事部などの産休・育休に詳しい部署に確認してもらい、直属の上司に働きかけてもらいましょう。
(2)総合労働相談コーナー
都道府県の労働局や、全国各地の労働基準監督署に設置された総合労働相談コーナーは、予約不要かつ無料で利用可能です。あらゆる分野の労働問題が対象であり、助言や情報を提供してくれます。提供された助言・情報をもとに、会社への交渉などを行いましょう。
(3)労働局
労働局の雇用環境・均等部(室)では、紛争解決に向けたさまざまな援助を受けられるため、勤務先で生じた民事上のトラブルに関して相談してみましょう。
(4)労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法などの法令を順守しない企業の監督・調査・指導を行う機関です。給料の不払いなど、労働関係法令の違反が明らかな場合などに相談できます。
(5)弁護士
上述の相談窓口で問題が解決しなかった場合には、状況に応じて訴訟を考慮に入れる必要があります。費用はかかりますが、法的措置を含めて勤務先への有効な対応をとることができます。
入社1年未満でも育休取得が可能になるケースは多くあります。勤務先に申請して問題が生じた場合は、ひとりで悩まずに各種窓口や弁護士などに相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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