「自己都合退職するように」と退職勧奨があった! 会社都合退職との違いは?
  • 2021年07月19日
  • 労働問題

「自己都合退職するように」と退職勧奨があった! 会社都合退職との違いは?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

退職理由には、会社都合退職と自己都合退職の二種類が存在しています。会社から退職勧奨を受けた場合に、どちらの退職となるかによって、失業保険の開始日や給付日数などに違いがあります。

どちらの退職となるのかを明確に意識せずに退職をしてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

今回は、今後退職を予定している労働者の方に向けて、自己都合退職と会社都合退職の違いについて解説します。

1. 自己都合退職と会社都合退職の違い

自己都合退職と会社都合退職には、以下のような違いがあります。

(1)自己都合退職とは

自己都合退職とは、労働者からの申し出によって労働契約を終了させることをいいます。自己都合退職は、転職、結婚、妊娠、出産、介護など労働者側のさまざまな事情で選択される退職方法です。

(2)会社都合退職とは

会社都合退職とは、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇など会社側の都合によって、労働者の意思とは関係なく一方的に労働契約を終了させることをいいます。早期退職制度に応募した労働者との労働契約を終了させる場合も、一般的には会社都合退職として扱われます。

(3)自己都合退職と会社都合退職の主な相違点

自己都合退職と会社都合退職の主な相違点としては、以下のようなものが挙げられます。

①失業保険の受給資格

会社都合退職の失業保険の受給資格は、「雇用保険の被保険者である期間が退職前の1年間に通算して6か月以上あること」です。一方、自己都合退職の場合は、「退職前の2年間に通算して12か月以上あること」です。
そのため、失業保険の受給資格においては、会社都合退職の方が広く認められているといえます。

②失業保険の支給開始日

会社都合退職の場合は、ハローワークに離職票が受理された日から7日間経過した後に支給が開始されます。一方、自己都合退職の場合には、ハローワークに離職票が受理された日から7日間経過した後さらに3か月経過しないと支給されません。
そのため、失業保険の支給開始日は、会社都合退職の方が早いです。

③失業保険の支給期間

失業保険の支給期間については、雇用保険の被保険者期間と退職時の年齢によって決まります。会社都合退職の場合には、「90日から330日」であるのに対して、自己都合退職の場合には、「90日から150日」です。

そのため、失業保険の支給期間は、会社都合退職の方がより長く、総支給額もより多くなるといえます。

④解雇予告手当の支払い

会社都合退職の場合には、原則、会社は労働者に対して退職日の30日以上前に解雇を予告する義務があり、その予告がない場合には、会社は労働者に対して30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。例えば、解雇を予告した日から10日後を退職日とした場合には、30日から10日分を差し引いた20日分以上の解雇予告手当が支給されます。

これに対して、自己都合退職の場合には、退職日までに働いた分の賃金や退職金は支払われますが、解雇予告手当は支払われません。

そのため、会社都合退職の方が、解雇予告手当をもらうことができる場合があるという点で有利です。

⑤転職活動への影響

履歴書に記載した退職理由は、転職先の会社の面接時に、その理由を聞かれます。

履歴書に「会社都合」と記載して、その理由が整理解雇などの労働者がどうしようもできない事由であれば特段問題とならないでしょう。しかし、懲戒解雇など労働者側の問題と判断れうる場合には、選考で不利になる可能性があります。
一方、履歴書に「自己都合」と記載した場合には、会社としては手放したくない人材であったものの、労働者側が退職を希望したとも捉えられるため、選考で有利になる可能性があります。

2. 退職届の記入を求められた場合、どのように対処すればいいのか

上記のように自己都合退職と比べて会社都合退職の方が失業保険の面では優遇を受けることができます。もっとも、転職の面では自己都合退職の方が有利なこともあるため、退職勧奨を受けて「自己都合退職するように」と言われたとしても、その退職理由で本当に良いのか一度考える必要があります。

(1)辞める意思がない場合には退職届の記入は拒否する

退職勧奨は、会社から退職をしてもらいたい労働者に対して、退職を促す行為をいいます。退職勧奨は、解雇とは異なり、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由に委ねられています。退職勧奨を受けたからといって、会社を辞める必要はありません。そのため、会社から退職勧奨を受けて退職届の記入を求められたとしても、会社を辞める意思がない場合には、明確に拒絶することが重要です。

(2)退職勧奨による退職は会社都合退職

会社からの退職勧奨に応じて労働者が退職をする場合には、一般的に自己都合退職ではなく会社都合退職となります。

しかし、会社都合退職とすると、会社にとって国からの助成金の支給において不利になることがあるため、悪質な会社では、労働者に対して退職届を記入させ自己都合退職扱いにさせるところもあります。ただ、自己都合退職となると、労働者にとって失業保険の面で不利な扱いを受けることになりえます。

退職勧奨に応じて退職する場合には、離職票で退職理由をしっかりと確認するようにしましょう。

もし、退職理由の訂正が必要となった場合には、速やかに会社に対してその旨申し出ましょう。

(3)執拗な退職勧奨は違法

会社からの退職勧奨に対し労働者が退職勧奨に応じない意思を明確に示したにもかかわらず、執拗に退職勧奨を行うことは、退職強要として違法となる可能性があります。

違法な退職勧奨がなされた場合には、たとえ自己都合退職という形式をとっていたとしても、無効になる可能性があり、場合によっては慰謝料を請求することが可能です。会社から執拗な退職勧奨を受けた場合には、後日の証拠とするためにもボイスレコーダーなどによって会話を録音し証拠化しておくとよいでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年07月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。