配置転換の拒否で退職勧奨や解雇をされたら違法?
会社から配置転換を打診され、拒否したところ退職勧奨や解雇を言い渡されてしまった場合、多くの人は「これは違法なのでは」と疑問に思うでしょう。
本コラムでは、配置転換を拒否したことによる退職勧奨や解雇が正当なものなのかどうかについて説明します。また、万一そうした事態に遭遇した場合に従業員自身がどのように対応すべきか解説します。
1. 配置転換の拒否は原則としてできない
はじめに配置転換の定義と、配置転換を拒否することの可否について解説します。
(1)配置転換とは
配置転換とは、人事異動の一環で、同一勤務地において労働者の業務内容を変更することを意味します。
たとえば、営業職から事務職に転換して働くことです。人材育成や会社の活性化を目的としており、「配置換え」ともいいます。これに対して労働者の勤務地を変更することを「転勤」といいます。ただし、ビジネスにおいて、配置換えと転勤を併せて「配置転換」とするのが一般的です。したがって、本記事でもそれにならいます。
(2)配置転換を拒否できない理由
労働契約法第7条により、会社には、従業員に対して配置転換や異動を命じる権利があります。具体的には、就業規則に「業務において必要な配置転換を命じることがある」などと記載されていれば、この権利を行使できます。このような文言は、雇用契約書や労使間の労働協約にも含まれる場合があり、就業規則と同じ効力があります。
このような規定がある会社に入社した時点で、従業員は会社の配置転換命令権を承諾したことになります。したがって、労働者は正当な理由がない限り、会社からの配置転換命令を拒否できません。
出典:e-Gov法令検索「労働契約法」(3)配置転換の拒否ができるケース
就業規則などに配置転換をできる旨の文言がない場合、従業員は配置転換を拒否できます。また、雇用契約を結ぶ際に職種や勤務地を限定していた場合には、配置転換が違法とされる場合があります。
なお、会社に配置転換命令権があるといえども、その裁量は無制限ではありません。業務上の必要性がない場合や、不当な動機、嫌がらせ目的で命令された場合、その他、配置転換命令が労働者に著しい不利益となる場合などは、権利の濫用として違法または無効とされることがあります。たとえば、重病の親と同居してひとりで介護しているにもかかわらず、転勤を命じられた場合は不利益が大きいと判断される可能性があります。
さらに、配置転換により賃金を減額する場合、会社は制限を受けます。労働者にとって賃金は生活に関わる重大な問題であるためです。賃金を減らすためには労働者の同意が必要であり、かつ賃金規程に従う必要があります。
2. 配置転換が拒否できるケースにもかかわらず退職勧奨・解雇はアリ?
労働者が配置転換命令に従わない場合、会社はまず説得に努めます。説得が不調に終われば、最終手段として退職勧奨や解雇を検討します。ここでは、これらの手続きの定義と正当性について解説します。
(1)退職勧奨とは
退職勧奨とは、退職勧告ともいいます。会社が労働者に対して話し合いをして、退職を促す行為です。労働者は退職勧奨を受け入れて退職届を提出し、雇用契約を終了するか、拒否して会社に残るかを自由に選択することができます。
退職勧奨に応じて退職する場合は、会社都合退職とされることが多く、失業保険の給付を有利に受け取れる資格(特定受給資格)を得られます(自己都合退職とされる場合は会社と交渉する必要があるでしょう)。また、退職勧奨に応じるのであれば、退職金の増額や補償金を会社に請求することも考えられます。
退職勧奨は後述する解雇とは異なり、法律に明示的に規定されておらず、会社と労働者の交渉事項といえます。そのため、配置転換命令の正当性にかかわらず、退職勧奨自体に違法性はありません。
しかしながら、社会通念上相当と認められる限度を超えて、長期間や複数回にわたる執拗な勧奨を行ったり、理由を説明しない、虚偽の理由を告げる、応じなければ仕事を与えないなど、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、または、その名誉感情を不当に害するような言動により、労働者の退職を促すようなことは不法行為で違法です。
(2)解雇とは
解雇とは、会社が一方的に労働者との雇用契約を終了することです。労働者にとって不利益が大きいため、厳格な手続きが求められます。
解雇には、「普通解雇(労働者の債務不履行による解雇)」「整理解雇(会社の経営不振による人員削減のための解雇)」「懲戒解雇(労働者の規約違反による解雇)」の3種類があります。
通常、配置転換拒否による解雇は懲戒解雇に該当し、就業規則に記載されているのが一般的です。ただし懲戒解雇に至るための事由(配置転換命令)の正当性と、解雇までの経緯、手続きが適切であることが求められます。したがって違法な配置転換命令を拒否したことを理由とする懲戒解雇は権利の濫用として無効となる可能性が高いといえます。また、配置転換命令が正当であっても、十分な説得や指導、書面による通達、解雇以外の懲戒処分の検討などを会社が怠った場合には無効とされる可能性があります。
3. 配置転換を拒否して退職勧奨を受けた場合の対処法
労働者は退職勧奨に応じる義務はありません。会社に拒否の意思を明確に伝えるべきです。退職してしまうと、復帰までに時間がかかることがあります。また、証拠として残すために、会社とのやり取りは文書に残すようにしましょう。
必要に応じて、弁護士などの第三者に相談することも検討してください。労働関係の専門的な知識から、適切なアドバイスを得られます。
配置転換命令は原則として従わなければなりません。しかし内容によっては拒否できる場合もあり、拒否したことで退職勧奨や解雇処分を受けた際、それが違法、無効となるケースもあります。会社との交渉を検討するのであれば、法的な知識が求められます。必要に応じて弁護士へ相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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