マタハラで退職させるのは違法! 解雇・退職勧奨への対処法とは

マタハラで退職させるのは違法! 解雇・退職勧奨への対処法とは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

妊娠・出産に関連して、女性労働者に不快な思いをさせるような言動全般を「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」と言います。

しつこくマタハラを続けて、女性労働者を退職に追い込む悪質な例も一部で見受けられます。しかし、マタハラは明確な違法行為ですので、弁護士を通じて会社に対して厳重に抗議しましょう。

今回はマタハラの違法性や、マタハラによって解雇や退職勧奨などを受けた場合の対処法について解説します。

1. マタハラとは?

「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」とは、妊娠・出産に関連して、女性労働者に不快な思いをさせるような言動全般を意味します。

マタハラに当たる言動としてよくあるパターンは、以下のとおりです。

  • 産前産後休業や育児休業を取得したことを理由に、しつこく嫌みを言う
  • 妊娠や出産をしたタイミングで、女性労働者に退職を促す、または解雇する
  • 妊娠や出産を理由に、減給や降格の処分を行う

など

2. マタハラによって労働者を退職に追い込むことの違法性

妊娠や出産によって、一時的に稼働能力が落ちた女性労働者に対してマタハラを行い、退職するように仕向ける会社も残念ながら存在するようです。

マタハラによって女性労働者を退職に追い込むことは、以下の理由から違法であると考えられます。

(1)妊娠・出産に関する差別的な言動は「不法行為」に該当する

女性労働者が妊娠・出産をしたことについて、職場で差別的な言動を行った場合、「不法行為」(民法第709条)に該当する可能性があります。

また、職場でのマタハラを会社が放置した場合、会社にも安全配慮義務違反(労働契約法第5条)または使用者責任(民法第715条第1項)が発生します。

この場合、行為者と会社は、それぞれ被害者に生じた損害を賠償しなければなりません。

(2)妊娠・出産、産休・育休の取得を理由とする解雇は無効

妊娠・出産や産休・育休の取得などを理由に、女性労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをすることは、法律上明文で禁止されています(男女雇用機会均等法第9条第3項)。

女性労働者に対して行われた不利益処分のうち、上記の規定に違反するものはすべて無効です。

したがって、妊娠・出産をした女性労働者や、産休・育休を取得した女性労働者を解雇することは、他に客観的・合理的かつ社会通念上相当な理由がない限り、違法・無効となります(労働契約法第16条参照)。

(3)妊婦に対する退職勧奨も違法の可能性がある

会社が一方的に労働契約を解除する解雇とは異なり、労働者に対して任意に退職を促すことを「退職勧奨」と言います。退職勧奨を受けた労働者が合意退職する場合、原則として、解雇に関する厳格な規制は適用されません。

ただし、労働者の退職が解雇によるものか、それとも合意退職によるものかについては、退職に関する事情を総合的に考慮したうえで実質的に判断されます。つまり、名目上は退職勧奨による合意退職であっても、実質的に女性労働者に対して退職を強制したと評価される場合には、解雇禁止等の規制が適用される可能性があるのです。

妊娠・出産を迎えたタイミングの女性労働者に対して、マタハラ的な言動を繰り返すことで精神的に追い込みつつ退職を促した場合、実質的に退職を強制していると評価される可能性が高いでしょう。この場合、男女雇用機会均等法第9条第3項で禁止されている「解雇その他不利益な取扱い」に該当し、退職が無効となります。

「退職届を提出してしまった」
「会社からの退職提案に同意してしまった」

このような場合でも、退職の無効を争う余地があることを覚えておきましょう。

3. マタハラの被害を受けた場合の対処法

職場でマタハラの被害に遭ってしまった場合、精神的な負担を緩和するためにも、一人で抱え込まずに他の人へ相談することが大切です。家族や友人のサポートを受けられる場合には、不満や悩みを打ち明けてみるとよいでしょう。

また、マタハラについて抱えている問題を解決するためには、外部の専門家を頼ることも有力な選択肢です。労働局・労働基準監督署の相談コーナーを利用してみるのもよいでしょう。うつ病や急性ストレス障害を患った場合は医療機関に、会社の法的責任を追及したい場合は弁護士に相談することをお勧めいたします。

特に、解雇無効の主張やマタハラの加害者や会社に対する損害賠償請求を行う場合は、弁護士のサポートを受けながら対応するのが安心です。マタハラ発言の録音行為等の証拠収拾の方法、会社への請求の仕方や内容、和解交渉から労働審判・訴訟などの法的手続きまで、弁護士が一貫してサポートしてくれます。

職場におけるマタハラにお悩みの女性労働者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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