インターネット上での誹謗中傷に対して刑事告訴はできる?
  • 2021年04月05日
  • インターネット

インターネット上での誹謗中傷に対して刑事告訴はできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

2020年は「インターネット上の誹謗中傷」に対する世間の考え方や対応が大きく前進した年だったといえます。
会員制交流サイト(SNS)で誹謗中傷を受けたタレントが自殺した事件では、中傷の投稿をした男性が12月に書類送検されました。容疑は「侮辱罪」です。8月にはタレントの親族が「刑事・民事ともに追及する準備を進めている」とコメントしており、ネット上の誹謗中傷に刑事告訴が有効であることを証明した結果となったといえます。

1. 誹謗中傷で刑事告訴ができるケース

インターネット上で心ない誹謗中傷を受けてしまい「加害者の責任を追及したい」と考えるのであれば、刑事告訴を検討することになります。
では、どのような条件が整っていれば刑事告訴が可能なのでしょうか?

(1)具体的な犯罪に該当する場合

インターネット上の誹謗中傷に対して刑事告訴するための前提となるのが「誹謗中傷が具体的な犯罪にあたること」です。刑事告訴とは、正しくは「告訴」といい、犯罪事実を捜査機関に申告し、犯人の、処罰を求める意思表示をいいます。

告訴と混同しやすいのが「被害届」です。
被害届は「被害に遭ったこと」を申告する手続きであり、「犯人を罰してほしい」と名指しで求める告訴とは別の性格をもっています。

(2)誹謗中傷を罰する犯罪

インターネット上の誹謗中傷を罰する犯罪としては、刑法の「名誉毀損(きそん)罪」と「侮辱罪」が考えられるでしょう。

名誉毀損(きそん)罪(刑法 第230条)

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示(てきし)し、相手の名誉を毀損する犯罪です。
インターネット掲示板や会員制交流サイト(SNS)のように不特定・多数の人が閲覧できる場において、相手方の名誉を害するような具体的な事実を示して、その人の社会的な名誉を傷つけた場合に成立する可能性があります。

たとえば、「××氏は整形している」、「○○さんは会社の女性と不倫をしている」といった具体的な事実を摘示する行為が対象です。その内容の真偽は問いません。

なお、実際にその○○氏、××さんの社会的な名誉が害されたことまでは要しません。掲示板やSNSを見た人を全員取り調べて、○○氏、××さんのことをどう思っているか聞くことは不可能だからです。

罰則は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

侮辱罪(刑法 第231条)

公然と人を侮辱する行為は「侮辱罪」が成立します。名誉毀損罪と違うのは、事実の摘示を要しないことです。

侮辱とは「他人の人格を蔑視する価値判断の表示」と解されており、たとえば「○○氏はバカ」「××さんはブス」といった事実を確認できない侮辱的な言葉が該当します。

なお、「関西人はおもしろくない」というのは、「人を侮辱する」行為にあたりません。侮辱の相手方のなる人が、○○氏、××さんといったように、具体的に特定できる必要があるからです。

罰則は「拘留または科料」です。
拘留とは30日未満の刑事施設への収容、科料とは1万円未満の金銭徴収で、わが国における刑罰のなかではもっとも軽い罰則が規定されていますが、前科がつくことになります。

2. 相手が特定できない場合はどうすれば良い?

刑法の名誉毀損罪と侮辱罪は「親告罪」です。
親告罪として規定された犯罪では、検察官が刑事裁判を提起する際に被害者の告訴を要します。つまり、刑罰を与えるには刑事告訴が必須です。

インターネット掲示板やSNSでは、加害者が本名を名乗っているケースはごくまれで、ほとんどがハンドルネームやアカウント名を名乗っているでしょう。たとえ本名らしい名前を名乗っていても、それが真実であるのかはわかりません。

法律上、「犯人」という言葉は、犯人が誰かいることを指し、犯人が○○さんであることまでは意味しません。
そのため、告訴のため「犯人」の処罰を求めるためには、「○○さんを処罰してほしい」といったことまでは不要であり、「氏名等不詳」として、誰か犯人がいることを示すだけでも告訴は可能です。

しかし、警察官にとっても、「犯人は○○さんだから処罰してほしい」として犯罪事実を申告する場合と、「氏名等不詳」として犯罪事実を申告し漠然と処罰を求める場合とでは、優先順位が異なるでしょう。解決の速さも段違いに変わってきます。

加害者を特定するには、裁判所の手続きを活用した「発信者情報開示請求」を起こす必要があります。

(1)コンテンツプロバイダに対する情報開示請求

誹謗中傷が掲載されたサイトやSNSの管理者に対して、投稿者のIPアドレスなどの開示を求めます。この手続きによって、加害者が使用したインターネット回線が特定されます。

(2)インターネットプロバイダに対する契約者情報の開示請求

加害者が使用したインターネット回線を管理するプロバイダに対して、IPアドレスなどの情報から契約者の情報開示を求めます。これによって、相手を特定できます。

ところが、インターネットプロバイダがこれらの情報を保有している期間はおおむね3か月程度と非常に短いため、誹謗中傷を受けてしまったら直ちにアクションを起こさなくてはなりません。

裁判所への申し立てにかかる書類作成や必要な証拠資料の収集には、発信者情報開示請求の経験が必須です。しかも、上記①②の二段階の手続きを短い期間で済まさなければならないという難しさもあります。その上で、刑事告訴も考えるとなると、個人で対応するのは非常に難しいでしょう。

このようなケースでは、弁護士へ相談するのが一番の近道です。
弁護士であれば、発信者情報開示手続きを代行でき、情報が開示された暁には、犯人を具体的に特定した上で、警察官に対して迅速な解決を求めていくことができます。また、犯人を具体的に特定することができれば、損害賠償を求めることもできます。

弁護士であれば、告訴による迅速な刑事処分を求めるだけでなく、民事での損害賠償請求も併せて求めることができます。

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