遺言執行者とは? その内容や選任の進め方を解説

遺言執行者とは? その内容や選任の進め方を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

遺言執行者は、遺言の内容に従った遺産の移転を確実に行う役割を担っています。遺言で遺言執行者を指定する場合には、ご自身の遺産を任せることのできる、信頼に足る人物を選定しましょう。

今回は遺言執行者について、役割・就任できる人の範囲・職務の流れ・選任方法などを解説します。

1. 遺言執行者とは?

遺言執行者とは、被相続人が作成した遺言の内容を実現する職務を行う者を指します。

亡くなった被相続人の代わりに、被相続人の意思に沿った形で相続手続きを円滑に完了することが、遺言執行者の役割です。

2. 遺言執行者の職務の流れ

遺言執行者は、民法の規定に従って職務を行う必要があります。

遺言執行者の職務の流れは、以下のとおりです。

(1)就任承諾・職務の開始

遺言執行者への就任を承諾した者は、直ちに職務を開始しなければなりません(民法1007条1項)。

(2)相続人の確定

遺言執行者の就任直後の段階では、まず相続人の確定作業を行う必要があります。相続人を確定するためには、戸籍資料を取り寄せて続柄などを確認します。

(3)相続人に対する遺言内容の通知

遺言執行者は、相続人を確定したうえで、就任後遅滞なく、遺言の内容を相続人全員に通知しなければなりません(民法1007条2項)。なお、遺言書が特定の財産の遺贈のみを内容とする場合でも、相続人に対する遺言内容の通知を行う必要はあります。

(4)相続財産の調査・遺産目録の作成

遺言執行をする前提として、相続財産を把握しなければなりません。把握した相続財産の内容は、相続財産目録にまとめたうえで、相続人に交付する必要があります(民法1011条1項)。もし相続人の請求があれば、相続財産目録を相続人立ち会いの下で作成し、または公証人に作成させることが必要です(同条2項)。

なお、遺言書が特定の財産の遺贈のみを内容とする場合には、対象となる財産のみについて相続財産目録を作成すれば足ります(民法1014条1項)。

(5)相続財産の処分・移転

相続財産の把握が完了したら、遺言書の内容に従って、相続財産の処分・移転を行います。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。相続登記や預貯金口座の解約手続きなども、遺言執行者がひとりで行うことができます。

各相続人は、遺言執行者の行為を妨害してはならず、妨害に当たる行為は無効となります(民法1013条1項、2項)。

(6)相続人に対する報告

すべての相続財産の処分・移転が完了したら、遺言執行者は相続人に対して、遅滞なくその経過および結果を報告します(民法1012条3項、645条)。

(7)受取物の引き渡し・費用の精算等

相続人に対する報告が完了した後、遺言執行者は相続人との間で、受取物の引き渡し・費用の償還・報酬の精算などを行います(民法1012条3項、646条1項、2項、647条、650条、1018条1項)。

3. 遺言執行者を指定する方法・遺言執行者になれる人

遺言執行者の指定する方法は3種類存在し、多くの場合遺言書によって遺言執行者が指定されます。ただし、未成年者と破産者は遺言執行者になれない点に注意しましょう。

(1)遺言執行者を指定する3つの方法

遺言執行者を指定する方法は、以下の3つです。指定を受けた者が就任を承諾した時点で、遺言執行者に選任されます。

①遺言によって指定する

遺言者は、遺言書に記載することにより、1人または数人の遺言執行者を指定できます(民法1006条1項)。

②遺言で指定の委託を受けた者が指定する

遺言者は、遺言書に記載することにより、第三者に遺言執行者の指定を委託することもできます(民法1006条1項)。委託を受けた者は、遺言書の内容に従って遺言執行者を指定します(同条2項)。なお、指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとする場合は、遅滞なく相続人に通知しなければなりません(同条3項)。

③家庭裁判所が指定する

遺言執行者がいない場合または退任・死亡などによっていなくなった場合には、利害関係人は、家庭裁判所に対し、遺言執行者の指定(選任)を請求することができます(民法1010条)。

(2)遺言執行者に就任できる人・できない人

未成年者と破産者は、遺言執行者になることができません(民法1009条)。それ以外の人は、遺言執行者になることができます。

弁護士などの専門家が遺言執行者になることも多い一方で、相続人の誰かが遺言執行者となるケースもよくあります。

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