【遺産相続】弁護士費用は誰が払う? 費用を抑える方法も解説
遺産相続には厳格な規定が民法で定められており、法的な要件にのっとって遺産を相続するためには専門的な知識が必要です。多くの場合は各種手続きを弁護士に依頼しますが、気になるのは遺産相続の弁護士費用を誰が負担するのかという点です。
本コラムでは、遺産相続で弁護士に支払う費用の内訳とその相場について解説します。
1. 遺産相続の弁護士費用は誰が払う?
被相続人が遺(のこ)した財産を相続するためには、さまざまな手続きや法定相続人による協議が必要です。そして依頼人の状況や案件の内容により、弁護士費用の支払いを誰が負担するのかが異なります。
(1)遺言書の作成
遺言書の作成費用を支払うのは原則として依頼人です。遺産の分配に関する意思表示や親族間の争い防止を目的として、遺言書を作成するケースは少なくありません。遺言書の作成を弁護士に依頼した場合、その費用は基本的に依頼人である遺言者が負担します。
(2)遺言の執行
遺言執行にかかる費用は民法第1021条で「相続財産の負担とする」と定められています。したがって、その費用は相続人が相続財産から控除して支払うのが一般的です。相続人が複数いる場合は相続人全員で均等に支払う、あるいは相続人の代表者が負担するといった形式が考えられます。
出典:e-Gov法令検索「民法」(3)相続放棄・限定承認
遺産には積極財産(金銭的価値がある財産)だけではなく消極財産(負債)も含まれるため、状況によっては相続権を放棄する、あるいは相続財産の範囲で債務を弁済するといった手続きが必要です。こうした相続放棄や限定承認に関する弁護士費用は、原則として各種手続きの申立人が負担します。複数人で申し立てる場合、均等に割って支払うことも可能です。
(4)遺産分割協議・調停・審判
法定の要件を満たす遺言書がない場合、原則として相続財産の分割割合は遺産分割協議によって決定されます。遺産分割協議が合意に至らない場合は「遺産分割調停」や「遺産分割審判」に移行します。この協議・調停・審判の代理人として弁護士を選んだ場合、その費用を負担するのは依頼人です。
(5)遺留分侵害額請求
法定相続人には相続順位によって「遺留分」と呼ばれる最低限の相続分が保証されています。遺留分は遺言書よりも強い法的効力を有しており、遺言によっても遺留分は奪うことができません。遺留分を侵害された相続人は侵害額に相当する金銭を請求できます。遺留分侵害額請求の申し立てを弁護士に依頼した場合、費用を支払うのは依頼人です。
2. 遺産相続にかかる弁護士費用の相場
遺産相続における弁護士費用の内訳は「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」「日当」「手数料」などがあり、弁護士事務所や依頼の詳細によって金額が異なります。
(1)遺産相続で弁護士に支払う費用の内訳とその相場
①相談料
相談料は弁護士に法律問題の相談をした際に発生する費用です。30分5000円程度が相談料の一般的な相場であり、初回相談は無料の弁護士事務所も少なくありません。
②着手金
着手金は弁護士への委任契約が締結された際に支払う費用です。着手金の相場としては20~30万円が目安ですが、遺産の総額によって料金や料率が変動するケースがあります。
③報酬金
報酬金は依頼の成功した程度に応じて支払う費用です。経済的利益の度合いによって料率が変動するのが一般的であり、旧弁護士会報酬規程では以下のように設定されています。すでに廃止された規程ではありますが、こちらを参考にしている事務所も多いため、一定の目安にすることが可能です。
300万円以下 | (経済的利益の)16% |
---|---|
300万円~3000万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 6%+138万円 |
3億円超え | 4%+738万円 |
④実費
実費は実際にかかった諸費用です。戸籍謄本の取得費や郵便切手代、交通費、裁判所への申し立て費用などが該当し、一般的には1~5万円程度が相場となります。
⑤日当
日当は弁護士を時間的に拘束する際に発生する費用です。遠方への出張や裁判所への出廷に対する日当があり、1日あたり3〜5万円程度が相場となっています。
⑥手数料
手数料は実質的な争いのない案件の事務的な手続きを依頼する際にかかる費用です。たとえば遺産分割協議書の作成は5~10万円、遺言書の作成なら10~20万円が相場となります。
(2)見積もりを取り、比較検討する
以前は日本弁護士連合会によって報酬規定が定められており、原則として弁護士費用は一律でした。しかし平成16年4月より弁護士会の報酬規定が廃止されたため、弁護士によって費用がそれぞれ異なります。そこで、見積書の内訳を確認するとともに、一般的な相場との比較をすることが大切です。
(3)依頼内容ごとの弁護士費用相場
遺産相続に関する依頼内容ごとの弁護士費用の相場は以下のとおりです。ただし弁護士によって着手金や報酬金が異なり、遺産の総額によって料率が変動するケースもあるため、あくまでも参考程度にとどめてください。
遺産分割の代理交渉 | 遺産総額(経済的利益)や争いの有無に応じて異なる |
---|---|
遺言書作成 | 10~20万円 |
遺言執行 | 30~100万円 |
相続放棄 | 5~10万円 |
遺留分侵害額請求の意思表示 | 3~5万円 |
3. 遺産相続の弁護士費用が払えない場合の対処法
遺産相続に関する弁護士費用の工面が困難な場合は、以下に挙げる3つの選択肢を検討してみましょう。
(1)無料相談の活用
弁護士費用を抑えたい場合は無料相談の活用がおすすめです。初回相談や一定時間の法律相談に無料で対応している弁護士事務所は少なくありません。所定の時間を超過すると相談料が発生する場合が多いため、事前に問い合わせをして詳細を確認することが大切です。
(2)法テラスの民事法律扶助制度を利用
弁護士費用の支払いが難しい場合、法テラスの民事法律扶助制度の利用が推奨されます。民事法律扶助制度とは、経済的理由によって弁護士への依頼が困難な方に対し、「無料の法律相談」「代理費用の援助」「書類作成の援助」という3つの扶助を公的機関が支援する制度です。
(3)分割払い・後払いの相談
遺産相続に関する業務を弁護士に依頼する場合、相談料や着手金などを事前に用意する必要があり、その費用を捻出できない方も少なくありません。分割払いや後払いに対応可能な弁護士事務所も少なからずあるので、弁護士費用の支払いが困難な場合は事前に相談してみるのがおすすめです。
遺産相続では法定相続分や遺留分、相続順位、遺言書の満たすべき要件など、民法に関する専門的な知識が求められます。相続に関する親族間のトラブルを回避するためにも、法律の専門家である弁護士への相談を検討しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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