自己愛性パーソナリティ障害とは? 特徴とモラハラとの関係性
配偶者からモラハラ被害を受ける中で、あまりに自分本位な相手の言動に疑問や違和感を抱いたことはないでしょうか。実際、モラハラ加害者の中には、「自己愛性パーソナリティ障害」の患者が一定数含まれていると考えられます。
本コラムでは、この人格障害の概要や特徴、モラハラとの関係性、モラハラ被害を受けたときの対策などを解説します。
1. 自己愛性パーソナリティ障害とは
自己愛性パーソナリティ障害とは、極度に自己中心的に振る舞う一方で、他者に対する共感が乏しいといった特徴を持つ心理的障害です。米国精神医学会が編さんしているDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-Fifth Edition:精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)によると、この障害の診断基準としては、およそ以下のものが挙げられます。
- 誇大な自己評価
- 権力や名声、成功への渇望
- 特権意識
- 過度に称賛を求める
- 他者への共感の欠如
- 他者を利用する
- 他者へのねたみ
- 傲慢(ごうまん)な行動や態度
このような特徴が多く当てはまるほど、自己愛性パーソナリティ障害と診断される可能性が高まります。上記の特徴からも分かるように、自己愛性パーソナリティ障害の患者は、過度に自意識が強く、自分本位で、猛烈なまでの承認欲求を抱えていることが多いです。
こうした心理的傾向は、自分の意見や欲求を相手へ強要する行動につながりやすく、それがモラハラを生む原因になります。加えて、共感の欠如は、相手の感情や立場を理解しようとせず、自分本位の行動を助長する結果につながるものです。したがって、自己愛性パーソナリティ障害の患者と結婚した配偶者は、モラハラ被害を受けるおそれが一定以上あると考えられます。
2. 自己愛性パーソナリティ障害が及ぼす影響
上記のように、自己愛性パーソナリティ障害を抱える配偶者との生活は、モラハラ被害を受けるリスクを伴うものです。
まず、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、自分の優秀さや特別さを自他にアピールするために、他者を過小評価したり、むやみやたらにおとしめたりしがちです。それは身近な存在である配偶者に対しても例外ではなく、たとえば自分の方が高収入なことを盾に立場が上であると主張したり、配偶者のささいな失敗や欠点などを過度に批判したりしがちです。
逆に自分が行ったことに対しては過剰なまでの感謝を求め、それが得られないと強い不満や怒りに駆られて相手を罵倒します。
こうした否定的な言動を日常的に受けていると、配偶者はいつのまにか相手の主張が正しいのだと刷り込まれ、洗脳されてしまい、自分を卑下したり、相手の異常な要求を異常なものだと認識できず、逆らえなくなるおそれがあります。強いストレスにより、うつ病や不安障害などの精神疾患にかかってしまうことも少なくありません。
また、このようにゆがんだ関係が夫婦間に築かれることで、子どもに悪影響が出るおそれもあります。両親がけんかしたり、一方の親が他方の親をののしったりしている姿を見ることは、子どもにとって多大なストレスです。
親の影響を受けて、他者を見下したり、暴言を吐いたりすることを当然のように感じるようになってしまうこともありえます。そのような誤った認識を植え付けられれば、モラハラ被害を受けている親を子どもも軽んじるようになったり、学校や社会に出てからも他者と良好な人間関係を築くことが難しくなったりしてしまいかねません。
このように、自己愛性パーソナリティ障害の患者との生活は、その配偶者や子どもにとって大きなリスクがあります。
3. 配偶者が自己愛性パーソナリティ障害だったら
配偶者が自己愛性パーソナリティ障害だったと判明した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
(1)配偶者に治療をすすめる
最初に検討すべきなのは、配偶者に心療内科での治療をすすめることです。自己愛性パーソナリティ障害は、認知行動療法や投薬などによって改善する場合があります。病院に通うことで症状がよくなれば、それにつれて夫婦関係の改善も期待できます。
ただし、自己愛性パーソナリティ障害の患者は、自分が障害を持っていることを認めにくい傾向があるため、治療の同意を得るのは容易ではないことも考えられます。自分だけでは説得が不安な場合は、家族や友人など第三者を交えて話し合うことも検討しましょう。
(2)離婚する
もしもモラハラがひどく、改善の期待もできない場合は、離婚することもひとつの選択です。自己愛性パーソナリティ障害の患者が自分の非を素直に認めて離婚してくれる可能性は低いですが、離婚手続きの中には、相手の同意がなくても履行できる「法定離婚」という種類があります。
これは当人同士の話し合い(協議離婚)や裁判所の調停を挟んでも離婚(調停離婚)が成立しなかった場合に、離婚の可否を裁判官の決定に委ねる手法です。法定離婚を裁判官に認めてもらうには、離婚もやむをえないと思わせるだけの深刻な事情の存在が必要になりますが、モラハラ被害を受けている事実を立証できれば、離婚がかなう可能性は十分に見込めます。
そのため、自己愛性パーソナリティ障害の配偶者に離婚を切り出す際は、最終的に法定離婚を利用することも視野に入れて動くようにしましょう。離婚に向けて動く際は、まず弁護士へ相談するのがおすすめです。
弁護士は、離婚の手続きや配偶者との交渉に際して法律の専門家として適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。モラハラ加害者に対して離婚を切り出すのは非常に大きな勇気が必要ですが、弁護士に依頼すれば交渉の場に同席してもらったり、代理交渉をしてもらったりすることも可能です。
たとえ配偶者が自己愛性パーソナリティ障害の患者だとしても、不当な状況を耐え忍び続ける必要はありません。自分の心や尊厳を守るために必要な行動をとるようにしてください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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