養子縁組を解消しても子どもの苗字を変えない方法は?
養子縁組した親子にとって、その縁を解消することは、感情的にも法的にも大きな決断です。特に、長年続いていた養子縁組を解消する場合、子どもの苗字をどうするかは、非常にデリケートな問題になります。
本コラムでは、養子縁組を解消するにあたり、子どもの苗字を変えずに維持する方法について、わかりやすく解説します。
1. 養子縁組を解消すると苗字はどうなる?
まず養子縁組の解消とはそもそもどのような意味を持つもので、苗字にどのような影響を与えるのか、確認しておきましょう。
(1)養子縁組の解消とは
養子縁組の解消とは、養子縁組をすることにより一度法的に確立された親子関係を、消滅させることを指します。これは、養親と養子が養子縁組の解消に合意し、役所へ「養子離縁届」を提出することによって行われる場合が一般的です。
養子縁組を解消する理由はさまざまですが、たとえば子連れのパートナーと結婚し、その連れ子と養子縁組をしたものの、結局そのパートナーと離婚したケースなどが代表例として挙げられます。この場合、連れ子は血のつながった実親と暮らす選択をし、それを機に養子縁組を解消することが多いと考えられます。
ただし、パートナーと離婚したからといって、その連れ子との養子縁組が自動的に解消されるわけではないことにご注意ください。法律上、パートナーとの離婚と、養子縁組の解消は別問題です。そのため、養子縁組を解消しない限り、連れ子は法律的にあなたの子であり続け、養育費の支払いといった扶養義務はもちろん、相続権なども残り続けます。
(2)養子縁組を解消したら養子縁組前の苗字に戻る
養子縁組が解消されると、通常、養子は養子縁組前の苗字に戻ります。これは民法816条で定められた措置です。
ただし、養子縁組の形によっては、苗字が変わらない場合もありえます。具体的には、養子が孤児などで、その子を引き取った夫妻のどちらとも養子縁組をしていた場合です。このケースだと、養父母のどちらかと養子縁組が継続している限り、苗字を変える必要はありません。逆に、養父母の両方と養子縁組を解消したならば、元の苗字に戻すことになります。
2. 養子縁組の解消後も苗字を変えない方法は?
前項で述べたとおり、養子縁組を解消したら養子は元の苗字に戻ります。しかし、苗字の変更は精神的にも社会生活的にも大きな影響を及ぼす事象です。養子の生活に与える悪影響を少しでも防ぐため、苗字を養子縁組のときのまま維持したい場合も考えられます。
このように、養子縁組を解消した後も養子の苗字を変えたくない場合を想定して、「縁氏続称」という手続きがあります。これを利用すれば離縁後も引き続き養親の苗字を使えますが、そのためにはいくつかの手続きと条件が必要です。
(1)縁氏続称の手続きと条件
離縁後にも養親の苗字を維持したい場合は、「離縁の際に称していた氏を称する届」(戸籍法73条の2の届)を提出します。この届け出は養子の本籍地または居住地の市区町村の役所で行うことが可能です。本籍地以外の役所に提出する場合は、戸籍謄本が必要になるので事前に入手しておきましょう。また、養子の年齢が15歳未満の場合、法定代理人がこの届出を提出するのは認められないのでご注意ください。
さらに、縁氏続称の手続きを利用するには、以下の2つの条件を満たすことが必要です。
- 養子縁組の期間が7年以上であること
- 養子縁組を解消した日から3か月以内に手続きすること
上記のとおり、縁氏続称は養子縁組解消から3か月以内に行うことが求められるので、早めに手続きしないといけません。できれば、「養子離縁届」と同時に提出できるように前もって準備しておくのがおすすめです。
(2)条件に当てはまらない場合どうしたらよい?
では、上記で紹介した条件を満たせない場合はどうしたらよいのでしょうか。ひとつ考えられるのは、養子縁組の期間が条件を満たしていないケースです。この場合、7年過ぎるまで待ってから養子縁組を解消する方法も考えられます。
しかし期間に猶予がない場合、戸籍法第107条に基づき、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立」を行う方法もあります。この申請をし、やむを得ない正当な事由があると家庭裁判所に認めてもらえれば、通常の縁氏続称の条件を満たせなくても養親の苗字を名乗り続けることができます。ただしこの方法は、裁判所の判断次第となる点に注意が必要です。
手続きには申立書のほか、戸籍謄本などが必要です。必要書類の準備に不安がある場合は、手続きの代行を弁護士に依頼することもできます。
3. 養子縁組の解消を拒否されたら?
養子縁組の解消を求めても、それが容易に受け入れられるとは限りません。もしも養子本人や実父母の同意を得られない場合は、次の法的手続きを踏む必要があります。
(1)養子本人に拒否された場合
養子が15歳以上の場合、離縁をするには養子本人の同意が必要です。もしもそれが叶わない場合は、家庭裁判所にまずは「離縁調停」を依頼し、それでも解決しない場合は「離縁訴訟」を提起することになります。
(2)実父母が拒否した場合
養子が15歳未満の場合、その離縁には実父母の同意が必要になります。実父母が離縁に同意しない場合の手続きも、基本的には養子本人に拒否された場合と同様です。「離縁調停→離縁訴訟」の順に解決を図ることになります。
たとえ養子縁組を解消するにしても、一度は親子になった仲であることは変わりません。なるべく円満に問題を解決し、お互いにとって最善な結果に至れるように、落ち着いて手続きを踏むようにしましょう。必要に応じて、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談することもご検討ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年03月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
離婚・男女問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2023年07月05日
- 離婚・男女問題
-
- 2022年05月10日
- 離婚・男女問題