養育費の減額交渉はどうやるの? 条件や方法を解説

養育費の減額交渉はどうやるの? 条件や方法を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもの世話や教育にかかる費用を、養育費といいます。離婚して子どもと一緒に暮らさなくなった場合にも、原則として養育費は支払わなければいけません。しかし、養育費を高いと感じ、減額交渉したいと考えている方もいるでしょう。

そこで本記事では、どのような場合に減額ができるか、減額するにはどのような手続きが必要かなどを解説します。

1. 養育費を減額できる条件

(1)養育費を支払わないとどうなるか

養育費の不払いは、原則として認められません。相手方から請求されたにもかかわらず養育費を支払わないでいると、給与や預貯金などの財産を差し押さえられる可能性があります。また、差し押さえの前段階にあたる「財産開示請求」をされた場合に、応じなかったりうそを言ったり、誠実な対応をしないでいると刑事罰を科されるおそれもあるため、注意が必要です。

(2)減額が認められる4つのケース

減額が認められるには、以下に示す4つのケースのうちいずれかに該当する必要があります。

①再婚し扶養家族が増えた

再婚し新しい家族の扶養義務が生じたときには、養育費の減額を求められます。以前の子どもに支払う養育費の負担が重すぎて、新たな扶養家族を満足に養えない場合、減額せざるを得ないと考えられるためです。

②養育費を受け取る側が再婚し、養子縁組があった

子どもが再婚相手と養子縁組をすると、子どもを養育する義務は第一次的には養親が負うことになります。その場合、扶養義務者に変動が生じるため、減額や免除を求めることができるケースもあります。

ただし、受け取る側が再婚しただけで養子縁組をしていないなら、再婚相手が扶養義務を負うわけではないため、減額請求は認められない可能性が高いです。また、子どもと再婚相手との養子縁組が解消された場合は養育費支払い義務も元に戻るため、注意しましょう。

③養育費を支払う側の収入が減った

病気・けが・解雇などの事情によって収入が減った(無収入になった)場合にも、養育費の減額を求められます。自身の生活を著しく犠牲にしてまで養育費の支払いを強いることはできないからです。ただし、自己の都合で転職などをして働けるのに働かない場合などは減額が認められない可能性もあります。

④養育費を受け取る側の収入が増えた

養育費は、支払う側と受け取る側の収入バランスによって金額が決まるため、受け取る側の収入が多いと養育費は少なくなります。離婚した相手の収入が多くなれば、養育費を減額できることがあります。

(3)減額が認められないケース

面会交流拒否の報復や、合意金額が相場より高いと後から気づいた場合、借金返済のためといったケースでは、養育費の減額は認められません。

また、自営業で収入を操作できるからといって、養育費の支払いを免れようと収入を低く抑えるのは無意味です。自分の都合で収入を減らしても、養育費の減額は認められません。収入の減少はやむを得ない理由によるものだと証明するなど、妥当な金額を提示するには一定の根拠が必要なため、弁護士に相談することをおすすめします。

2. 養育費を減額する方法と手続き

(1)養育費の計算方法

1年間で支払うべき養育費の額は、基本的には以下の計算式で求められます。

子どもの生活費×養育費を支払う側の基礎収入÷(養育費を支払う者の基礎収入+養育費を受け取る側の基礎収入)

基礎収入とは、すべての収入から税金や経費などの養育費にあてられない分を差し引いた額です。ただし実際は、便宜的に収入により定められている基礎収入割合をかけて算出します。会社員などの給与所得者と自営業などの事業所得者とでは、異なる基礎収入割合が設定されています。

また、子どもの生活費は以下の計算式で求められます。

養育費を支払う側の基礎収入×子どもの生活費指数合計÷(100+子どもの生活費指数合計)

子どもの生活費指数とは、親を「100」とした場合に、子どもに必要とされる生活費の割合です。厚生労働省が定める生活保護基準から算出した最低限の生活費に、教育費を加えて定められ、14歳以下の子どもは「62」、15歳以上の子どもは「85」とされます。

(2)減額方法

養育費の減額を求める流れは、以下の通りです。

①話し合い

まずは子どもを養育している相手方(離婚した元配偶者など)と減額について話し合い、合意による解決を試みます。相手が減額を認めたら、その旨と金額を合意書として作成しましょう。合意書は、万一争いが生じた場合の証拠となります。

②養育費減額請求調停の申し立て

話し合いの機会や合意を得られない場合、家庭裁判所で調停を申し立てましょう。この際に申し立てるのは、「養育費減額請求調停」です。調停では、裁判官ではない調停委員が間に入って調整をしてくれて、金額の相場も提示されます。合意が得られて調停が成立すれば、養育費を減額できます。

調停は通常、複数回にわたり行われます。1か月から1か月半に1回の頻度で実施され、半年ほどはかかると見ておきましょう。費用は、子ども一人あたり1200円の収入印紙と郵便料金を合計して数千円程度かかります。必要となる書類は、以下の通りです。

  • 申立書
  • 戸籍謄本(子どもが記載されているもの)
  • 収入を示す資料(給与明細・源泉徴収票などの写し)
  • 事情説明書
  • 進行照会書(調停希望日や話し合いの状況などを示すもの)
  • 連絡先等の届出書(書類送付先となる住所や連絡先となる電話番号を届け出るもの)

③養育費減額審判

減額について合意が得られず、調停不成立となった場合は、裁判所が審判により新しい養育費の金額を決定します。審判結果に不服が申し立てられないまま2週間が経てば、その金額で確定です。

3. 養育費の減額で悩んでいる場合は弁護士に相談を

元夫婦という関係から、養育費に関する冷静な話し合いは困難となりがちです。弁護士が間に入ることで、話し合いも円滑に進みます。

また、調停や審判を行うことになれば、必要書類をそろえ、さまざまな手続きを行わなければなりません。弁護士に相談することで、これらもすべて任せられます。裁判所への主張も的確に行えるため、希望に添う養育費減額の実現可能性が高まるでしょう。

養育費の減額が認められるにあたってはいくつかの条件があり、相手方との交渉は大変です。話し合いが難しい場合には、弁護士への相談も検討しましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年08月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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