- (更新:2023年05月26日)
- 離婚・男女問題
離婚での財産分与|不動産はどう分ける?
離婚をする際には、財産分与によって夫婦が婚姻期間中に築いた財産をお互いで分け合うことになります。現金や預貯金であれば金銭の支払いによって簡単に財産分与を行うことができますが、家などの不動産が財産分与の対象に含まれている場合には、不動産という財産の性質上、簡単に分けることができません。
この記事では、離婚における財産分与の種類と、財産分与の対象に不動産が含まれる場合の財産分与の方法について紹介します。
1. 離婚における財産分与の種類とは?
「財産分与」とは、簡単にいうと、離婚時にお互いの財産を分け合う制度のことになります。財産分与には、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」という3種類の趣旨が存在します。まず、それぞれの趣旨を紹介します。
清算的財産分与 | 婚姻期間中に築き上げた夫婦の共有財産を分配する |
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扶養的財産分与 | 離婚によって生活が困窮する配偶者に対してなされる |
慰謝料的財産分与 | 離婚の原因をつくった配偶者から慰謝料の意味合いで分与する |
(1)清算的財産分与
清算的財産分与とは、婚姻期間中に築き上げた夫婦の共有財産を離婚時に分配することをいいます。一般的な用語での「財産分与」とはこの清算的財産分与のことを指し、財産分与の中でも中心的な趣旨です。
清算的財産分与では、お互いの貢献度に応じて夫婦の共有財産を分けることになりますが、原則として婚姻中の財産形成に対する夫婦の貢献度は等しいものと考えられています。そのため、基本的には、分与の対象となる財産を2分の1の割合で分けることになるのです。
つまり、専業主婦(夫)で収入がなかったとしても、家事労働で貢献したとして、平等に財産分与を受けることができます。
財産分与の対象である共有財産とは、「婚姻期間中に夫婦の協力によって維持・形成してきた財産」のことを指します。婚姻中に得た財産であっても相続によって得た財産や、婚姻前から有している財産は「特有財産」として財産分与の対象には含まれないのです。
(2)扶養的財産分与
扶養的財産分与では、離婚後も夫婦の一方に扶養の必要性が認められる場合には、離婚後の生活のために財産分与額を増やしたり、離婚後の一定期間について生活の補助として一定の金額を支払ったりというかたちで支払いが行われます。
離婚をすると夫婦は互いに他人となり、法律上の扶養義務を負わなくなります。しかし、離婚後に夫婦の一方が経済的に困窮して、生活が困難な状況となるのはあまりに酷な事態といえます。そこで、離婚後の扶養補助として一定額の給付を認めたものが、扶養的財産分与なのです。
ただし、法律上の扶養義務はすでに消滅していますので、扶養的財産分与が認められるのは、「請求される側に扶養能力があり、請求する側に扶養の必要性がある」といった例外的な場合に限られます。扶養料の支払いも、「相手が安定した収入を得るまで」といった、一時的なものであることが多いです。
(3)慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、不倫やDVなどで婚姻関係の破綻を招いた有責配偶者が慰謝料の意味合いで支払いをすることをいいます。
ただし、有責配偶者に対しては、離婚時に別途慰謝料を請求することができますので、慰謝料と財産分与を個別に計算することが多く、慰謝料と財産分与を区別せずに合算して解決することは必ずしも多くありません。慰謝料と財産分与を個別のものとして考えず、まとめて相手へ渡すという意味合いで慰謝料的財産分与が行われる場合に、このように呼ばれます。
2. 不動産を財産分与する方法とは
不動産は、現金のように物理的に分割することができる性質のものではありません。
そのため、財産分与の対象財産に自宅不動産などが含まれる場合には、財産分与の方法をめぐって争いになることがあります。不動産を財産分与する方法は、主に「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4種類になります。
(1)現物分割
現物分割とは、不動産を一方が単独名義で取得して、もう一方は不動産以外の共有財産を取得する、という財産分与の方法です。
たとえば、評価額4000万円の不動産と、預貯金2000万円、有価証券2000万円がある場合に、夫が不動産を取得し、妻が合計4000万円の預貯金と有価証券を取得するというような方法です。
現物分割は、現実に存在する夫婦の共有財産を分配するだけですので、手続きとしては簡単です。しかし、不動産の評価額に相当する財産が他に存在していなければ、双方の取得額を平等にすることができません。したがって、現物分割を選択するには、ある程度他に流動資産が存在していることが必要になるのです。
(2)換価分割
換価分割とは、不動産を売却してお金に換え、売却代金を分けるという方法です。離婚の際、不動産の財産分与をスムーズに行う方法としては最も公平感があり後のトラブルも少ないといわれています。
夫婦のどちらも不動産の取得を希望していない場合や住宅ローンの支払いが難しいという場合には、換価分割によって現金に換えてしまえば、より簡単に財産分与を行えます。売却してしまえば、代償分割の場合のように不動産の評価をどうするかによって争いが生じることもありません。
ただし、換価分割は不動産を売却して手放すことになるので、当然その不動産に住み続けることができません。職場が家の近くにある、子どもを転校させたくないなどの事情があり、離婚後もその家に住み続けたいという方には換価分割は適していません。その場合は現物分割や代償分割を選択することになります。
(3)代償分割
代償分割とは、一方が不動産を単独で取得する代わりに、もう一方に対して一定の金銭(代償金)を支払うという方法です。現物分割は、共有財産から分配する方法ですが、代償分割は、不動産を取得する人の資産から代償金を支払うという違いがあります。
代償分割を行う場合には、その前提として不動産の評価額を算定しなければなりません。不動産の評価方法としては、固定資産評価証明書による方法、路線価による方法、不動産鑑定士による鑑定による方法などさまざまな方法があります。
どの方法を選択するかによって金額が大きく異なりますので、評価額に争いがある場合には、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。
(4)共有分割
共有分割とは、対象となる不動産を夫婦の共有名義にする方法をいいます。不動産の共有分割は離婚成立後に法務局に申請することで名義変更が可能です。
しかし、共有名義にしておくと離婚後に不動産を利用処分しようとする場合に、常に相手の同意が必要となるため、あまりおすすめの方法とはいえません。また、対象の不動産に住宅ローンが残っている場合には、不動産の名義と住宅ローンの名義は結びついていないため法務局に書類を提出する以外にも金融機関との調整が必要になります。
住宅ローンの残積が不動産の売却価格を上回る「オーバーローン」の場合には、そもそもその不動産は財産分与の対象とはならないのが原則ですので注意しましょう。不動産を売却したところでそのお金は全てローン返済に当てなくてはならないので財産分与の金額がマイナスになってしまうためです。
- こちらに掲載されている情報は、2023年05月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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