婚姻費用の支払いで生活ができない! 支払わないとどうなる?
法律上の夫婦には、お互いに生活費を分担する義務(婚姻費用分担義務)があります。そのため、たとえば別居することになったときには、収入の多い側や、子どもと離れて暮らす側は「婚姻費用」を支払わなければなりません。しかし婚姻費用の負担が重く、支払うと生活ができないと悩む方もいます。
そういった場合には「いっそ婚姻費用を支払うのをやめてしまおうか」という気持ちになるかもしれません。しかし安易に支払いをやめるのは、得策とはいえません。
婚姻費用は支払い続けなければいけないのでしょうか。また、支払いが難しい場合、どのような解決策があるのでしょうか。
1. 婚姻費用を支払わないとどうなる?
婚姻費用を支払わないとどうなるかは、「どのように婚姻費用を取り決めたのか」によって異なります。
(1)夫婦が口約束などで決めていた場合
口約束の場合には、婚姻費用を支払わなかった場合、まずは電話やメールなどで支払いを催促されることが一般的です。支払いを受ける権利がある配偶者としては、すぐにでも未払いの婚姻費用を回収したいと考えるでしょう。しかし口約束のみだった場合、直ちに給与の差し押さえなどを行うことはできません。
そのため、支払い義務のある配偶者が任意に支払わない場合には、支払いを受ける権利がある配偶者は、まず「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる可能性があります。
(2)執行認諾文言付き公正証書や調停・審判で決めていた場合
執行認諾文言付きの公正証書や調停調書、審判書は、取り決めた婚姻費用の内容を証明するものであり、そこで決定された金額の支払いを行わない場合には、差押えなどの強制執行手続きを直ちに申し立てることができます。
そのため、婚姻費用を調停・審判で決めていた場合や、執行認諾文言付き公正証書として残している場合、すぐに強制執行手続きを申し立てられる可能性があります。
強制執行が決まると、給与や預貯金などを差し押さえられるおそれがあります。婚姻費用の支払いのために給与が差し押さえられる場合には、原則として手取りの2分の1まで差し押さえることが認められます。その際、未払い分だけではなく、将来分についても差し押さえることが可能なため、ご自身の生活がより困窮することにつながりかねません。
2. 婚姻費用の支払いで生活できない場合にとれる対応策はある?
婚姻費用を支払う側は、「離婚したいと言い出したのは相手なのだから支払いたくない」「別居すれば生活費の負担が増えることが分かっていて別居したのだから支払いたくない」など、さまざまな思いがあるかもしれません。
しかし、特に執行認諾文言付き公正証書とした場合や、調停や審判で決定している場合には、その後に正式な手続きを経て変更しない限りは、離婚成立までは決定した額を支払い続ける必要があります。
婚姻費用の金額を変更するためには、婚姻費用減額調停を申し立て、その中で婚姻費用の支払いが難しい旨やその理由を説明し、相手の同意を求めます。相手方と折り合えない場合には、審判に移行し、最終的には裁判所が減額の可否や金額を判断します。
また、当事者同士が口頭で婚姻費用を取り決めている場合、収入や生活に見合っていないほどの高額な婚姻費用を支払い続けているケースも少なくありません。この場合も、婚姻費用の適切な額の決定を求める調停や審判をすることができます。
では、具体的にどのように減額交渉を進めていくべきなのかについて、確認していきます。
(1)直接相手に減額交渉する
直接相手と話し合いができる関係であれば、まずは事情を説明して、現状の婚姻費用の金額では支払い続けることが難しいことを伝えます。
何も伝えずにそのまま婚姻費用を支払わなかったり、勝手に減額した金額で支払ったりすれば、前述したとおり給与などを差し押さえられてしまうリスクがあるほか、無用なトラブルに発展するおそれもあります。
なお、話し合いによって減額に合意がとれた場合には、将来のトラブルを防止するために、合意書などを作成しましょう。
(2)調停を申し立てる
婚姻費用の減額について、夫婦間の話し合いがまとまらないときには、家庭裁判所に婚姻費用の減額をもとめる調停(婚姻費用減額調停)を申し立てて解決を図る方法があります。
ただし、一度取り決めた婚姻費用を変更することは、そう簡単ではありません。裁判所が金額の変更を認めるのは、次にあげる事情が認められる場合です。
- 取り決めたときには予測ができなかった事情の発生があったこと
- 当該事情が当事者の責任で生じたものではないこと
- 事情の発生によって婚姻費用の変更をする必要性と相当性があること
たとえば、婚姻費用の支払い義務者の健康状態が悪化して働けなくなった場合や、突然リストラされたなどの事情があったときは、減額が認められる可能性があります。
一方で、支払い義務者が働くことができるのに、自主的に退職して収入がなくなった場合には、義務者側の身勝手な都合によるものと考えられ、減額が認められない可能性が高くなります。
減額が認められるかについては、個々の事情や状況によって異なります。個人で判断するのは難しいため、弁護士に相談し適切なアドバイスを受けるのが良いでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年11月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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