強盗致傷罪で逮捕されたら|執行猶予をつけることは可能?

強盗致傷罪で逮捕されたら|執行猶予をつけることは可能?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

もしも家族や親しい人が強盗致傷罪で起訴された場合、執行猶予をつけることは難しいのでしょうか。

本コラムでは、強盗致傷罪の概要や量刑などについて解説した上で、強盗致傷罪で執行猶予をつける方法や逮捕されたときの対処法、逮捕されたときに弁護士に依頼するメリットについて紹介します。

1. 強盗致傷罪とはどんな罪か

まずは強盗致傷罪がどのような罪で、強盗罪や強盗傷人罪と何が違うのかについて解説します。

(1)強盗罪とは

強盗罪は、刑法236条において以下のように記載されています。

強盗罪

暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

刑法 第236条

典型的なのは凶器で脅して家や店に押し入り、金品を奪う行為ですが、ほかにも薬などで昏睡(こんすい)させて物を奪ったり、金品を窃取した後に逮捕を逃れる目的で脅したりする行為も強盗に該当します。

(2)強盗致傷罪の構成要件

強盗致死傷罪

強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法 第240条

強盗致傷罪は、強盗をした人が被害者などにけがを負わせた場合に成立しますが、強盗傷人罪になるケースもあります。この2つの罪の違いは「故意」があるかどうかです。けがをさせることに故意がなければ強盗致傷罪、故意がある場合は強盗傷人罪になります。

たとえば、強盗をした際に凶器を持っていると、傷害の故意が認められ、強盗傷人罪になる可能性が高くなります。強盗傷人罪は強盗致傷罪に比べて故意があるところがより悪質だと判断されやすく、量刑が重くなる傾向にあります。

2. 強盗致傷罪で執行猶予をつける方法

強盗致傷罪には重い刑が科せられています。ここでは強盗致傷罪の量刑と例外的に執行猶予がつくケースについて解説します。

(1)強盗致傷罪の量刑

強盗致傷罪の量刑は、無期または6年以上の懲役です。強奪によって相手にけがを負わせている悪質性の高い犯罪のため、法定刑が重く設定されています。なお、量刑は相手のけがの程度や計画性、事件の役割などによって変わります。

(2)原則的には強盗致傷罪に執行猶予はつかない

執行猶予は刑法25条で3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金を判決で言い渡されたときと定められています。しかし、強盗致傷罪はそれを超える犯罪のため、原則的に執行猶予はつきません。

(3)例外で執行猶予がつくこともある

ただし、法律上の減刑事由や情状酌量の余地がある場合、執行猶予がつくこともあります。法律上の減刑事由に該当するのは、心神耗弱や自首、自分の意思で犯行を中止した、首謀者がほかにいてほう助(手助け)しただけであるというケースです。

また、被害者と示談が成立していたり、犯罪を起こした理由に同情すべき点があったり、反省の意思が強く、更生の可能性が高かったりすると量刑が減軽され、執行猶予がつくこともあります。

3. 強盗致傷罪で逮捕されたときの対処法

では、もし家族や親しい人が強盗致傷罪で逮捕された場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

(1)「強盗致傷罪」の成否を争う

強盗致傷罪の量刑は重いため、犯した行為がほかの罪に該当する可能性がある場合には、強盗致傷罪の成否そのものを争う方法があります。

たとえ逮捕容疑が「強盗致傷罪」であっても、弁護士が背景や事実関係を適切に主張することで、問われる罪が「強盗致傷罪」ではなく「暴行罪と脅迫罪」や「窃盗罪と傷害罪」に変わることがあります。これらの罪に切り替わると、執行猶予がつく可能性が高まります。

(2)被害者と示談をする

被害者と示談が成立していると、被害者の処罰感情がさほど強くないと見なされ、酌量減軽がされる可能性が高くなります。量刑を軽くするためには、弁護士に依頼して速やかに被害者との示談交渉を進めることが重要です。

(3)そのほかの情状を主張する 

強盗行為を誰かに強制されたなど、やむを得ない事情がある場合には、背景の事情を説明することで刑罰が軽い方向へ向かう可能性があります。また、更生意欲を見せる、専門的なカウンセリングを受ける、適切な監督者や身元引受人がいる、更生に向けたサポートが整っていることなどの主張も酌量減軽につながります。

4. 強盗致傷罪における弁護活動

家族や親しい人が強盗致傷罪で逮捕された際には、弁護士に依頼することでさまざまなメリットを得られます。

(1)被害者との示談交渉の成立を目指す

酌量減軽を得るためには被害者との迅速な示談交渉が欠かせません。しかし、被疑者本人は逮捕で身柄拘束され、親族などが代わりに示談交渉しようとしても被害者に拒絶されることがほとんどです。

また、たとえ交渉できたとしても互いに感情的になって示談がまとまらないこともあります。そこで第三者の立場で専門知識のある弁護士に示談交渉を依頼すれば、示談が成立する可能性が高まります。

(2)取り調べ対応についてアドバイス

逮捕されると一般的に警察で取り調べを受けます。取り調べで話した内容によっては不利益を受けることがあります。しかし、弁護士が早い段階からついていれば、取り調べでどのように受け答えをすべきか適切なアドバイスを受けられます。

また、緊張感のある取り調べでストレスや不安を感じる人は少なくありません。その中で弁護士と話せることは精神的なサポートにもなります。

(3)刑事裁判で有利な事情を主張・立証

強盗致傷罪で刑事裁判となった場合、裁判員裁判の対象となるため、被告人がどのような印象を与えるかは非常に重要です。そして裁判員がどんな印象をもつかは、弁護の仕方に左右されます。

刑事事件の実績を積んだ弁護士であれば、強盗致傷罪で刑事裁判となった場合も資料を集めたり、証人を立てたりして情状酌量につながる事情を立証できるよう努めてくれます。また、酌量減軽を得るためのノウハウも豊富なため、できるだけ量刑が軽くなるよう、あらゆる方法で弁護してくれます。

強盗致傷罪で逮捕されてしまった場合、個人ではできることがほとんどなく、弁護士の協力が不可欠です。できるだけ早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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