詐欺の受け子、初犯の場合の罪の重さ|執行猶予がつく可能性はある?
SNSで見つけたアルバイトが詐欺の受け子と知らずに、気づいたら詐欺グループの一員となってしまうことも少なくありません。しかし、詐欺と知らなかった場合でも受け子は詐欺罪に問われ、初犯でも実刑判決となる可能性があります。
本コラムでは、実際の逮捕事例を紹介しながら、初犯の場合の罪の重さや逮捕された場合の対処法を解説します。
1. 詐欺の受け子でも逮捕される
受け子は、金融機関の職員や公務員などを名乗って、被害者から直接現金やカード類を受け取る役割です。被害者を直接だます行為をしていない受け子でも、詐欺罪に問われるため、逮捕されます。また、詐欺罪は非常に重い罪であるため、受け子でも実刑判決を下される可能性があります。
(1)詐欺の受け子として高校生が次々に逮捕
埼玉県警によると、特殊詐欺に関与した未成年者の逮捕事例では、逮捕者のうち約9割が受け子であり、若者がアルバイト感覚で犯罪に加担するケースが増加しています。
令和3年の6月には、高校生が被害者から300万円を受け取り、詐欺の疑いで逮捕されました。高校生は母親に連れられ自首し、被害者の住所などを説明したことから逮捕に至っています。
また、同月には別の事件でも高校生が逮捕されています。パーカの中に白いワイシャツを着た高校生を見て不審に感じた捜査員が追跡し、女性宅の前で着替えようとしたところを職務質問して逮捕に至りました。
高校生などの若者が関与する事件では、「荷物を引き受けるだけで簡単に稼げる」などのうたい文句によって知らず知らずのうちに犯罪に加担するケースが多数です。
事件が発覚して逮捕に至るケースとしては、上記のように警察の追跡や職務質問を契機とするほか、被害者がすでに警察に通報しており、待ち構えていた警察に現行犯逮捕されるケースも多くあります。
(2)受け子で実刑判決を受けた事例
受け子で実刑判決が下される事例は少なくありません。
令和5年の3月には、20代の男が特殊詐欺グループの受け子として、70代の女性にうその電話をかけ、500万円をだまし取ったとして懲役3年の実刑判決を受けました。裁判官は「受け子は特殊詐欺の実行に不可欠な役割で被害額も大きい」と指摘しています。
また、同年の11月には、特殊詐欺グループの指示役に従って合計23回の受け子や出し子を行い、被害総額2700万円の事件に関与したとして、20代の男が懲役4年6か月の実刑判決を受けています。男は生活費に困っていた時期に「足がつかずに1日で20万円稼げるバイトがある」などと持ちかけられ、高齢者からキャッシュカードを受け取り、ATMでの現金引き出しを繰り返していました。
2. 詐欺の受け子で初犯の場合はどうなる?
直接詐欺行為をしていない受け子でも詐欺罪に問われます。また、オレオレ詐欺などの特殊詐欺は非常に悪質であるため、初犯でも実刑判決を受けることがあります。
(1)受け子は詐欺罪にあたる
受け子として現金などを受け取る行為は刑法第246条の詐欺罪に含まれます。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
出典:e-Gov法令検索「刑法」
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
受け子であっても詐欺罪の正犯(自ら犯罪行為をはたらいた者)として、詐欺罪に該当します。詐欺罪は罰金刑がない重い罪であるため、実刑判決となった場合は懲役刑となります。
(2)初犯であっても実刑判決が下る可能性もある
令和4年の検察統計調査によると、詐欺罪で起訴された7669人のうち初犯者は5061人でした。このことから、詐欺罪では初犯であっても、起訴される可能性が高いことがわかります。
また、起訴されると刑事裁判によって、有罪か無罪かの判決が下されますが、日本における刑事裁判は有罪率が99.9%以上とされています。そのため、詐欺罪で逮捕されて起訴されると、ほとんどの場合で実刑判決、もしくは執行猶予つきの有罪判決が下されます。
出典:e-Gov法令検索「わが国の刑事司法の特色と弁護の機能」したがって、受け子が重要な役割を果たしている特殊詐欺の場合は、初犯者でも実刑判決が下る可能性が高いです。
(3)詐欺であることを知らなかった場合は?
詐欺であることを知っていた場合はもちろん、自身が受け子であることを知らずに詐欺に加担してしまった場合でも、詐欺罪で有罪になる可能性があります。怪しいアルバイトかもしれないと思っていた場合や、警察にばれないよう行動していた場合などは、知らなかったという言い訳が通用しない可能性が高いです。
ただし、言い渡された刑が3年以下の懲役、もしくは禁錮又は50万円以下の罰金である場合では、以下に該当していれば執行猶予がつくことがあります。
- 禁錮以上の刑になったことがない
- 過去に禁錮刑以上の刑になっていても、刑の終了から5年以内に禁錮刑以上の刑になっていない
執行猶予がつくと刑務所に収監されず、日常生活を送りながら更正を図ることができます。しかし執行猶予になるかどうかは、上記の条件を満たした上で、犯行に至った経緯や受け子としての活動期間、被害者との示談の有無などさまざまな点が考慮されます。これらの点を証拠の提示とともに的確に主張する必要があるため、執行猶予の獲得には弁護士のサポートが必要です。
3. 詐欺の受け子で逮捕された場合の対処法
詐欺の受け子で逮捕、起訴されると、10年以下の懲役刑を科せられるおそれがあります。思いがけずこのような状況に陥ってしまった場合には、できるだけ早期に弁護士へ相談することが重要です。
弁護士は速やかに逮捕された本人と面会し、取り調べに対する助言を提供します。取り調べでの態度や供述した内容によっては長期の身柄拘束や実刑判決を回避できる可能性があるため、どのような態度で取り調べに臨むべきか、何を供述するべきかなどをわかりやすく伝えます。
また、被害者との示談を成立させることで、不起訴処分や刑の減軽などにつながる可能性を高められます。示談は、被害者の処罰感情などから、本人やご家族が成立させるのは難しい面がありますが、交渉経験の豊富な弁護士であれば被害者感情に配慮しながら適切な交渉が可能です。
ほかにも、検察官や裁判官との交渉や法的主張などさまざまな弁護活動を通じて、身柄の早期釈放や不起訴処分の獲得、刑の減軽に向けて活動します。
詐欺の受け子と知らずにアルバイトとして犯罪に関わってしまった場合でも詐欺罪に該当する可能性があります。少しでも状況を改善するためには、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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